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5-1 最上位種発芽編:世界が変わっても
241 これが先生の気分か
しおりを挟む「今日はここからここまで頑張ろっか」
「うへぇ……ページが多い」
帰宅後、アルマさんの勉強に付き合う。
もちろん僕は意識がふわふわしているから、まともに先生ができない状態だからアンも一緒に先生をしてもらっている。
居間の広いスペースで本と翻訳したノートを見せながら、勉強を進めていく。
「宿題の方はできた?」
「うっ……ちょっと。まだ……」
「……時間あったよね~?」
「む、むずかしくて……」
アルマさんはいつもこんな感じだ。
勉強に対してあまり前のめりな訳ではなく、宿題を度々やってないことがある。
宿題という名の復習だから、そんなに量がある訳でもないのに……それも文字の勉強だから読み返しとかなのに。
「そっか……まぁ、うん、わかった。じゃあ、今日の分をやる前に復習から入ろっか」
出来ないのならあまり要求はしないけど、これでも一応最低限の量だ。
宿題って言うのはあまり意味ないって話は聞いたしな……。
「あるじ、甘やかしすぎです。怒らないのは優しさではないです」
「うう……」
「あるじが毎日お前のために時間を使っているというのに、肝心のお前がやる気がないのはどういうことだ」
机に手をダンッと置き、アンが詰め寄った。
「だ、だって……難しいから……言葉と文字が一致しないというか、言葉は一緒なのに、文字だけが違うからすごく違和感があるから……」
「それが理由になんかなる訳──」
「ハイハイストップ。アンの言い分もわかるし、アルマさんの言い分もわかる。僕も疲れてるからあまり勉強に時間が取れてないのも事実だし、結局アルマさんの自主性頼りになってるのが、アルマさんの負担が大きくなってる理由なんだと思う」
「負担も何も……! こいつが分からないと言ったから勉強をしているわけで」
「僕はたまたまユニークスキルを取って最初から分かってただけだから、この世界の言語の勉強がどれだけ大変なのかってのを知らない。けど、知らない言語の勉強っていうのはすごく苦労することってのは知ってる。だから、アンも長い目で見て欲しい」
僕が言語理解ってスキルを取ったのも、英語とか覚えるのが大変だったからって理由だったしな……。
「……それでもアルマさんに出してる宿題は難しくないと思う。本の読み直し、分からないところのピックアップしか出てないはずだよ。難しい、難しいと言っても既に勉強をし終えたところしか出てないはず。分からないところがあれば、この時間に言って欲しい」
そう話をすると、アルマさんはもじもじと足をくねらせて、とてもいいづらそうに顎を引く。
「……頑張ってついて行こうとしてたんだけど……、途中からついていけなくなって、置いていかれちゃって……」
「……どこから?」
ビクと身体を震わせ、目をそらした。
「四日前……くらいから」
「…………」
少しの苛立ちがでてきたが、直ぐに押さえ込む。
うん。心配するな。大丈夫だ。うん。落ち着け。
アルマさんはいわば生徒で僕は教師だ。
生徒が教師に分からないところを聞けないってことは、生徒が考える時間や意見を教師に言う時間を確保できてなかったってことだ。
ここで詰め寄ると、もっとできなくなる。学校内で勉強を教える時に学んだことだ。だから、大丈夫。
ペースが早かったってことか、改めないとな。
「……ふぅー……、わかった。じゃあ、今日はここまでで終わり。次の勉強会は二日後にしよう。それまでにアルマさんは四日前以前の内容の復習。それができたら四日前以降の内容で具体的に分からないところがあるなら、ピックアップしておくこと。最低、四日前以前の復習はしておいてね」
「は、はい!」
「じゃあ解散」
本日の日程は以上で終了となりました。
部屋を出て、ソファにもたれかかると、一気に疲れが出てきた。
頭がくらくらする……身体も痛いし、喉も乾いてきた。
「思ったより……キツいな、コレ」
以前と変わらない時間に寝て、起きてをしているから……ある程度はついていけるハズだ。むしろ、帰国する前までは普通に寝れてたから体は万全なはず。
……前は受け身で良かったのに、自主的に色々としているから疲れてるのかな。
(答えのない問答だ……)
目の上に置いていた腕を横に落とし、一度、ソファに倒れ込んでから立ち上がった。
「……早く、寝ないと……。明日も、訓練があるんだから」
僕はベットに横になると落ちるように睡眠をとった。
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