アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第68話「”十三厄災(ゾディアック)“⑨」

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  五月二十二日(日)十一時三分 T県・某廃墟

「既に接近していた? 全く身に覚えないんだけど……」
 姫百合真綾は思い起こす様に天井を見上げる。
「いいか? よく思い出してみろ。『鍵』、神室秀青を拉致ったあの日、嵐山楓が集めた群衆の中に、一人だけ万能型のエーラを放ってた奴がいただろ?」
 中尾望は姫百合真綾を指さして説明を始める。
「あの時から、どうも引っかかってたんだ。そもそも万能型自体、それこそ奇跡的遭遇レアケースな存在だろ? にも関わらず、あの日あの時あの場所に、万能型のエーラ持ちが二人もいた。」
 思い出していくように、手のひらを見つめながら語っていく。
「俺は、タクトと共に『錠』を探すにあたってまずはそこから探っていった。あの時間帯にあの場所に現れる可能性のある人間……。その中から、万能型のエーラを放つ人間……。するとどうだ。いたんだよ。ぴったり一人だけ。」
「そいつが『錠』だったってわけか?」
 「ぴったり」のところで立てられた人差し指を、内水康太が眺める。
「ザッツライ。」
 立てた人差し指を、そのまま内水康太に向ける中尾望。
 その様子に、姫百合真綾は目を細める。
「でも、本当にそいつが『錠』なわけ? いまいち信用できないんだけど……」
 視線の先は、勿論中尾望だ。
「暴れるぞ!」
 中尾望が叫んだところで、神代託人が二人の間に割って入る。
「大丈夫。そこは間違いないよ。なんせ、の“性癖スキル”をこの目で見たからね。それで今日は遅れてきちゃったんだけど☆」
「おいおい、もう目覚めてんのかよ。」
 未だいがみ合う二人の様子を傍観していた内水康太が、神代託人に視線を移す。
「うん。誰に教わるでもなく、自らの生き様で目覚めてたよ。素質は十分だね。」
「系統は?」
 姫百合真綾も中尾望から目を逸らし、神代託人を見遣る。
「万能型の能力。だとしたら、系統はかなり重要よね?」
「うーん。見た感じ、判別の難しそうな“性癖スキル”だったんだよね。」
 神代託人は考え込むように顎に手を置く。
「超感覚系、物質創造系、他者干渉系の、どれかに寄った能力だろうとは当たりをつけてるんだけど……。かなり特異でトリッキーな能力だった。もしかしたら、独自の系統なのかもしれないね。」
「ふーん。そいつはかなり期待できそうだな。」
 頭の後ろで手を組んで船漕ぎする荒神野原。
 さして興味もなさそうな様子の彼女に、神代託人はその身を乗り出す。
「でしょ? 一先ず今は、と接触する機会を伺ってる。もしかしたら僕はしばらく、なにもできないかもしれない。」
「俺たちは?」
 再び頬杖をついて、風祭匁は短く問う。
「俺たちは、なにをしたらいい?」
「この間言った通りだよ。」
 それに対して、神代託人も短く答える。
「次のプロジェクトでは、君たちはそれぞれの部隊で、それぞれの舞台で好き勝手暴れてくれたらいい。野原の部隊の子たちみたいにね。」
 神代託人は風祭匁に向けていた顔を再度、荒神野原に向け直す。
「随分派手に動いてるみたいだね。彼ら。」
 その言葉、その視線には責めている要素は一切感じられず、むしろ、荒神野原の部隊構成員を称賛している様子だ。
「ああ。あいつらは、あたしの部下の中でも特にやる気・・・のある奴らだからな。」
 背を反らし、胸を張り、誇らし気に、猛々しく話す荒神野原。
「けどよ、そんなに派手に動いて大丈夫か? すぐに連中に嗅ぎつけられるぜ。」
 内水康太は机に肘をついて片手を広げる。
「問題ねぇよ。…つーか、逆、逆。」
 荒神野原の鋭い三白眼が内水康太を捉える。
「あいつらが連中を釣り上げるのさ。」
 気を良くして、瞳を閉じる荒神野原。
「守りに寄りつつも攻める。なかなか理にかなってるじゃねぇか。」
 豪胆そのものな彼女の様子を、中尾望も称賛する。
「だろ?」
 荒神野原は、不敵にも白い八重歯を光らせた。
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