クトゥルフの雨

海豹ノファン

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煉獄の男

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可園神社ーーー

火を纏った獅子の像が中心の大きな鳥居を守っているように佇む。

山にあり上まで登ると可園神社という神社に辿りつく。

徳島に伝わる赤熊《しゃくま》神が祀られている。
徳島の火の神で彩華の火を基調とした異能もおそらく赤熊から頂いたものだろう。

「さっさと歩けよグズ!」

車から引きずられるように降ろされる私。
逃げられないように腕を痛くなる位掴まれて神社まで歩かされる。

シンナが後ろから罵声を上げて私を蹴り強制的に歩かせている。
この二人には抗えず言う事を聞くしか出来ない私。

こうして後ろの二人に両手を固定された形で神社の中に入れられた。

「連れて来たよ神主さん」

「全くこの娘に恨みを持つのは良いが本来の目的を忘れられては困る!」

少し長めの黒髪に道着を羽織り、口髭を生やした男は呆れたように漏らす。

「彩華のお父さん!?貴方まで私を疑ってるの??」

「無実ならそれらしい証拠を見せられる筈だ!」

ギロリと睨まれる私。
流石彩華の父とだけあり目力が半端ない。

「二人は何をしている、任務は終わったんだから今すぐ帰れ!」

神主、彩華の父はチク、シンナを帰す。

神社には私と、彩華の父だけが残った。

「そう言えばお前とは顔を合わせるのは初めてだったな、私は可園熊次《かえんくまつぐ》、可園彩華の父であり可園神社の神主だ」

「う…海溝潤実です…ひょっとして貴方も私を疑ってるんですか?」

熊次は黙って私を睨んでいる。

「…でなければ誰がいる?」

この人まで…一体どうなってるの?

「信じてください!娘を亡くされたのは気の毒だと思います!でも私は娘を殺してはいません!!」

「まだこのような絵空事を言うか!!」

熊次は怒声を放ち私に掌底を放つ。

「あぐっ!」

私は何故か壁方向に引力が働いたかのように壁に叩きつけられ、体の姿勢まで大の字となってしまう。

そこで巨大な釘が私の腕や足、計4本が突き刺さり私は固定されて動けなくなる。

「これが何なのかわかるか?」

熊次は着物の袖からあるものを取り出した。
取り出したもの、それは藁人形だった。
藁人形は大の字にされている。

「こ…これは…?」

恐る恐る私は聞く。

「そう、これはお前だ、これを火に近づけると…」

そう言って熊次は藁人形の足部分をろうそくの火に近づける。

「あっ、熱っ熱つ!!」

私の足部分に急激な痛みが走り私はもがき苦しむ。

「お前が潔白ならこれから私が与えるお前への苦しみも耐えられる筈だ!私や娘が味わった苦痛はこんなものじゃない!」

そんな滅茶苦茶な…。

サキュラSIDEーーー

もう日が暮れると言うのに潤実はどこで道草くってるのかしら。

いくらあの子が方向オンチでも徳大病院の位置くらいは知ってると思うんだけど。

「サキュラ、大変なんじょ!」

トラテツが切羽詰まった様子で迫ってきた。

「どうしたのトラテツ?」

私は聞いてみる。

「彩華の魔力石がなんか変なんじょ!」

トラテツが首輪にかけてある彩華の魔力石を見せてきた。

赤かったものが黒くなり始めてる。
これは…なんとかしないといけない状況なのかもしれない!

「これは…彩華が泣いているのだわ!」

「泣いとる?」

何かが原因ね…でも彩華は亡くなっているし声を聞くことも出来ない。

でも彩華の事は供養してあげたい。
何とかしないと…。

霊感のあるら神主かお坊さんなら何かわかると思うのだけど…。

海溝潤実SIDEーーー

私は大の字の姿勢で五寸釘を手足に打ち付けられ、身動きが取れない。

因みに腕と足が五寸釘に打ち付けられてたら死ぬだろうと言う話だが、巫力が働いているため身動きが取れない程度で済んでいるとの事。

彩華のお父さんは一方的に私のせいで娘が亡くなったと言って私と神経が通った藁人形に火を焼き付けたりしてくる。

痛い…熱い…助けてえみりん…。

ザクッ!

