クトゥルフの雨

海豹ノファン

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世直しのヒーロー

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そんな時の事だった。

「その女の子を離してやれ!さもなくば俺が許さねえ!」

と男の怒号が響いてきた。

「だ、誰だ!?」

銀行強盗の一人が周囲を見渡しながら叫ぶ。
そんな時立派な体躯の男が銀行強盗達の前に現れる。

「て、てめえは!?」

銀行強盗達は目を見開く。

「俺の事知ってるのか?俺もいつのまにか有名になったもんだな♪」

男はニヤッとさせて腕を組む。

銀行員達もその男に期待と尊敬の眼差しを向ける。

「おお彼は徳島を拠点にして数々の事件をその腕一つで正していっているヒーロー!」

「救世主がやってきた、ありがたやありがたや…」

囁きあったり中には手を拝んで泣く老婆も。

人々は銀行強盗から脅されているので叫ぶことは許されない、しかしヒーローに尊敬の眼差しを向けて人々は囁きあった。

「世直しのヒーロー、江戸華喧太郎《えどばなけんたろう》」と!

「近づくな!この女がどうなっても良いのか!」

強盗は喧太郎と名乗った男に狼狽えながら脅す。

「女を囮にしないと何も出来ないのか!このチキンが!」

喧太郎は一点に睨みを利かせる。

「にゃにおう!」
「きゃっ!」

強盗は女を乱暴にぶん投げる、女は備えてある花壇にぶつかる。

「俺の短剣さばきをなめるな!!」

バババババババ!!!

強盗は短剣技の達人、強盗は短剣を目にも止まらぬ速さで喧太郎の体全体を蜂の巣にしようとした。

「短剣百烈突き!!!」

強盗の無数の手に持った短剣が喧太郎に襲いかかる。

バババババババ!!!

しかし喧太郎はそれをものともしない、その代わり、喧太郎は今、激しい正義の怒りに燃えていた。

「死ねえ!!」

喧太郎を抉ろうとするその短剣、しかし喧太郎は男の放った短剣百烈突きを片手で受け止めてしまった。

「てめえぇ…良くも女の子を乱暴に投げやがったな!??」

喧太郎は若い女性を少なくとも乱暴に投げたその男に対して怒りの炎を放つ。

グオオオオ!!

喧太郎の正義の闘気が炎の如く燃え上がる。

女性は他の男性らに起こされるが頭を手で抑えていたことから頭を強く打っているだろう。

喧太郎の凄みに恐怖で固まる銀行強盗の一人。

「女を傷つけた罪で俺の正義の怒りを込めた拳で貴様に正義の鉄槌を下す!!」

「うわっ!?」

唸る喧太郎の剛拳、闘気、正義!
喧太郎の顔も恐ろしい形相の魔神となり目の前の男に殺気を放つ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

喧太郎もまた、無数の拳を男に浴びせる。

「こ、この野郎!!」

もう一人の強盗が拳銃を喧太郎に向ける。

バァン!!

すかさず喧太郎はボコボコに殴られ、原型を留めなくなった銀行強盗の襟を掴み、彼を盾にした。

「てめえ!自分の仲間を盾にしてそれでも人間かー!!」

喧太郎は激しい怒りに燃える。

「こ、こいつはてめえが…ウボァ!!」

喧太郎の拳が男の顔面をえぐる。

「オラオラオラオラオラオラ!!!」

喧太郎はタコ殴りにされた上殺された強盗のように一方の強盗もタコ殴りにした。

銀行内にいる人々は目をキラキラさせて強盗をタコ殴りにしている喧太郎を見守る。

「ああ勇者様…♪」

若い女性も喧太郎に惚れ込んだようで、うっとりと喧太郎を眺めていた。

そして既に伸びた強盗を外に放りだし、殺されたもう一人の強盗も外に投げ飛ばした。

「悪党滅すべし!!」

男二人を突き出した喧太郎は再びどこかに世直しに行こうとする。

「お待ちください!」

そんな時、人質とされていた若い女性が喧太郎にすがりつく。

「私もお供させてください!」

女性は喧太郎に尊敬の眼差しを送り、共に連れて行ってとすがる。

「危険がいっぱいだぜ?それでも良いのか?」

「はい♪」

そして喧太郎はその若い女性も旅に連れる。
連れられた女性は嬉しそうに喧太郎の逞しい腕に身を重ね、喧太郎と共に旅へ…。

しかしこの後、若い女性の姿は行方知れずとなる。

彼女が一体どうなったのか、喧太郎以外は誰も知らない…。

海溝潤実SIDEーーー

私がたまに目につくもの…サキュラと共同生活に入り一週間、最近は慣れてきたがたまに彼女に目につくものがある。

日本とルルイエの文明の違いだろうか…?
いや日本でもそう言う生活をしている人は割といると言う。

「この恰好がそんなにいけない?」

とサキュラが聞きだす、そうだこの子は人の心が読めるのだった。

「この恰好…恥ずかしくないの…?」

サキュラはスレンダーで華奢で水色に近い白色の肌を魅せている。
サラサラした羨ましい程の綺麗な水色の長い髪、魚の尾びれのような耳、切れ長の瞳に理想的に整った顔立ち。

