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第173話「彩芽祐樹②」
しおりを挟む六月十三日(月)十八時四十六分 真希老獪人間心理専門学校・食堂
「ホステスとその客の間に生まれた子ども。それも、望まれない形でね。」
笑顔で語る先生。
重たい話をしているのに、それを一切感じさせないのはこの人の特技だろう。
「彼女にしてみれば太客からプライベートに金を搾り取るための行為に過ぎなかったんだろうし、彼もそれは承知の上で、一発ヤれればそれで良いしセフレにできれば尚良し、ぐらいに考えてたんだろうねー。それがその一発で遊びではなくなってしまった。」
先生は組んでいた手を離す。
「二人とも面食らっただろうねー。確率的には相当に低い話だ。でも、それはあくまでも低いってだけで、ありえない話ってわけでもない。むしろ、避妊をしなかったんならそれくらい考えてんきゃあ駄目だと思うよねー。当時大学生の未成年だった彼女ならともかく、彼の方は成人を超えて五年くらい経ってたんだから。」
思ってたよりも歳の差はあったわけだ。
だったら確かに、責任くらいは取れるだろう。
「結局その行為についても店側にバレて彼女の方はクビ。プラス、大学側も休学したのちに自主退学。彼の方は、その時にはもう宝くじの当選金なんてほとんど使い切っちゃってたもんだから、必死に働かざるを得なくなったわけだ。」
宝くじの当選金で遊び惚けていた男と、その金を目当てに男と肉体関係を結んだ女。
確かにその間に生まれた子どもは、特殊な過程の下、もとい、特殊な家庭の下に生まれ育ったと言える。
「ところで、彩芽千種は三億円もの超大金を僅か数か月で使い切っちゃったらしいんだけど、たった一つの店、たった一人の女性に入れ込んだだけで使い切れる額ではないよね、三億って。」
そんな大金、手にしたことがないから何とも言えないけれど、その条件じゃあどう頑張っても、どう頑張って遊んでも数か月で消し切ることは不可能に近い気がする。
「ってことは、もしかして……」
「そう。」
先生は笑顔で首肯する。
「彩芽千種。彼は松原桔梗以外にも入れ込んでた女性がいて、松原桔梗が働いていた店以外にも通い続けていたんだ。週に二、三回×三、四ってところかな?」
マジか。
それは半端ない遊び人だ。
半端なさすぎる。
「二十四、五歳くらいの年だったら男としてはまだまだ遊びたい盛りだろうし、同じ男として気持ちはわかる。ただ、彼の場合はその気持ちを実現するための手段、手段を実行に移すための道具、原動力の金が揃っていた。僕でも同じ条件だったら、きっと同じことしてたと思うよ。」
それは多分ない、と思う。
「でも、こうなってしまった以上は責任が伴ってくるし、二人の及んだ行為も決して他人から責められない行為、というわけではないからねー。二人はその後、めでたく結婚。夫婦二人と子ども一人。幸せな結婚生活を目指していた——はずだったんだけれど。」
元から不穏な話が、より一層の不穏さを漂わせる。
「さっきも言ったけど、彩芽千種は三億円を数か月程度で消費するほどの遊びたい盛りの遊び人。子どものいる家庭っていうのは、どうしても子ども中心の生活になってしまう。そんなギチギチの生活を送っていけるほど、彼の器は大きくなかった。結果として、彼は子どもが一歳に上がる半年以上前から浮気を繰り返すようになった。お金は足りるはずもなく、借金を膨らませ続けてね。」
それは……遊びたい盛り過ぎる。
遊びたい盛り盛りだ。
「家には零歳の子どもと借金。帰ってこない夫。松原桔梗…その時には彩芽桔梗は、この事態を解決するために、結局またキャバクラで働くようになった。どころか、もう少し上のサービスを提供するおっパブとかも掛け持ちしていたらしい。そして、育児、家事、薄々はっきり感づいていた夫の浮気によるストレスから、彼女も別の客と関係を持つようになった。一人と言わず、複数人とねー。」
先生の話は続いていく。
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