寡黙な消防士でも恋はする

氷 豹人

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続編 愛くらい語らせろ

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 高速を降りる。国道沿いにはテレビCMでお馴染みのチェーン店がずらりと並んでいる。俺もお世話になっている牛丼屋と大衆食堂の間の、車一台がやっと通れる脇道に入った。
 いきなり両隣が田畑になる。
 車はそのまま進み続けて、仕舞いには山深い一本道へ。
「おい。本当にこの道か?」
 瓦屋根のしかも蔵まである立派な民家を通り過ぎて、次第にポツンポツンと家と家の距離が広くなっていく。さっき通り過ぎた民家で最後、集落はついになくなった。
 田畑の猿避けの電気柵が巡る山道を、ひたすら車は進んで行く。周りは水が入り出した田んぼばっかりで、建物らしきもんは見当たらない。俺ら、どこ連れて行かれるわけ?
「おい、日浦って」
 無視かよ。
 ほら、ミイも不安そうに電気柵を見てるぞ。
「もうすぐだから」
 器用に片眉だけ上げて、いらいら具合を表現するんじゃねえよ。


 不意に車が止まった。
 目の前に巨大な門がそびえたっている。鋳物製で蔦模様が細工された凝った造りの門の先と空が近い近い。どんだけ高いんだよ。特注か?
 日浦は運転席から降りて、カメラ付きインターフォンを押す。
「お待ちしておりました。日浦様」
 予め写真でも送ってあったのか、名乗る前に言い当てられる。 
「どうぞ、お入りください」
 機械的な男性の声に続いて、がちゃん、と錠の外れた響き。ギイと耳障りな擦った音を立てながら、ゆっくりゆっくり扉が開いた。まるで銀行の巨大金庫の扉みたいに、えらく分厚い。
「ようこそ。代表の三枝さえぐさです」
 出迎えたのは、四十半ばくらいの坊主頭の小太りのおっさん。丸眼鏡が昭和の漫才師みたいだ。首元まできっちりと釦を閉め、お辞儀も見事に四十五度。いかにもな作り笑いに虫唾が走る。
 三枝の後ろに付き従う男二人もクセのありそうなやつら。さしずめ、殿様の小姓といったところか。すぐさま湧いたイメージは、産卵前のカマキリ。明らかに俺達を歓迎してないな。胡散臭さそうに見てくるんじゃねえよ。
「では、失礼しますね」
 はいはいはい。どうぞご勝手に。
「最近、何かと物騒ですから。ついこの間なんて、空き巣がありましてね」
 なんて何やら言い訳しながら、カマキリに俺達の身体検査をされる。脇腹ばっかり撫でるな、くすぐったいだろうが。尻をぱんぱん叩くな。お前の手は布団叩きかよ。
 散々俺の体を撫で回して、やっと納得してくれたらしい。だから、物騒なモンは何もねえから。
「どうぞ」
 俺ら三人に合格点を出した三枝は、恭しくお辞儀をした。今度はきっちり六十度。こいつ、本当はアンドロイドとかじゃないよな。
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