「ぎゃあっ!」

更に熊次さんは五寸釘を私の藁人形の心臓辺りに刺して、グリグリしてくる。

火で焼きつけてもグサグサ刺しても私自身には傷がつかない。

しかし神経は藁人形と通っているらしいので痛覚は襲ってくる。

「良い表情だな、貴様のような悪人がこうして白目を向いて汗びっしょりになって苦しみに喘いでいる姿は見ていて爽快だよ」

私は散々詰られ責められいたぶられ心は傷だらけで神経も何もされてなくても過敏になっているようだった。

その為表情にはそれが現れ、全身も汗で塗れて下はチルチルと出して床が濡れないように用意されていた桶はぬるま湯が溜まっていた。

「私が悪かったです…おうちに…帰してください…」

私は悪くは無いけど認めるしかなかった。
いや私がいる時点でいけなかったんだ…。

そのせいで奈照さんも…彩華さんも…。

「まだまだだ!お前には娘を亡くした私の苦しみ、そしてお前の為に亡くなった娘の分まで苦しんで貰わねばならない!!」

熊次さんは足、腕、お腹などに釘を刺しグリグリしだす。

「うああああああ!!!」

私の悲鳴は神社中を轟いた。

バンッ!!

その時神社の引き戸が勢いよく開かれた。

「むん?」

私の藁人形をグリグリしていた熊次さんは引き戸の方を見る。

「熊次さん!彩華を殺したのはこの子ではありません!今すぐその子を解放しなさい!!」

そこにいたのは年端のいかない少女と一匹のトラ猫。

サキュラとトラテツだった。

サキュラSIDEーーー

「何だと?私は夢で見たのだ!醜女が現れて娘を海溝潤実に殺されたと!!」

「夢…?」

「私は神主故霊感を高める修行を経て夢を見て霊との交信が出来るのだ!確かに醜女は言った、海溝潤実が娘と自分を殺したと!」

読めたわ、彼女は何かの目的で潤実に濡れ衣を着せて、暗に助けを求めているのね…。

醜女とは武斉葛子の事で、彩華さんを姉御と呼び慕い、高校時代を共に不良として過ごしていた仲間だ。

だから葛子の魔力石が彩華の魔力石と一緒になれず、それを証拠に彩華の魔力石が泣いているし葛子の魔力石も彩華と一緒になりたいと何処かで泣いているのだ。

「叔父様、きっとその人は彩華と一緒になりたいと何処かで泣いています。だから海溝潤実に暗に助けを求めていたんだと思います」

「助け…だと?」

「はい、トラテツ、彩華さんの魔力石を叔父様に渡しても良い?」

「にゃあ(うん)」

私はトラテツの首輪にかけられた魔力石を取り出す。

「これが叔父様の娘、可園彩華の魔力石です、元々は赤く輝いていたのですが今は随分と黒ずんでいる、きっと彼女もその人と一緒になれなくて泣いているんだと思います」

私は熊次に彩華の魔力石を手渡す。

「彩華…う…うう…」

熊次は彩華の魔力石を握りしめ、泣き崩れた。
やっぱり親子、手塩にかけて育てた娘ともなると親の悲しみも相当なもの。

彼女を殺したとされている海溝潤実に怒りをぶつけるのはもっともな気がする。

しかし彼女は直接彼女らを殺してはいない。
もっとも彩華や葛子はその原因が海溝潤実であると思っているようだけど。

「海溝潤実を解放して」

「わかった…ヨセウホイカ・ソワカ…」

熊次は呪文を唱えた。
すると潤実に固定するように手足に打ち付けられていた五寸釘は自動に抜き出て潤実はドサリと地に身を任せる。

五寸釘に打ち付けられていたはずの手と足は無傷で済んでいるが潤実の精神的ショックは大きい事はうなされていることから想像出来た。

私は人の精神的ショック、トラウマとなる記憶を消すことが出来る。

私は潤実の額に手を置き、念じた。
手から放たれる発光。

潤実は穏やかな表情になり、スウスウと眠っていた。

とりあえずは一安心ね。

「あの…」

熊次が聞いてきた。

「娘とその武斉葛子と言う人と会わせてあげたい、ご一緒しても良いですか?」

「ええ、貴方のような大人がいると心強いわ」

そして熊次、私、トラテツ、そして海溝潤実は彩華と葛子を会わせる為に葛子の魔力石を奪還しにまたインスマスのアジトに向かった
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