アブノーマル・ラプソディー

星ノ宮幻龍

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第178話「彩芽祐樹⑦」

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  六月十三日(月)十八時四十八分 真希老獪人間心理専門学校・食堂

 テーブルの下から木製品が擦られる不快感マックスな音が聞こえた。
 どうやら、先生は足を組み替えたらしい。
「まぁ、とは言え…彩芽祐樹——彼は小学一年生という児童であり児童でしかない齢五、六歳程度のお子ちゃまの癖に、僕なんかよりも遥かに悟りきった人生観の持ち主だった。それ程までに高い知性を有していたんだ。それが、一つの要因。そして、二つ目の要因として、彼は自身の願望を無意識の内に歪めて認識していた。これらの要素が相まった結果、彼はこの刺激ストレスを増大させる人生にすらすぐに飽き果てた。それでも、彼はその問題行動をやめようとはしなかったらしいんだ。その時点では、彼の渇きを潤す代替行為が、他に見つかっていなかったからねー。どれだけ飽きようと、どれだけ果てようと、それ以外に乾き朽ちていく自分自身を止める術はなかったんだ。」
 どんな小学一年生だよ……。バックボーンがあるとはいえ……。
「そして、彼は数年後にはとある行為・・・・・に手を出し始める。まるで…予めそれ・・を行うことが決められていたかのように理由なく純粋に自然なままの無意味として。」
 先生は絡めていた指も組み直し、その上に顎を乗せて見上げてきた。

「中学一年生となった彼は、小動物を殺し始めるんだ。」

「⁉」
 低いわけでもないのに、重苦しさを感じさせる高い声でそう告げてきた先生の視線には、なにか……そう、まるで値踏み・・・でもしてるかのような色合いが宿っていた。
「小動物…殺し……」
 数十年前から時折ニュース番組や新聞などで上げられるようになった、殺人を犯した未成年者が、人を殺す前に行っていることが多い行動。
 これも一説には「試し行動」の一種であると言われているとか……。
「「試し行動」の一種…って、君は今考えたね?」
 細目の奥の鋭い眼光に突き刺される。
「違うん…ですか……?」
 俺の質問に、先生は頭を上げ、組んでいた指を離して片手を広げる。
「小動物殺しが「試し行動」の一種である…っていう説は、まぁ、僕は否定しないけれど、今回の——彩芽祐樹の場合においては違うと断言せざるを得ないねー。」
 「まぁ、その理由、何故彼が小動物殺しに走ったのか、その根底にある理由は後程説明するとして、だ。」と、先生は大筋の話を進めていく。
「彼は中学に上がっても退屈な日常を、比喩でも皮肉でもない、退屈な日常を送っていた。刺激を求め、高水準の知性と能力、そして何より本性を隠して生きていく生粋の能ある鷹と化した彼は、本当にただの気まぐれで、それこそ「試してみよう」程度の軽い気持ちで深夜に校舎内へと忍び込んだ。そこで、彼は禁断の出会いを果たすこととなる。」

「毒物との出会い、さ。」

 食堂内の空気が、この人の語りに合わせるかのようにより一層の静寂に包まれた。
「毒物、とは言っても、要は授業用の化学薬品の事でね、硫酸なんかに代表されるように、今はどうか知らないけど、当時は結構シャレにならない薬品、劇物が担当教師の趣味で校舎内に保管されている事があったりしたんだ。彩芽祐樹は深夜の校舎内でそれら数々の劇物と出会いを果たし、出逢いを果たし、瞬間的に、本能的に、自分の人生を豊かにしてくれるのはこれ・・だ、と視覚で知覚したそうだ。」
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