クトゥルフの雨

海豹ノファン

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窮鼠猫を噛む

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「んあ…私いつのまに…」

私は机に突っ伏して寝ていた。
ふと時計を見る。


「いけない!お昼が終わっちゃうわ!」

私は慌てて持ち場に戻った。

「貴女一人のお陰でみんなが困るって何度言ったらわかるの!!」

「ごめんなさいっ!」

お局に頭ごなしに怒られひたすら平謝りをする私。
正直言うと会社は辞めたい。

しかし給料が良いのと一人暮らしで実家とも疎遠な為辞めるに辞めれない状況なのだ。

それにしてもキャシー君が言ってたのは何の意味があったのかな?

夢なのにリアル感があり仕事中もその事で頭がいっぱいだった。

江戸華喧華SIDEーーー

全くあのゆとり娘さっさと辞めればいいのに!
仕事中もニヤニヤしてて気持ち悪いわ!

「邪魔よ!」

「す、すみません」

カップルにわざと引き剥がすようにぶつかる私。
道くらい譲りなさいよあのゆとりと言い今のカップルと言いどうして最近の若い子は周りを考えない子が多いのかしら!

ふとそんな時「キャアァ春兎さん助けてえ!」と女の子の悲鳴が聞こえてきた。

私に正義の血がたぎる!

WNIが助けに来る前にこの私が助けてあげるわよ!!
私は声のした方向に向かった。

「!!!」

声のした方向には男が女の子を襲っているのが見えていた。

「素敵な夢見せたんだから良いだろ一回やらせろよ!!」

「やめて!警察を呼びますよ!!」

え?あの襲われている子はあのゆとり娘!?
それと夢って何のこと…はっ!

私は徳島の都市伝説を思い出した。

気の弱った女の心に入り込み、一時期夢の中に入り込んで相手をまどろむという夢魔《インキュバス》がいると言う。

とするとあの男はゆとり女の意識に入り込み、夢を見させたという夢魔?
ただの都市伝説と思っていたけど真実だったようね。

あの子の気が弱ってたのは想像つくわ。
今は男からあの子を助けに行きましょう!

「あんた達何をヤッているの!?」

私は大声で叫んだ。

ゆとり…もとい海溝さんは男に衣服を剥ぎ取られて半裸になっている。

「くくくお前はこいつの上司だったな、お前さんのおかげでこの子の夢を食うことが出来たぜ、ありがとよ!」

こいつ、逃げるかと思ってたけど動ずる様子も見せず、それどころかナイフを取り出してきた。

「江戸華さん!逃げて!!」

こんな状況に自分より相手を気遣う海溝さん、その気概を日頃の仕事に活かして欲しいものだけど今はコイツを何とかしないといけないわ。

「海溝さんは警察に連絡しなさい!」

私は海溝さんに怒鳴る。

「け、携帯はどこかに落としちゃいました!」

海溝さんは涙目になって嘆く、まったくどこまで役立たずなのかしら!

「もう良いわ!誰かに助けを求めなさい!コイツは私が何とかする!!」

海溝さんは言われると誰かに助けを呼ぼうと叫んだ。

「チンダレちゃん!まりあちゃん誰か助けに来て!!」

人はいたが海溝さんの声に全く反応しない。
日頃声の小さい海溝さんだけどこの声だと流石に聞こえるはずだし暗がりでもこの状況は嫌でもわかるはずなんだけど…。

「無駄だ!ここは俺の結界が張られている!お前らが叫ぼうがその声は俺の結界内でしか聞こえない、つまりお前らはここから逃げられないのだ!」

男は殺気に満ちた目でナイフ片手にほくそ笑んでいた。

なんて事かしら。

ようやく45歳にして私にも春が来たと言うのにこんな時に死にたくないわ、可哀想だけど海溝さんを囮にしちゃいましょう、こんな状況に正義とか言ってられない、だって一大事なんだもん。

そこで私は海溝さんに「ごめんね」と一言詫びる。

「江戸華さん?」

海溝さんの顔が何を勘違いしていたのか僅かに明るくなる。

その刹那、私は海溝さんの腕をすかさず掴み、男の方に放り投げた。

太い腕の私にとっていかにもモヤシな海溝さんは投げやすくいとも簡単に投げられてくれた。

この後は海溝さん次第、修羅君という素敵な彼氏が出来た私は今は死ねない。

海溝さんはバランスを崩し男にぶつかる。
私はその隙に逃げ出した。

海溝さん死にたかったんでしょ?願いは叶えてあげたわよ、せめて来世では幸せになって出来る子になるのよ、じゃあね!

私は海溝さんの冥福を祈りながら走り去った。

「わぶっ!」

私は何か見えないものにぶつかった。

「な、なにこれ!?」

私は見えないはずの何かが遮ってこれ以上進めないのに戸惑う。

「言っただろう逃げられないと!」

男は私を一点に睨み私に放った。
嫌だ!私はまだ死にたくない!

そんな時男の足首を倒れていた女の子が掴んだ。

「私はどうなっても良い!でも江戸華さんには手を出さないで!」

海溝さん、なんて立派なのかしら、この子ならなんとかやってくれるかも知れない!

「しつけえ!」

男は海溝さんに蹴りを放ち、海溝さんは仰向けに倒れ込む。
もう!ちゃんとしてよ!私が殺されちゃうじゃない!!

「いひひ…次はてめえだ!」

男はナイフを持って私を一思いに刺そうとした。
い、嫌だLang_Eさん助けて!

潤実SIDEーーー

あぁ結局誰の役にも立てなかった…。
仕事も鈍臭いしダメだな私…。

寒い…意識が遠くなっていく…。
それよりあの人どうなっちゃうんだろう?
いつもうるさい人だったけどあの人だって私を助けに来てくれたのだから本当はとても良い人なんだ!

だってあの人私の事謝ってくれたもん、ああ…この言葉があの人の本心なんだなって思ったよ。

私みたいのはどうなっても良いけど本当は優しい江戸華さんがいなくなるなんて本当に世界は不公平だわ…。

せめて人生の最後くらい華々しく散りたかった…。

『貴女はまだ死ぬ時じゃないよ!』
その時、懐かしいある声がした。

「お、お婆ちゃん!」
その声はガンで亡くなったお婆ちゃんの声だった。
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