66 / 186
第66話「”十三厄災(ゾディアック)“⑦」
しおりを挟む五月二十二日(日)十時五十一分 T県・某廃虚
「まぁ、そんなわけで俺はあの後、彼女の出勤日を定期的に確認していたんだが、どうもすぐにやめてしまったらしく、プロフィールは残ってるんだが出勤になることはなかったな。」
中尾望は一通り話し終えた後、全員の顔を見る。
「ふーん、で?」
風祭匁が中尾望の目を見返す。
「で? っていうのは?」
「その子、“変態性”持ちの能力者だったんじゃないの?」
中尾望の質問返しに、今度は隣に座る女性が質問する。
綺麗な黒髪を下ろしている女性の名は、《処女宮》の姫百合真綾。
「え? 能力者? なんで?」
姫百合真綾を、中尾望は横目で見る。
「だってあんた、その子に“逆らえない”だの“嘘をつけない体にされた”だの言ってたじゃない。声がどうのとか。」
きつい眼差しの姫百合真綾に、中尾望は手のひらを向ける。
「ああ。違う違う。それは能力じゃない。確かに、あいりちゃんの声にはタクトを彷彿とさせるものがあった。多分、彼女も“1/fゆらぎ”持ちだったんだろう。気持ち良すぎて彼女に逆らいたくなかったし、嘘もつきたくなかったもん。ただ、それでも隠し事はできたからな。同じ“1/fゆらぎ”持ちでも、彼女はまだまだ、まだまだだったってことだな。」
得意気に語る中尾望に、姫百合真綾は目をさらに細める。
「はあ? じゃあ、なんであんた性交渉からそんなに逃げようとしたのよ? 危険な能力にかかりそうだったからじゃないの?」
彼女の言う危険な能力とは、この場合“他者干渉系”能力のことだろう。
「だから、違うって。」
中尾望は両手を広げる。
「さっきも言っただろ? 中途半端な気持ちで風俗に手を出すと、必ず苦い思い出を作ることになる。俺はそれが嫌だっただけさ。」
「は? じゃあ、何? あんたもしかして、ただ風俗に行った時の話をしただけなの?」
「それがなんだよ。」
「長いのよっ!」
悪びれもしない中尾望に、姫百合真綾は机を叩いて怒鳴る。
「おいおい、最初の趣旨を忘れるなよ。俺はただ、おっぱいに殺されかけた話をしただけだぜ?」
「くっだらねー」
開き直った様子の中尾望に対して、風祭匁は息をつく。
「くだらないってなんだよ! 褐色高身長美少女、しかもウエスト細くておっぱいでかくて乳輪が濃くて小さいんだぞ! そんな弾力のあるおっぱいには人を殺す力があるからお前らも気をつけろって忠告してやってんだぞ、こっちは!」
今度は中尾望が机を叩いた。
風祭匁は、それに臆することなく口を開く。
「そんなの奇跡的遭遇じゃん。滅多にねぇよ。それに俺らはあんたと違って風俗になんていかないから、そもそもそんな風に警戒する必要がねぇんだよ。」
「うっ……」
風祭匁の冷ややかな目に、中尾望は僅かにたじろぐ。
「第一、おっぱいってのはそういうもんじゃねぇだろぉ?」
「じゃあ、どういうもんなんだよ?」
「谷間に唾液を垂らすもんだろ。」
そう言ったのは、風祭匁ではない。
彼の二つ隣に座している、筋骨隆々の男性、《宝瓶宮》の内水康太が、中尾望を見もせずに言った。
「それも違ぇよっ!」
内水康太に風祭匁がツッコむ。
「いいか?」と、風祭匁は続ける。
「おっぱいってのは、切断した時の形状が、その個人個人の形、柔らかさによって変わってくる、いわば断面形状に個体差を表す存在だ。」
「それこそ違ぇよっ! なんでお前はそんな猟奇的なんだよっ!」
今度は内水康太が風祭匁にツッコむ。
「なんだよ、お前らの方が頭おかしいじゃねぇか。」
「お前に言われたくねぇっ!」
内水康太と風祭匁、二人揃って声を上げる。
「はぁー…。ばっかみたい。」
その様子を眺めて嘆息を吐いたのは、荒神野原の二つ隣に座る少女。
左から右に流しているアシンメトリーの桃色の前髪、右に結んだサイドテール。
《双児宮》の妹尾あきら。
「おっぱいおっぱいって、何がそんなにいいんだか……ねぇ、お姉ちゃん?」
妹尾あきらが、自身の小振りな胸から姫百合真綾に視線を移す。
「まったくね。」
妹尾あきらに同意して、姫百合真綾はおっぱいで騒ぐ男性陣を睨みつける。
「おっぱいおっぱいっていい加減にしなさいよ。おっぱいは大きいとか小さいとか、そういう問題じゃないでしょう?」
その台詞に、妹尾あきらは何度も頷く。
「いい? おっぱいっていうのはね、当たっただけで安心感を得られる、存在そのものがなによりも重要なのよ! あるだけでありがたがりなさいよ!」
「お姉ちゃんもそっちっ⁉」
驚愕のあまり立ち上がる妹尾あきら。
そしてそのタイミングで、混沌と化した室内に、“十三厄災“最後の少年が現れた。
否、最初の少年と言うべきか。
「みんな、お待たせ。思ってたよりも遅くなっちゃったよ。」
少年の声に、言い争いを止めて、全員が視線を集める。
「なぁタクト、聞いてくれよ。」
中尾望が立ち上がる。
「俺この間、おっぱいに殺されかけたんだよ!」
「おっぱいっていうのは断面形状に個体差の様式美をだなぁ」
「だから、おっぱいはあるだけで究極的な」
「胸の谷間に唾垂らし!」
続いて次々と立ち上がっていき、彼らは同時に少年にまくしたてる。
少年はその光景に、少し考えるように顎に手を当てる。
「うーん…とね。よくわからないけれど……」
そして、とびっきりの笑顔を彼らに向けた。
「胸ってそもそも赤ちゃんを育てるための器官でしょ? 何言ってんの君たち。」
「お前が言うなっ‼」
少年を除いたその場の全員が声を揃えて叫んだ。
“十三厄災“、本日二度目の軌跡である。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる