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第74話「自己の恋人、または伴侶が無断で性行為を行った第三者に身心を奪われることによって発生する性的興奮・快楽に関する授業③」
しおりを挟む「さっき心音さんが言っていた“夜這い”なんだけれどねー、実は似た風習が、ほぼ同時期間内に国境を越えて世界各地にあったんだ。」
何事もなかったかのように授業を再開する先生。
教師の鑑である。
「特にその風習が盛んだったのが、日本でいう大正時代から戦後間もない時期まで、主に農業や漁業が盛んだった村で行われていた“処女権”や“初夜権”と呼ばれていた因習だ。」
「あ、さっきまりあっちが言ってたやつ。」
まりあ様が知っていたことで抵抗感が緩和されたのか、木梨さんも早くも普通に授業に参加している。
「そう。この因習は”夜這い”の中でも特に婚前というシチュエーションに特化したものだ。村の中の若い女性が婚約者の男性と契りを交わす前夜、その村の村長や権力者、はたまた婿の父親なんかが味見とばかりに、花嫁と体を交わらせた。」
「うっわ! ひでぇ話! あ、でも勃起しちった。」
淡々と解説する先生に、後金は体を仰け反らせ、肉棒を反り立たせる。
マジか、後金。
「そう、本当に酷い話だ。あ、勿論僕も勃起してるけど。」
その報告はいらないです。
「でも、示し合わせたわけでも申し合わせたわけでもないのに、どうしてかこんな酷い習わしが共通して世界各地で実際に行われていた。正にNTR天国。」
地獄だ。
「私も調べてて思ったんですけれど、どうしてこうも世界中に同じ風習が広まっていたんでしょう? 日本ではまだ鎖国だった時代にもありましたし、そうじゃなくとも、現代のように世界が秒単位で繋がっているわけでもないですよね? にもかかわらず、NTRという点では、世界は同じだった。国境も環境も、人種も文明も関係なしに。」
丁寧に手を上げて質問するまりあ様は礼儀正しい人類の鑑。
「そう、そこなんだよねー。僕が思うに……そうだね。例えばみんな、龍を思い浮かべてみてー。」
龍?
素直に思い浮かべてみる。
鹿のような角を生やした獅子のような顔、そこから伸びる、蛇のように鱗を纏った緑色の長い胴体。うねる胴体に付随している二本の腕には、水晶のようなものが握られている。
おそらくみんなが思い思いの龍を思い浮かべている間、先生はひたすら黙って待っていた。
そして、大体一分ほど経ったぐらいで、ようやく口を開く。
「……多分だけど、みんな、鹿の角と獅子の顔、蛇の体が合体した生物を思い浮かべたね? もしかしたら、水晶を握ってる姿を想像した人もいるかもねー。」
細い両目でにっこり笑う先生。
……おお。
当たってる。
当たってる……けど。
「うーん。確かにそうですけど、それってなんていうか、常識じゃないですかー?」
言いにくそうに、俺が言いにくかった言葉を木梨さんが発する。
先生は、それを受けて満足そうに頷く。
「うんうん。その通り。龍の姿、これは常識だ。物心のついた子供でも、同じ姿を想像するだろうねー。でもね……」
そこまで言って、一呼吸。
そしてまた先生は口を開く。
「誰もそれを常識とは定めていない…というか、物心ついた子供ですら大人となんら変わらず同じ常識を身に着けている……これは最早、常識ではなく本能だ。」
「……本能?」
龍の姿が?
「そう、本能。子に遺伝すると書いて、遺伝子と読む。即ち、みんなが龍の姿を思い浮かべられるのは遺伝子に刻み込まれた情報を基にしてるからなんだー。なんせ、実際にいるわけでもない空想上の、伝説上の生き物なのにもかかわらず、大人も子供も関係なしにみな、示し合わせたように、申し合わせたように同じ姿を思い浮かべるだろう? ……あれれ? この話、なんだかさっきもしてなかったっけ?」
………っ!
示し合わせたように、申し合わせたように、世界中に残っている因習!
“夜這い”!
「あははっ! 気付いたみたいだねー?」
先生は立てた人差し指をくるくると回す。
「そう。つまり、“夜這い”もまた、遺伝子に刻み込まれた本能からくる風習だったのさー。」
なるほど、確かに。
誰が言ったわけでもないのに、なぜか世界中に同じ事象が存在している。
龍の姿に、悪しき因習。
意外な共通点だ。
「でもでもっ、なんでそんな風習が遺伝子に組み込まれてるんです?」
ついに木梨さんが食いつき気味に質問を始めた。
「……男の人って…やっぱり……」
しかし直後、再度冷めた目を俺たち男性陣に向けてくる。
「い、いやいや、違うって!」
「うーん……、実を言うとそれに関しては、まったくもって違くないんだよなー、神室君。」
「え?」
慌てふためき否定する俺を、今度は先生が否定してくる。
「なぜ、そんな風習が遺伝子に刻み込まれているのか、っていう質問なんだけど、実は元を正すと“夜這い”の風習自体が遺伝子に刻み込まれていたわけではないんだ。」
そこでまた一呼吸置く先生。
一同が注目する中、再び先生は口を開く。
「……日本でいう縄文時代、まで時は遡るんだけれど……」
十世紀どころの騒ぎじゃないほど話が遡ってしまった。
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