【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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3-4 残穢足枷編:禍根断ち切りし暁

173 目を見られたので告白を

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 頭の中がグチャグチャになる感覚だ。
 身体中の至る所の風通りが良くなった……そしてそこに熱が篭もり、何かが体から抜けていくような気がした。

 僕は……どうなったんだ。

 一人……いや、二人? 違う、もっと……十人はいない男達と戦っていたのは覚えてる。けど、そのあとは……。
 閉じていた目をゆっくりと開くと見えたのは森ではなく、木目の天井。

「生きてる……?」

 訓練した後の全身疲労みたいな気怠さ……よりも強いのというか……そういうのがある。
 上手い表現が出てこない辺り、脳みそも仕事放棄してるみたいだ。

「よいしょ……っ……と?」

 体を起こそうとすると布団の重みとは別の重みを感じて、そちらの方へと目をやると布団にもたれかかる形で寝ているアンの寝顔が見えた。

 よかった……アンも無事だったんだね。
 一度死んだ経験があるから、もしかして、と不安で不安でしょうがないな。

「ん……っ、あるじ……?」

「おっ、起きた。アン、おはよう」

「…………?……! あるじ!! あるじっ!!!」

「わっ……!」

 突然胸元に飛び込んできたアンの重みで、ぼふっと後ろに倒れてしまう。

「ひぐっ……あるじぃ。あるじっ、あるじ……っ! わたしのせいで、わたしのせいで……ぇっ!」

「あはは……ごめんね」

 泣きじゃくるアンの頭を撫でながら部屋を見渡すと、ココは自室ではないようだ。
 天井の模様とかが一緒だったから僕の部屋かと思っていたけど……どうやら違う。
 でも、ギルドの寮であることは間違いなさそう。

「もう、ほんと、嫌ですから、あんな命令しないでください……」

「最善策だと思っちゃったんだ。でも、結局生きてたわけだし、ね? ダメかな」

 僕の胸に顔を埋めながら、アンは首を横に振った。

「心配で……だって、あんなに血を流して……最後には気を失ってて……っ、全然目を開けてくれないからっ!! 三日間も、ずっと……!」 

 三日……も寝てたのか。

「……心配してくれてたんだね」

「当たり前です……! 何を言ってるのですか! あるじは、あるじは……っ。わたしの……うっ、ああああっ……!!」

 再び泣き出したアンの頭をまた撫でて、僕は思わず微笑んでしまった。
 泣き止まないアンの背中をぽんぽんと叩き、落ち着いてもらおうとするけど、一向に泣き止んでくれそうにない。
 まいったなぁ、と思いながらふと部屋の入口の方を見てみると、束ねられた細長い黒髪と白い髪の毛がチョロっと覗いているのが見えた。

「そこにいるのって……」

「あっ、バレちゃいました……?」

 出てきたのは、ナグモさんとケトスだった。
 ナグモさんがいるってことはー……ここは、ナグモさんの家か。
 いつも通りの表情で話すナグモさん。だけど、その隣にいるケトスは少し表情が暗い気がする。
 トイレでも我慢してるのかな……?

「お体の方は大丈夫ですか?」

 顔色を覗き込もうとしていたけど、ナグモさんの一言で初期位置に戻って、ぐるっと体を見回してみる。
 服の上からペタペタと触ってみるが、ふむ……。

「……僕って刺されましたよね。結構酷かったと思うんですけど。それにしては、違和感がないと言いますか……えーと」

「えぇ、酷い傷でしたね。ですが、ペルシェトが怒って全部治癒してました「いい加減治させろ」って」

「あぁ……それで」

 ペルシェトさんには傷を負う度にお世話になっちゃってるな……。
 骨折した時もあれこれと注文したし、今度ちゃんとお礼を言いに行かないと。

「それで起きたばかりなんですが……クラディス様、少し話をしてほしいことがありましてですね」

「話……? って、なんのですか?」

 すこしだけ、ナグモさんの言葉が真剣みを帯びた気がした。

「なんて言ったらいいのでしょうかね~……えーっと」

「――クラディスがずっと眼帯で隠していた目の事さ。気づいてる? 今、眼帯付けてないんだよ」

「……え? 眼帯……――」

 隣のケトスが真剣そうな顔で言った言葉で、いつもより視界が広いことに気付く。
 一気に背筋が凍り、急いで片目を隠そうとしたが――ゆっくりと手を降ろした。
 ダメだ。今更、隠したら余計変な風に思われてしまうかもしれない。

「見られちゃったんだ……。はは、そっか……」

 精一杯に空気を悪くしないように笑顔を取り繕った。
 だが、ケトスの手が腰にある小刀に当てられているのがチラと目に入ると、悟られない程度には笑顔が崩れてしまったかもしれない。

 返答次第では抜くのも辞さない感じかな……。そうだよね、そう、だよね……。
 あの男達の反応がそのままこの世界の意見だ。意志の強弱はあれど、転生者に対しての思いはほとんど一致してるのだろう。

「……うん。良い機会だし、話をしてもいいかな……」

 アンとナグモさんもいるし、これはいつまでも隠し通せることではなかった。
 腹を括るしかないんだ、こればっかりは。
 真剣に、でも仰々しくないように、誇張表現をしないように……僕という人間のことを理解をしてもらえるように――

「実は僕……転生者なんだ」

 上手く伝えられるかは分からないけど、僕が話してなかったことを話そうと決めた。

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