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5-1 最上位種発芽編:世界が変わっても
251 その頃アイツは
しおりを挟む広く、どこまでも広い……と思えるよう、結界が張りめぐされた空間。
森林が生い茂り、川が流れ、地上の自然豊かな土地にいるのかと思わせる場所。
耳をすませば、小鳥のさえずりでも聞こえてきそうなものだが。
実際に聞こえてくるのは小鳥の囀りなどではなく、奇っ怪な叫び声、鋭く高い金属音、連鎖して巻き起こる爆発音だった。
そこで対峙している異形のモノと白髪の少年。
「ふっは! っはあああっ!! ひゅ~!」
その二つの存在が出会った場所は、イニシアの大森林が有する中位ダンジョンの最下層──三十階層。
俗に言う、ラスボスの部屋である。
背中に生えているのは苔、大きく聳え立つドス黒い身体には一つ一つ鉱石のように尖ったモノが皮膚を突き破って顔を出している。
ムチのように撓り、木々に絡まりながら移動するその姿はまるで蛇のようだ。
その全長約50m、直径3~4mほどある太く長い身体に立ち向かう少年の身体は小さくも勇敢であった。
「……デカい、硬い、長いっ! さいっこうだね!」
長い口先から飛び出してきた毒液を浴びながら、前へ前へと歩を進めていく。
「う~ん……麻痺毒……か。耐性を得ようとしてるのに、変わり映えしないな」
数ヶ月前に攻略したばかりのダンジョンを再度攻略をするということ自体、馬鹿馬鹿しい行為だ。
ケトス自身、同じ場所、同じ階層、同じ魔物と戦うのは飽き飽きしていた。
だから、たった数日で最下層まで到達することが出来た。
歩くケトスの身体に毒液を溺れる程の量を吐きかけ、効かないと理解すると長い体で絞殺しようと小さなケトスの身体に巻きついた。
『フシュゥゥゥ――ッ!』
「……度し難い。新技を試すことも出来ないのか。あのエルフの二重魔法以来使えてないっていうのにさあ」
太く長い身体に隠れたケトスだったが、すぐさまその蛇の身体を切り刻んで姿を現した。
身体を切断されたことで暴れ始め、大地や樹木、岩石に体をぶつけながら移動を始めた。
「……へぇ、形態変化かぁ」
飛び上がり、魔素で翼を作って滞空をした蛇を見てケトスは楽しそうに見上げた。
「前にはそんなのしなかったよね。もっと、見せてよ」
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