クトゥルフの雨

海豹ノファン

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ゆとりの本気!

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パァーッ
光が止んだ後私の前に現れたのは小さい頃によく遊んでもらったお婆ちゃんだった。

『私は知っている、不器用だったけど、誰よりも一生懸命だった子よ!立ち上がりなさい!貴女は真の力に目覚めるのです!』

お婆ちゃんはそう放った。

「私に真の力なんてあるの?」

『迷う暇はありません!あの人を助けたいんでしょう!?今がその時です!!』

そうだ!あの人を助けなきゃ!
私は立ち上がった。

パァーッ!

私の身体が光輝く。
それも夢なの?

『いいえ夢ではありません!貴女はバルキリーとして生まれ変わるのですっ!』

するとお婆ちゃんの身体は見る見る内に甲冑を纏った神々しい女神の姿となった。

『これが本来の姿、私達徳島の女性は愛国の名の元に第二次世界大戦を戦い抜いたのです!』

お婆ちゃんは20代後半くらいに若返り右手に槍、左手に盾を持っていた。

「ああお婆ちゃんっ!」

私はお婆ちゃんに触れた。
するとお婆ちゃんは光の粒となって私を包み込む。

お婆ちゃんだった光の粒は兜、鎧、槍、盾に分かれて私を包む。

温かい…血がどくどくと流れて寒くなった身体はお婆ちゃんの温もりで温たまってきた。

そうだ、私は戦わなくてはいけない!
江戸華さんを助けなきゃ!

そして私は現実に戻った。

ーーー江戸華SIDE

「ゆ、許して!この事は他の人には言いませんからっ!!」

私はナイフを持っている男に命乞いをするしかなかった。
そんな時倒れていた海溝さんの身体が眩い光に包まれた。

車のヘッドライトが灯《つ》いたかのように潤実さんの体が光りだす。
その光に気づいたのか、私を殺そうとしている男もそれに反応して後方を振り向く。

光が薄くなったその時、刺されて意識を失ったはずの潤実さんは何事も無かったかのように立ち上がった。

「てめえっ!まだ生きていたのか!?」

男は潤実さんにナイフを突き出し、脅す。
しかし私が知っているいつも気弱な潤実さんはそこにいなかった。
潤実さんは何かの英霊が乗り移っているかのように変貌を遂げ、堂々と男を真っ直ぐと見やり「そのナイフを捨てなさい!」と言い放った。

どうなっているかわからないけど今はこの子に頼るしか無いわ!

「江戸華さん!何をしているのです!敵は後ろを向いているのだからナイフを奪い取りなさいっ!!」

とこんな事を言い出すではないか!
私は上司なのよ!なんでこんなゆとりに偉そうに言われなくちゃならないの!?

でもこの男に向かったら向かったで何されるかわからない。

「何言ってるの!?貴女若いんだから貴女が立ち向かいなさいよ!!」

私は悔しさに紛れて怒鳴り返した。

「ふんっ、こんな状況で仲間割れか…」

男は笑みながら私達にナイフを突き出し警戒する。

「「誰がこんな奴と!!」」

なんでこんな娘と声が重なってしまうの!?
これじゃ本当に知り合いみたいに思われるじゃない!
冗談じゃないわ!!

私は穴があれば入りたい気持ちになった。
私の思惑をよそに海溝さんは男を睨んでいる。

「女だからって見くびらないで頂戴!私は一度死んで生まれ変わったのよ!」

海溝さんの身体からは薄い水色の光が漂っていた。
これは所謂「闘気《オーラ》」!?

「試してやろうじゃねえか!!」

男はナイフを構え海溝さんに襲いかかった。
海溝さんは怯むことなく男と格闘している。

「海溝さん頑張って!」

私は戦っている海溝さんにエールを送る。

「キャアッ!」

しかしやはり男と女の力量の差から、海溝さんは男につき倒される。

男はナイフで海溝さんの腹わたに突き刺そうとし、海溝さんは必死に抵抗している。
どうしたら良いの!?

「誰か助けてぇ!!」

私はひたすら叫び、助けを呼ぶ。
しかし誰もやって来ないし近くにいる人も何故か素通りしたり呑気に駄弁っている。

「ゼウむす面白かったよなー!」
「そうそう、俺蓮香ちゃんに本気に恋しちまったよー♪」

なんと今流行りのアニメのゼウむすの話をしているではないか!

こっちに気付いてよ!!
海溝さんが殺されたら次は私が殺されるのよ!

「いひひっ死ね!」

「くっ!!」

危ない、海溝さんがやられるっ!

「やめなさいっ!」

私はその時はじめて自身のしなければならない事に気付き、男に向かっていった。
ガシリと男の腕を掴み、海溝さんを助けようと奮闘する。

「しゃらくせえ!!」

男はその時ナイフをぶん回し、私の衣服はそれによって破かれた。
その隙を見て海溝さんは男の股に蹴りを入れる。

「ぐがっ!??」

男は股間を抑えて悶え苦しむ。

「海溝さん!この結界から出られないわっ、どうしよう!??」

私は結界をバンバン叩き海溝さんに救いを求める。

「この男を殺してしまわない限り結界から出られないわ!」

「嫌よ!警察に捕まっちゃうわ!」

「この男に殺されても良いの!?」

海溝さんは放つ。
男の隣にはナイフが転がっていた。
海溝さんはそれを奪い、男の腹わたを突き刺す。

「!!」

私は思わず目を覆った。
完全に息の根を止めるまで海溝さんは矢継ぎ早にナイフを突き立てる。


怖くて見ていられない…アレが海溝さんの本性…?
…その時の事だった。

「君!何をヤッている!!」

向こう側から別の男がやってきて海溝さんを取り押さえた。
海溝さんはその時始めて血に染められたナイフを落とし、自分も男の返り血を浴びながらもやっと終わったと安堵の表情を浮かべていた。

そして私達は職務質問を受ける事になるが海溝さんは殺意を認め、私を懸命に庇ってくれた。

「貴女、被害者は沢山刺されていたと言うのに何故止めなかったのです?」

「そ、それは…」

警官に問いかけられ戸惑う私。

「この人は悪くありません!憎たらしくて殺したのです!!」

嘘を張ってでも私を庇う海溝さん。
私は終始黙っていたままだったが私を庇ってくれた海溝さんは2年以下の懲役に三ヶ月の執行猶予が与えられた。

立派な海溝さん、私はやっと春が来たから貴女を救う事は出来なかったけど私が貴女の分まで幸せになってあげるからね!

私はおめかしをして大文字修羅君と初デートに出かけた。
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