妖精のような姿の少女が何も着けておらず、普通にカップに牛乳を入れて飲んでいる。

「女の子同士なんだから良いじゃない」

とサキュラは言う。
風呂上がり、寝る前とかはよくその恰好になっている。

まあ外に出る時、私に訓練を施す時は流石に服は着ているのだがその服すらはじめは慣れないものがあった。

ミニドレスを常に羽織るのだが男の前でその恰好で歩くのは恥ずかしいだろうと言う恰好だ。

服を奪われたとは言え前章で今のサキュラのような装備品0の恰好のまま痴漢と戦っていた私が言える事じゃないのだが…

「日本の文明って凄いわね…これは冷蔵庫と言うのかしら?こんな生活続けていくと日本人が怠惰になっていくのもわかるわ」

最後の言葉には鈍感な私にも何か引っかかるものがあったがサキュラは大体こんな口調だ。

因みにサキュラは魔法が使える、魔力は使ってたり病気になったりすると消費するのだそうだが寝ると大体回復すると言う。

今の私も身を清めてそのような体になったとサキュラから聞かされるのだが…あまり実感が無い。

サキュラと自身の体に馴染んだ魔法を習ったり敵と戦ったりする訓練をしている間に少しだけだが魔法は使えるようになった。

不満なのは火の魔法が使えないから火を灯《つ》ける時はガスコンロとかを使わなければならない事だろうか?

まあ使えた方がかえって危険かも知れないので今の水の魔法でも生活する中では事足りると言えば事足りるのだろうけど…。

この私がまさかこれから戦うなんて思いもしなかった。

世の為人の為とかどうでも良い、私は平和に過ごして、平凡に過ごして…ただ黙々と生活出来てさえいればそれで良い。

今の生活をする事になる前からいじめられて嫌われ者だった私にはそれさえ夢のそのまた夢のような話だったのだけれど…サキュラは言う。

「世を正す為に戦うには正義の味方よりも貴女のような子が必要なのよ、正義を振り翳す者に正義は無い、私達ルルイエの諺《ことわざ》にそのようなものがある、ガニメル兄さんの座右の銘でもあったわ」

サキュラから死に別れた兄がいると聞かされた。
写真は無いのだけどサキュラが私にイメージの魔法を使って兄の姿を見せてくれた事がある。

やっぱり家族と言うのか…顔立ちが整っていて凄くかっこいい…程よい筋肉、整った顔立ち、サキュラと同じく青髪で魚の尾びれのような耳に水色寄りの白肌なのだが…彼女が言うには私はガニメルと言う子と丁度同じスキルを持っているらしい。

更にサキュラが言うには

「信じられないけど貴女はガニメル兄さんの生まれ変わりではないかと思う…ここまでスキルが被るなんて有り得ないもの…」

ん?こうなると話が合わなくなる。
何故ならサキュラちゃんは見た感じ12歳くらいの女の子…私は19年生きてきたからガニメルさんの生まれ変わりとなるならどうしてもサキュラちゃんより歳下でなければならない。

しかしサキュラの正確な年齢はわからない。
サキュラは教えてくれないし「ルルイエ人にとって年齢とかはさほど重要なものでは無い」と言うのだ。

また話は戻すが、私は世の中を正すには正義の味方とか、正義感も必要になってくるのだと思うけれどサキュラはこう言う。

「正義や秩序を重視し過ぎるとそこから混沌が生まれて収集がつかなくなる、どどのつまり正義は生き物の体にある赤血球や白血球と変わらない、貴女達の言葉でいう[諸刃の剣]なのよ」

「あ、そろそろ九花のメイガス始まっちゃう!」

私はリモコンを手に取りテレビを点けた。
しかしテレビの画面にはニュースが映っていた。

『徳島県の○○市内で男が殺害される事件がありましたが、被疑者とされる19歳の少女が精神鑑定を受けている間に逃走しており、現在も行方を追っています』

私はサキュラと夕食を摂っていたがそれを見た途端口に含んだミルクを噴き出してしまった。

「え?これって私の事?だとしたらやばいよヤバイよ!」

私はサキュラに助けを求めるがサキュラは

「ニュースでは19歳でも少女と呼ぶのね」

と呑気に夕食を食べていた。

「焦る事は無いわ、貴女を見た人の名前や顔の記憶は消してあるから」

「そう言う問題じゃ…!」

「しっ!」

私が抗議しようとするとサキュラはニュースに気になったのか、私の講義を制止した。

『続いて徳島のニュースです、徳島一を誇る銀行で○月×日未明、銀行強盗が押しかける事件がありましたが世直しの喧太郎を名乗るヒーローが現れ、被疑者二人を警察に引き渡しました、しかし被疑者の一人の男性は死亡が確認されています』

世直しの喧太郎…最近徳島の街に現れたヒーローだわ。

「世直しの喧太郎か、かっこいいな…♪」

私は世直しの喧太郎を見てウットリする、精悍な顔立ち、逞しい身体つき、鋭い眼光もヒーローとあらば魅力的に映る。

「ねえねえ、彼のような人が世界を正すのに必要なんじゃ無いかな?」

私はサキュラに聞いてみた。

「いや、彼はインスマス…私達の敵よ!」

サキュラは射抜くような目で放った。

「彼のような人が今の日本を乱している、私達はなんとしても彼を食い止めなければならない!」

「え?そんな…」

あの強そうな人…私が勝てるのだろうか?
その時サキュラが私の心を読んできたのか、次のような事を言ってきた。

「勿論、貴女一人では無理がある…そこで、貴女には会って欲しい人がいるの」

サキュラはこう言ってきた。

「彼女も所謂[正義の味方]なのだけど彼とは違い、正義を正しい方向に使っている賢い子よ、きっと心強い味方になると思うわ」

目を細めてサキュラは言う。
一体どんな人なんだろうか?
こんな私でも上手くやっていけるのか?

自信の無い私はこう余計な事を考えていた。
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