【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

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5-2 最上位種発芽編:王都強襲

262 うわ、そういうことか

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(エリル……やろう)

 昂ぶる気持ちを抑えつつ、声をかける。

(まっかせてくださいませ!)

(今回は制御しなくていい、目の前のあいつに全部をぶつけるつもりで動こう)

(わっ! 中級以上も有りですか!?)

 飛び跳ねるような声が聞こえて、ぼくも口角が踊った。

(うん。お互いに火力を意識してやろう)

 小刀を持ち、魔素を層のように纏わせる。
 あとはこの状態を保つようにして、体に自己強化スキルを重ねがけをしていく。そしてシンプルに僕が魔法を放てるように──魔導を頭の中から引っ張り出せるように――

 それは、偶然だった。
 本当に意図をしていた訳じゃない。
 心が踊る方へ。本能が赴くまま、やろうと思ったこと。
 
 昔に、こうできたらいいな、と想像していた理想形ができあがっていた。

 武器での物理攻撃。
 武器に纏わせた魔素での半自動で発動される簡易的魔法攻撃。
 自分が放つ魔法攻撃。
 エリルが放つ魔法攻撃。
 
「全力で体を動かすなんて……初めてだよ」

「貴様さっきからなにを言って――」

「動け」

 自分が出せる最高速で地面を蹴り、魔族の体を地面へとたたき落とした。

「グッ──!?」

 歪む。
 楽しい。
 早すぎる。
 あぁ、いいなぁ。この感覚は初めてだ。
 
「なぁッ!!?」

 そのまま再度上空へ放り出すように地面から鉄の槍を召喚させて、上から鉄の壁を叩きつけた。

「ぐっ、あ──」

 腹部が貫かれ、身体が潰された魔族は混乱状態だ。
 心配しないで、僕も自分のことが分からないから。
 
 解除した瞬間に生まれた残骸で、更に鉄の棒を作り出しその上を全速力で駆けていく。目指すは空中で苦しむ魔族の元へ。
 
「ふっ、ざけるなぁあああああ!!!!」

 魔族にたどり着いた瞬間に解除、同時に四つの物理と魔法の混合攻撃を繰り出していく。
 
 回転数の早い小刀が魔族の皮膚を抉り、そこに全属性の初級魔法がランダムに放出して空中に『火槍ファイアランス』『衝撃インパクト』『風刃ガウィン』が現れて、消えて、また現れる。
 
「『熱界ノ光カロツェレイ』『稲妻ライトニング』『鉄槍アイアンランス』『風大槌ウィンドパウンド』」

「なんだッ……!? この連撃!!?」

 ぼくの魔法と同タイミングにエリルの魔法が発動されていく。

(『雷轟ロベゴ・トゥル』『氷槍掃射アイシクルファイア』『極圧プレシオル』『黒炎ノ纏イグニ』!)

 右から左から正面から後方から、四方八方から襲いかかる猛攻撃。

「ちょ、が、お、ま──」

 伸ばしてきた手を切り刻み、そこからも魔法が発動し、体内で爆発をしていた。
 魔族の体は無数の穴が開いて、手足は千切れ、抉れ、血液を空中で撒き散らしながら朽ちていく。
 そして、それは僕の体も一緒だった。
 脳みそが負荷に耐えられず、オーバーヒート状態なのがよく分かる。
 お面の下では鼻血が垂れて、意識が朦朧としてくる。
 
「っぅあ……!!」

 空中に滞空するためのスキルなんてまだ持っていない。自分の体を浮かし、暴れ回るために逆方向に風魔法を放出しているだけ。燃費がすごく悪い。
 既に消えた魔族の体に剣を振ると、一気にバランスを崩して空中から地面へと真っ逆さまに落ちていく。

「あ」

(ますたー!? うわっ、うわわっ!! すみません!! 本当に魔素を使ってしまって……!)

 聞いたことの無い魔法名を生き生きと叫んでいたエリルがようやく気づいてくれたようだ。
 
(『風よ』! あれ、あっ、あっ!! そっか魔素をこれ以上使うと。えっ、ど、どうしよう)

 高さ20メートルほどの高さからの自由落下で僕の体って死ぬのかな。
 耐性とかって意味あるんですか? どうなんだろ。
 もう、身体いたすぎ……。
 
(エリル、僕のからだって落ちても大丈夫?)

(死にはしないと思いますが……)

(ならいいや)

(打ちどころが悪かったら不味いかもですね……)

(不安になってきた)

 力尽きた僕のからだはそのまま崩壊した建物の上に勢いよく叩きつけられた。ガンッゴンッと高いところから低いところへ打ち付けながら、落下。

 打ちどころも悪かったとは思う。瓦礫の尖ってるところに後頭部を思いっきり、ぶつけた。

 でも、生きてる。

「……いよいよ化け物じみてきたな、僕の体」

 すっごく痛かったけど、生きてる……。
 結局は動けないから誰かに回収されないとここからは動けないな。
 まぁ、魔族を倒せれてからいいってことにするか。

「はあ~……」

「ご、ごめんなさいますたー……使いすぎちゃって」

「絞りカスみたいになってない? 大丈夫? 身体の感覚ないんだけど。手足とかある?」

「あるにはありますが……結構、血が」

「いつもボロボロじゃあん……」

 仮面を外して空気を思いっきり吸い込みたいけど、それもできないや。
 
「そういえば、なんで……急に身体の調子がいいんだろ」

「仮面の効果……っていっても違いますもんね?」

「うぅん……なんなんだろ。いつもと違うの……服とか。強くなってるっていっても、なんか違ったし」

「眼帯じゃないですか……?」

「眼帯~……? そんなことある~?」

 ポケットに入れていた眼帯を出して、鑑定をしてみた。
 そういえば、これって鑑定したことあったっけ?

 ▶名称:東魔女ノ眼帯
 ▶効果:治癒魔法を主とする者の魔素消費時の魔素消費量75%減、魔素放出60%減。

「…………」

 あれぇ……?
 もしかして、これが原因……??

「エリル……これさ」

「これが原因ですね。絶対に」

「やっぱり? そうだよなぁ……」

 そうなると、今までが「ぼくが制限された状態」でさっきの調子がいいと感じたのが「通常時」ということになる。

 いつもこんな枷みたいなの付けてたってこと……???

 鑑定を覚えた日に、確かやってみたことがあったなぁ~……あのときは何も知らなかったから、なんとも思わなかったけど。

「……いつも、制限されてたんだ」

「危なかったですね……」

「ね……ん?」

 ──ガサッ。
 足音が僕の近くに近づいてきているのが聞こえた。
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