アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第63話「”十三厄災(ゾディアック)“④」

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  一年前 十二月二十四日十九時二十六分

「……え?」
 急な質問に戸惑ってしまう。
 しかし。
「だぁかぁらぁ~。どうしてお兄さんはイヴの夜にお金払ってまであいりと添い寝してるのぉ?」
「⁉ ⁉ ⁉」
 あいりちゃんが、少し強めに胸を押し付けてくる。
 魂が、抜かれる……っ!
「そ…それはぁ……」
 最早答えぬことなど不可能。
 そう悟って、素直に口を開く。
「ん~~~?」
 きっと胸の中でモゴモゴ言っているようにしか聞こえなかったのだろう。
 あいりちゃんは胸から俺の頭を離すと、至近距離まで顔を近づけてきた。
 天使の目で、俺の目を見る。
「それは……彼女に振られたから……」
 真実でもないが、見栄を張ったが、決して嘘ではない。
 彼女に振られたというのは本当だが、しかしそれは八月の出来事で、今は十二月。来週は大晦日。
既に季節も移り変わり、夏から冬へと暦は移動している。
 そもそもぶっちゃけ、大して気にも留めてなかった(なんとなくそうなる気はしてた)。
 丸っきりの嘘でもなければ、完全な真実というわけでもない。
 限りなく真実に近い話、狭間の嘘で騙す。
 あいりちゃんに決して嘘をつけない体にされてしまった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、俺が行える最大限の抵抗だった。
「そう…なんだぁ……」
 あいりちゃんは僅かに戸惑うと、再び俺の頭を抱えて胸に埋めてくれる。
「⁉ ⁉ ⁉」
「とっても辛かったよね? 苦しかったよね? それでも今、ちゃんと生きてる。すごいね、えらいね。」
 ああああああああああああああああ‼
 天使‼
 女神‼
 聖母‼
 母性の反対は聖母‼
 ふあああああああああああああああ‼
 抵抗虚しく、すぐにあいりちゃんの幸福に脳を呑み込まれてしまう!
 あいりちゃんからの一撫で一撫でに理性を飛ばされていくような感覚!
 もう、なにも考えられない!
 脳が思考を放棄したのとほぼ同じタイミングで、あいりちゃんが再び俺の頭を胸から離す。
「それにしても、その人勿体無いことしたんじゃない?」
「へぇ…?」
 あいりちゃんは呆けた俺の顔を覗き込むようにして言う。
「私だったら、こんな格好いい人絶対に離さないのになぁー」
 途端、心臓が脈打つ。
 久しく忘れていた、この感情。

 これは……恋!

「お、俺もあいりちゃん好きぃ……」
 あいりちゃんは決して俺のことを好きだとは言っていない。
 しかし、この時の俺にそんなことわかるわけもなく、恥ずかしげもなく恥ずかしい勘違いを曝け出してしまっていた。
「ふふっ♪ ありがとっ♪」
 あいりちゃんは小首を傾げて微笑むと、三度俺の顔を胸まで誘導する。
 が。
「っ⁉」
 俺の頭が、そこでようやく抵抗する。
 瞬時に感じ取った違和感。
 あいりちゃんの胸元が、僅かに開いているのだ。
 ボタンがはじけ飛んだわけではない。
 綺麗に、外されている。
 これは、一体……。
 パジャマの隙間から、ほんのり覗く褐色の谷間。
 その圧倒的存在感から、俺は目を逸らす。
 今日はそういう日じゃない。
 これは、絶対だ。
 そういう時に付き合いで風俗へ行くと、必ず中途半端な結果を残して失敗する。
 だから、気分が乗らない時は抜きはしないと、心に固く誓っている。
 あいりちゃん相手にも発動するほどに。
「ん~~? お兄さん、どうしたの?」
「え…いや……」
 俺の返事を待たずに、あいりちゃんは「ふふっ♪」と小さく笑う。
「そういえばさぁ、お兄さん、その元カノさんとは結局、エッチしたの?」
「っ⁉」
 あいりちゃんは質問と同時に太ももを俺の股間に当ててきた。
 反射的に腰を引いてすぐに離す。
 俺の股間は依然、テントを張っており、挙句の果てにそのテントは全身雨漏れ状態だった。
 ちょっとおっぱいに甘えただけで、十九歳の子相手にこんなんになってしまうとは……。
 あいりちゃん、恐るべし。
 などと、今だから考えられるが、当時の俺はそんなことを考えている余裕もなかった。
 なんせ、ちょっと目を離した隙にあいりちゃんの胸元はさらに大きく開いており、ピンクのブラがちらちらと見えていたからだ。
 これはマズい……。
「……し、してないよ?」
 質問に答えつつ、あいりちゃんから距離を取る。
 しかし、あいりちゃんの方が素早く動いて、俺の腰と頭に手を回してきた。
「ふーん♪ っていうか、お兄さん、もしかして、童貞?」
 あいりちゃんの顔が近づいてくる。
 他人を骨抜きにする声音・・・・・・・・・・・で、語りかけてくる。
 俺は、この子に逆らえない・・・・・・・・・
 しかし、それでも。
 抵抗することは、できる。
「う、うん……。(素人)童貞だよ?」
 真実によって真実を偽る。
 (風俗)ヤリチンの俺の勘が告げている。
 この子は、危険だ。
 たとえ手遅れでも、仮に時間切れでも、この子に対する抵抗を忘れてはならない・・・・・・・・・・・・・・・・・・と。
「ふぅん……やっぱりね♪」
 あいりちゃんは不自然なまでに美しく微笑んでくる。
 どうもどうやら、この子は先ほどの俺の言動から、俺のことを童貞だと確信しているようだ(半分正解)。
 ならば、俺はその僅かな誤解の隙間を突く。
「お兄さん、エッチなことしてこなかったなんて、人生損してると思うよ♪」
 隙間を突いて、この場を脱する!
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