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第36話「”生理的収束領域”の定着とそれに伴う性的欲求の波動の発生、及び異能力の発現」
しおりを挟む五月十四日(土)十九時十一分 旧・真希老獪人間心理専門学校(一階教室)
「“生理的収束領域”っていうのはねー。」
シモダさんは人差し指を立てる。
「その昔、とある大学の若き教授が発見した、人間なら誰しもが持つことになるとされている人体の器官のことなんだよー。」
「持つことになると、されている?」
「そう。」と、シモダさんは頷く。
「肉体は魂の牢獄である、なんてプラトンは説いていたけれど、実際、地球上の生物には共通して抗うことのできない欲望がいくつか存在してるよね? 睡眠欲、食欲、性欲からなる三大欲求から始まって、排泄欲や被護欲求に代表される肉体的・生理的欲求など、その数は様々だ。」
思わず、自身の股間を見る。
意識した瞬間に彼は膨張を開始した。
頭のいいっぽい話してるんだから今はやめてくれよ。
「しかし、地球上の生物において人類は唯一、これら抵抗の許されぬはずの欲求を個人の意思のみで抑え込むことができる。それが、理性だ。」
俺、まったく性欲に抗えてないんだけど……。
「成長過程で備わる、強靭な意思。これによって抑え込まれた欲求は、驚異的なことに我々人類の体に本来備わっていないはずの器官を生み出すことになる。それが——」
「”生理的収束領域”?」
「その通り。」
シモダさんが俺を指さす。
「この器官は肉体に備わる他の器官と違って、常時存在してるわけではない。本来はね。」
シモダさんはゆっくりと立ち上がる。
「欲求を発散せんとする生物の本能が生み出した莫大なエネルギーが、理性によって抑え込まれることにより、行き場を失い、人体の中に自らを貯蔵する空間にも似た器官を生み出す。これが”生理的収束領域”が発生する仕組みなんだけれど、食欲や睡眠欲に関しては、今こうして生きている以上、しっかりと発散されていることになる。発散されれば、エネルギーを失ったこの器官はその存在を失うことになる。文字通り消えて無くなるんだ。…だが、性欲だけは別なんだよ。」
今度は、俺の股間めがけて指さしてくる。
「人類の理性や生物の本能とはおよそかけ離れた個体差を有する性欲は、睡眠欲や食欲と比べて特にそれが顕著で、発散されることもなく生き続けることが可能だ。発散されず、ため込まれ続けるエネルギーは、“生理的収束領域”を維持し続け、やがてその器官を体内に定着させる。消えることがなくなるんだ。」
シモダさんはゆっくりと俺の目の前に歩んでくる。
「消えずに残った“生理的収束領域”が定着する場所、それがここなんだよ。」
そう言ってシモダさんが指さした場所。
自身の左鳩尾のあたり。
「さらにね。」と、シモダさんは続ける。
「“生理的収束領域”にも、そのエネルギーを貯蔵するには限界というものがある。膨れ上がったその器官は、やがてエネルギーを体外へと放出させる。それが、エーラさ。」
シモダさんが、纏っているエーラを差し出した右手に集め、大きな球体を形どった。
「だから、左鳩尾のあたりを意識するとエーラを上手く制御しやすいのさ。エーラを本来の居場所に流し込んで、“生理的収束領域”を飽和させてるような状態に維持するんだ。」
「全然、聞いたことないですね。」
初耳すぎる。
「まぁこんな研究、認められるわけないしねー。その若教授が提出した論文も学会には通らず、未発表のままお蔵入りさ。証拠はあれど、こんな超常の類みたいな現象、上の方々は容認できなかったんだろうねー。」
シモダさんが朗らかに笑う。
「その”生理的収束領域”、俺の体にも定着してるってことなんですよね?」
消えずに残った“生理的収束領域”が定着する場所、それがここなんだよ。
「勿論だとも。」
シモダさんが片手を広げる。
「”生理的収束領域”の定着によってエーラが発生し、場合によっては『性癖』も発現する。『独り善がりの絶倫』だっけ? それが発現してる時点で、君の体内にもすでに”生理的収束領域”は定着しているよ。」
「へぇ……」
左鳩尾のあたりをさすってみる。
まったくわからない。
「でも、食欲や睡眠欲じゃその器官はできないんですよね? 性欲だけがそんな現象を引き起こす……性欲ってヤバいんですね。」
いかにも馬鹿っぽい発言で、言った後ちょっと後悔した。
シモダさんはまたも指を立てる。
「生物全体で見れば、個体の存続よりも種の存続の方がはるかに重要だからねー。自身の体力や時間を犠牲にして我が子の面倒を見る母性や父性と同じだろうね。種全体の生存競争、子孫繁栄。突出した自己の性癖を補う目的の『性癖』も、それが引き金になって発現するんだろうねー。」
「なるほど。」
まったくわからん。
「わかるようになるよ。君もこれから、いろーんな性癖の持ち主と出会うだろうからね。」
俺の表情を読み取ったのか、シモダさんが言う。
「さ、難しい話はこれでおしまい。後片付けは僕がやっとくから、君はシャワーでも浴びて汗を流してきなよ。」
シモダさんがポンッと手を叩く。
「シャワー…もあるんですか? この校舎。」
「体育館の、更衣室の隣にシャワー室がついてるんだよ。ここが現役だったころは、住み込みで働いていた人がほとんどだったしねー。」
そう言って、体育館の方を指さす。
まじか。
それはかなりありがたい。
「じゃあ、すみません。先にシャワー、お借りします。」
「うん。ゆっくり浴びてきなよ。」
シモダさんに頭を下げて椅子から立ち上がった時、他の二人がすでに席を立ってることに気付いた。
いつの間に。
面倒な話を避けたんだろうか。
五月十四日(土)十九時二十四分 旧・真希老獪人間心理専門学校(体育館)
シモダさんに運んできてもらった着替えを手に、すぐさま体育館へ。
更衣室は、入り口から向かって舞台の右端にあった。
引き戸を開け、着替えを備え付けられている棚に置く。
「しかしほんと、ありがたいよなー……」
実はさっきからかなり汗臭い。
自分で汗臭く感じるってことは、相当臭いが立ち込めてるはずだ。
俺は上着を脱ぎ、ズボンをパンツごとずり下ろす。
「———っ!」
瞬間、走る快感。
布地に刺激された肉棒が、先端から苦悶の涙を流していた。
「最後にオナニーしてから八時間くらい、か?」
普段ならその間に最低五回はしている。
これ以上は……。
「……っ! 駄目だ。我慢だ、我慢。」
自分に言い聞かせ、学生服を畳んで棚に置く。
あとは、靴下を脱ぐのみ。
だが……。
「……ああ、くそっ。」
全裸に靴下だけという恥ずかしい恰好になったことで、羞恥心が刺激され、性感が高まってしまう。
立っているだけで射精してしまいそうだ。
「……ちょっとだけなら、いい、かな?」
ああ……駄目なのに。
駄目だとわかっているのに、右手が愚息へと伸びる。
その距離わずか三ミリメートル。
もう少し。
もう少しで愛しい我が子に触れられるっ!
その期待感で心臓の鼓動が最高潮に跳ね上がる。
そして、ついに右手が肉棒を捉える———ところで。
ガラリ。
更衣室より入って右手、シャワー室の扉が音を立てて開いた。
そしてその奥に、一人の人物が立っていた。
「げっ。おま……」
「………。」
嵐山が顔を引きつらせて、自慰に走る一歩手前の俺を見ていた。
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