【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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4-2 理外回帰編:血盟お試し期間

200 レヴィさんのお古をいただきました!!

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「ちゃんと出来てるかなぁ……」

 任せた仕事とは言え、血盟に迷惑が掛かってるんじゃないかと少し心配してしまう。

(何だか慌ただしく走ってるような音が聞こえるし……大丈夫なのか?)

 ここから見えるはずもないのに、黒茶色の扉をジーっと睨む。

「心配か?」

「……ちょっとだけ」

「子育てというものはそういうものは、あまり手を焼くのはだめらしいぞ」

「子育て……ではないんですけど、アンの方が年上ですし」

「種族が違う時点で年齢なんて関係な――あ、その本こっちだ」

「分かりました」

 アンが頑張ってくれている間、僕がやっているのはレヴィさんの部屋の掃除。
 何かすることないですか? と聞いたら、部屋の掃除を頼む、と言われた。
 レヴィさんの部屋は広い。でも、机と椅子以外はほとんど本棚で埋まっている。

(まるで小さな図書館! 本好きにはたまらない空間!)

 寝具が端に見えるし、この部屋で全部済ませてるご様子。

「いい天気ですし、寝具とか干しましょうか?」

 提案すると白壁の近くに置かれた敷布団の方を見つめ、首を横に振った。

「それは明日で頼む」

「そーですか。じゃあ今日は本とかを中心にですね」

「ああ」
 
 掃除、といっても僕がやっているのは本棚の整理と書類の整頓。
 指定された本棚に本を入れ、紙束や書類を眼鏡をかけて読書中のレヴィさんの所に持っていく。
 机に座って読書をせずに一緒に片づけしましょうよ、と言ってはみたが、はぐらかされた。
 ならば、少しくらい摘み食い――摘み読みしても許されるだろう。
 本棚に抜け目なく並べられた難しげな本に人差し指をなぞらせ、気になった本を取り出した。
 
「わぁ……すごい。訳わかんない……」

「どれだ? ……あぁ、それは上級でも応用的な部分だからな。さすがのでも分からんか」

「何ですかその言い方ぁ~、嫌だなあ」

 なーにが、さすがの転生者だっての。

「どーせ僕は転生者の中でも弱っちぃやつですよー」

 パラパラと捲って見ても、ふむふむなるほど? 全くもって分からない。

「そういえば転生者君、渡した眼帯はどうした? なくしたのか?」

「え? あぁ……、いえ、持ってますよ」

「つけないのか?」

 眼帯で白髪の少年って情報が【フーシェン】に伝わってるだろうから、トレードマークはあまりつけたくないんです! 
 って言えないだろうなぁ。

「……気分転換です、気分転換」

 こっちの事情にレヴィさん達を巻き込むわけにもいかないし、誤魔化さないと。

「そうか……」

 あら、少し不服そう。

「眼帯もそうですけど、包帯も似合ってるでしょ! 白髪と相まって、ほら!」

「眼帯の方が強そうだったがな、今はもっと弱そうだ」
  
 もはや、僕の弱さはネタにできるレベルになってしまったのか。
 まぁいいけど。……良くないけど。

「そんなこと言う人の部屋の掃除なんかしたくないですけど」

 腕を組んでツーンとした反応を見せてみる。
 大体これで、レヴィさんはあたふたして謝ってきてくれるはずだ。

「と、言われると思ってだな。掃除が済めば褒美として渡そうと思っている物があるのだ」

「えっ! それはなんです――」

「終わってからのお楽しみだ」

 僕が、掌の上で弄ばれている……!
 それが人にモノを頼む態度か! ふん、適当な物だったらケチをつけてやる。絶対だ!
 心の中でそう決めて、ブスッとした態度で本の整理を再開した。



      ◇◇◇



「わあぁぁあ!! えっ、ほんと、えっ、いいんですか!?」

「あぁ、私はもう使わぬものだからな」

 掃除が終わった後、机の収納袋の上から出された褒美。
 なんと、ななな~んと! お古の魔法杖と、魔導書が二つ!
 その褒美の中の、一つが、それは、もう、やばいのである!

「だって、これ、魔導士協会ウィンのNo.2のティエラリードさんが書いたって、ほら、ここにっ」

「知っている。あの人と私は師匠と弟子の関係だからな。協会に入ったばかりの時からよくお世話になっていたのだ」

「と、いうことはレヴィさんが勉強に使っていた本……ということですか?」

「その通りだ。分からないところをティエラリードお師匠に聞いていたりした」

「はああああっ」

 興奮そのままにパラパラと頁を捲ると、形状、属性、空間毎に頁が分けられ、文字ルーンの効率的な埋め込み方、系統毎に必要な魔導が事細かに。
 そして、それらが聞いたこともない書物から多く引用されている。
 ティエラリードさんが書いた魔導書に、ティエラリードさんの解説付きで、レヴィさんの勉強した形跡付き。

 いい!! すごく! いい!!

 僕の語彙力では、表せれないほど、いい!
 
「ありがとうございます!!」

 がばっと深く頭を下げて、感謝の気持ちを伝えた。

 魔導書は元来、とても高価なもの。駆け出しの魔導士ウィザードはお古を譲ってもらえたらいい方で、仲間内で購入して読みまわしたり、魔導書を買うまでは剣を振り回す魔導士ウィザードだっているのだ。

 初級魔導書でそれだ。中級や上級ともなれば、今の僕なんかじゃ手が出せない。

(なのに! これは、中級と上級と一部の最上級の知識の結晶が詰まっている代物なのだ!!!)

 そして、そしてだよ! この本だけでも手に入れることがほとんど不可能なのに、上級魔導書や、挙句の果てに魔法の杖のお古を譲ってもらうなんて。
 
「やったー!!」

 杖を両腕に抱き、重たい魔導書を手提げ袋に入れてもらい、その場でくるくると回った。
 本当はこの場でずっと回っていたいほどの出来事だが、そうはいかない。

「じゃあ、次、僕、食器洗いなんで!!」

 入口まで走っていき、くるりと振り返った。
 何を思ったわけでもない。僕がなんでこんなことを言ったのか分からない。
 だけど、何か、直感的に、言いたくなった。

「……僕、レヴィさんやムロさん、エルシアさんの老後の面倒見ようと決めてるんで。僕の知らないところで勝手に死なないでくださいよ」

「……あぁ、大丈夫さ」

「そ! ならいいんです!」

 ガチャリとドアを開け、廊下へと出た。
 そして、もう一度振りかえって、もう一言。

「レヴィさん、好きですよお! えへへ」

 反応見る前に扉を閉め、廊下を走って行った。
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