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第25話「少年はただ座するのみで己が情欲を解放する」
しおりを挟む五月十四日(土)十一時二十六分 旧・真希老獪人間心理専門学校(教室)
「君の好みのAⅤがわからなかったからねー。色々用意したらこんな数になっちゃってさー。」
「なんで今からここでオナニーしなきゃいけないんですかっ! 修行するんじゃなかったんですか⁉」
両手を振り上げ抗議する。
しかし、シモダさんは心外そうな表情を浮かべる。
「いやいや、これも修行の一環だよー。君のエーラの性質を確認しなきゃあ、稽古のつけようもないだろー?」
「そんなの信じられないですよっ!」
オナニーから始まる修行があってたまるか!
「神室、諦めろ。」
少し離れたところから嵐山の声。
嵐山は、目を閉じてただ頷いてくる。
「嵐山……」
まさかお前もやったのか? これ。
「ま、いくら神室君でも流石に僕たちの前じゃあやりづらいだろうしー、僕と嵐山君は校外で待たせてもらうねー。君の場合、それでも十分だから。」
「あ、ちょ……」
シモダさんは「三十分したら戻ってくるねー。」と言って、嵐山を連れて教室を出て行ってしまった。
扉の閉まる音。
マジかよ。
こんな不衛生極まりない所でオナニーとかしたくねぇよ。
第一、今そんなにムラムラしてねぇし。
「……ん?」
おかしいな。
なんで俺はムラムラしてねぇんだ?
いつもだったら四六時中発情期なのに。
ひとまず座ろうと椅子を引いてみる。
椅子の上には、ご丁寧にティッシュ箱とヘッドホンが置かれていた。
それを視覚が捉えた瞬間、今まで皆無だった情欲が、突如として泉の如く湧き上がってきた。
「あ……あ……オナニーしてぇ……」
駄目だ。
すげぇムラムラしてきた。
なんだこれ⁉
理屈をつけるならば、今の今まで心が休まる暇がなかったから性欲も湧いてこなかったけれど、こうして一人になり、ヘッドホンやティッシュ箱などという神アイテムを目の前にしたことによって、ようやく心にもやすらぎが与えられたといったところか。
思春期心因性性器硬化症に侵され、激しく自己を主張する愚息が俺に語りかけてくる。
オナニーできる空間こそが、お前の居場所なのだ、と。
「こんなんやるしかねーぜぃ。っひょーい!」
ヘッドホンとティッシュ箱を机に上げ、椅子に座る。
直後。
「あ……ちょっ…ま…」
座った瞬間、妙な刺激が玉袋の付け根の下、蟻の門渡りの奥深くに眠る前立腺をくすぐりあげる。
得も言えぬ快楽。
気が付いた時には、快感を孕んだ不快感を伴う液体が内ももを伝わり、臀部全体に染み渡っていた。
「あー……」
気持ちいい。
それだけ。
それだけで十分だ。
………………。
「いや、やっぱ気持ち悪ぃわ。」
パンツが精液でベッタリ尻にくっついてる。
気持ち悪すぎる感触に思わず立ち上がる。
パンツが、精液を染み込ませた自重に耐え切れず僅かにずり下がる。
気持ち悪い。
「はー……」
自らやったことに溜息をつき、パンツをズボンごとずり下ろす。
予想通りパンツ、そしてそこから溢れ出た精液がズボンにも付着していた。
ひどく濃い色をした粘性の液体が大量に。
ちょっと我慢しただけでこれだから困る。
ティッシュを三枚ほど取り出し、念入りに拭き取っていく。
たまに蟻の門渡り弄りながらオナニーしてたからなぁ。きっとそのせいだ。
にしても、ちょっと禁欲してただけで座った瞬間に射精とかどんだけだよ。
甲斐甲斐しく下着を拭いている自分の姿に、ちょっと泣けてくる。
精液を一通り拭き終わり、ティッシュに付着した部分を内側にしてくるむ。
僅かな隙間から、精液が溢れて手の甲を伝い、落ちていく。
「……さい、あく。」
五月十四日(土)十一時二十七分 旧・真希老獪人間心理専門学校(玄関前)
「やー、早速一発やったみたいだねー。」
下田従士が、後ろを振り返るようにして言う。
「僕たちが教室を出てから僅か十数秒で発砲とは、流石の早撃ちガンマン君だ。僕にはとてもじゃないけど真似できないよー。」
「俺にも無理ですよ。」
隣に立っていた嵐山楓も同意する。
「ま、それはさておき、ところで嵐山君。」
下田従士がにっこりと嵐山楓に笑いかける。
「今回の任務について、なにか思うことがあったんじゃないかな?」
「そう…ですね。」
下田従士の言葉を受け、嵐山楓は俯き答える。
「今の俺の力じゃあ、まだまだ戦えないってことがわかりました。」
「ほう? そりゃまた一体どうして?」
下田従士がわざとおどける。
嵐山楓は自身の手のひらを見る。
「エーラが、視えなかったんです。あいつ、神室の近くにいると、あいつのエーラに塗り潰されて、他のエーラが一切視えなくなる。そのせいで、何度も危機に陥りました。」
時雨雨高校のトイレで。
廃ビルでの攻防戦。
屋上の伏兵。
視えてさえいれば、回避できた危機もたくさんあった。
「おまけに、能力発動のエーラ効率もまだ完全にモノにできてませんでした。実践だと、どうしてもブレが出てくる。こんなんじゃあ、一人で戦い抜くことは難しいです。」
拳を握りしめる。
嵐山楓の姿を見て、下田従士は顎に手を当てる。
「うーん…。その考えは正確だけれど、正解ではないねー。」
顎から手を外し、指先を立てる。
「エーラの見分けや操作が苦手だと、実践ではフィジカル面でもメンタル面でも思うように動けなかったりする。その考え自体は正解だよ。でもね。」
嵐山楓の肩に手を置く。
「なんでも一人でこなそうとするな。一人で戦う力を求め続ける限り、君はエーラを理解しきれない。」
嵐山楓は拳から視線を外し、下田従士を見る。
「勿論、君がそのために能力を補う工夫をしているのは知っている。並大抵の努力じゃあできないことだ。それ自体は素晴らしいと思うよ。」
能力を極力隠し、出しても一瞬。
そして、その一瞬で誤認させる術。
「でもね、嵐山君。それだけじゃあ、君はいつしか潰れてしまう。先生は、そのことが心配でならないんだよ。」
「下田先生……。」
下田従士は嵐山楓の肩から手を上げ、再び指先を立てる。
「だから、これは君への課題だ。君に一体何が足りないのか、君は何を見落としているのか、探してみなさい。」
「課題……。」
「今回に関しては、僕からは一切のアドバイスをしない。全部、自分で探すんだ。いいね。」
嵐山楓は再び俯くと、顔を上げ、下田従士の目を見た。
「わかりました。俺に何が足りないのか、必ず見つけて見せます。」
下田従士は笑顔で頷くと、大きく伸びをした。
「ま、そんなに焦らずゆっくりでいいからねー。」
嵐山楓はその姿を見て、少し言いにくそうに訊いた。
「……こんな話の後に俺が言うのもなんなんですが、神室のやつ、本当に間に合うんですか? Ⅹデーに。」
下田従士は伸びつつ、少し開いた片目で嵐山楓を見る。
「……昨日僕と対峙した男、彼がね。」
伸びを解いて続ける。
「僕が無抵抗なのを良いことに、三時間ほどボコスカ殴りつけてくれた挙句に、最後に一言だけ残してさっさとその場を退散しちゃったんだよねー。」
「一言?」
嵐山楓が下田従士を見上げる。
下田従士は少しだけ間を置くと、答えた。
「……『そういう形もあるんだな』って。一言だけ。」
「そういう…形?」
下田従士は片手を広げる。
「ほら彼、覚悟がどうのとか言ってたでしょ? その言葉を聞いて僕は確信したんだ。きっと彼は揺れている。『パンドラの箱』のメンバーは基本的に神代託人に心酔しているけれど、例外もいる。『パンドラの箱』は、決して一枚岩じゃあないんだって。」
五月十四日(土)十一時三十一分 T県N市・とある廃墟
すっかり雨が止んだ頃、一つの人影が廃墟に侵入してきた。
神代託人が読書の手を止め、人影へと振り向く。
「お疲れ様、康太。」
「ああ……。」
内水康太は、力ない返事を返し、神代託人をすり抜ける。
その前方に、風祭匁が道を塞ぐように立つ。
「…なんだ。」
内水康太が面倒そうに風祭匁を見る。
風祭匁は、内水康太を睨みつける。
「内水ぃ、てめぇ、負けたんだってなぁ。」
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