弱小国の王太子に転生したから死ぬ気で国を生き残させる

糸井嵜諸常

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転生、そして絶望

忌むべき目覚め 神の戯言

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少しの間、瞼が開かないよう抵抗したが、それは全くの無駄だったようで、あっさりと目が覚めてしまった。

目が覚めて真っ先に目に入ったのは豪華絢爛に彩られた天井であった。流石は元大国の居城である。だがその美しい装飾は既に薄汚れ、所々色が剥げている。そこもまた元大国・・だ。

次に辺りを見回そうと体を起こすと脳を刺す痛みに襲われた。

「いったぁぁぁぁぁ」

思わず叫んでしまうと、直ぐに部屋の扉が開かれ人が部屋に飛び込んで来た。

「若様!!起きられましたか!?」

その声は確かに小野倉正志おれ の記憶じゃ初めて聞いた声だったが、王太子おれ にとって最も信頼出来る声であった。扉の方を見ると、欧州系の彫りの深い顔に白い肌、髪に生やした口髭は既に白くなりきっていて、しかしそれに似合わぬくらいにまで真っ直ぐ伸びた背中のお蔭で若く見える老爺が目の前に信じられない奇跡が起こった顔をして立っていた。老爺はヴァイネスの育て役である前レシツィア王国宰相のオットー=アーヌス=ルイシフォンだ。つまり実母実父よりも長く時を過ごした絶対に信頼出来る「大人」である人だ。そしてまるで奇跡が起こったような顔をしているも分かる。何者かに刺され死んだはずの王太子が生き返ったからだ。

「爺、そこまで驚く事でもなかろう。」

自然に口が動いた。そういうと爺ことルイシフォンはハッとして固まってた体を俺に近付けながら言った。

「若様、安静になさってください。大分深くまで刃物は刺さっていました。暫くの間療養を取ります故。」

「ふぅ、安心したぞ。漸く爺がいつものように戻ったからな。」

そう、何があっても動じないで冷静に、淡々とされど細かく気の使える。それが王太子おれ が憧れて止まなかったルイシフォンの姿であるのだから。

「すいません若様、まさか生きておられるとは思っておらず、不肖驚きまして。」

「いやいや、謝ることないよ爺、僕だって驚くさ。死んだと思った人が生きているなんて知ったら。」

「ですが...」

そう何か言おうとした爺を遮って爺に聞いた。

「それより他の動きはどうなっている?」

「やはりイルザール派の貴族が騒いでおります。」

「刺された理由はやはり王位か?」

「そうでしょう。特に東部のアルスラール家や南部のクラーシャル家が兵を集め初めております。」

「反乱か?」

「そのようですね。このままだと間違えなく起こります。」

「対処は?」

「私の息子や友に兵を控えさせるよう常日頃より言ってますから暫くは大丈夫でしょう。ですが、本格的になると...」

「その前にどうにかしないと本当に国が滅びるか」

「その通りです。流石若様」

「分かった。取り敢えずイルザール派の動向を引き続き探れ」

「はっ!」

そう言うとルイシフォンは下がっていった。


「...」

「初手から反乱とか...」

「もうやだ!!今すぐ帰りてぇ。あのくそロリめ!!とっちめてやるからな!!」

虚しい叫びが部屋に響いた。


さて、爺も居なくなって数時間。寝て頭を休ませるとやはり覚醒前以外にも多くの記憶が出てきた。
まずこの世界について。
この世界には魔術という概念がある。魔術は自分の魔力を使う事で使用出来るというスタンダードなものだ。魔術の種類も色々で、攻撃魔術に防御魔術、召喚術に強化魔術と多彩を富む。
次に周辺国について。大国は南には異教徒によるヴェシアテ帝国、半島を治める教皇領、西の大国フロレーネ帝国だ。共に他の大国に負けぬよう、小国に分裂したこの大陸中東部に挙って侵略している。
レシツィア王国の北には内乱で分裂したウォルシャネ公国に東部に位置するベルシツェ王国、南部は山脈を挟みアルシア公国やマルワーツ王国、イレジア伯国があり、西はコルトフ公国がある。国力は東のベルシツェ王国が一番大きく脅威となっている。

最後は一番の懸案である国内だ。国内の貴族間の対立において一番の基本は信用出来る味方を複数作る事だとな○うの作家達が言っていた。信頼出来る味方と言えばの王太子ヴァイネスの実母の実家、オルヴァース伯爵家に爺の実家、オットー=アーヌス伯爵家が筆頭だろう。だが、やはりそれだけでは少なすぎる。第一それは弟のイルザールにもそれぞれいる。
というか、
「内乱なんかしたってなんの得にもなんねぇよ!!」
そう、内乱したって何も良い事はないのだ。どこか他国に頼ったら最後、その貸しは相手に良いように使われてしまう。国は荒れるし経済も打撃を受けるし、人は死ぬ。何が良いのかさっぱり分からない。ただでさえ内乱で荒れているのに、更に内乱するとかもうマジバカでしかないのだぁ!
だから一番良いのは内乱を起こさせない事なんだが。それが出来れば簡単なんだよ!

「若様、包帯を替えに参りました。」

そうこう考えているうちに使用人の声がした。若い女性の綺麗な声だ。

「あぁ、入ってきてくれ。」

そう言った瞬間、何故だか分からない違和感を感じた。全く違和感を感じる場面はないはずなのに。
そうこう思ってるうちに使用人は1人で・・寝ているベッドの横までやって来た。

「忙しい中、1人で・・ご苦労だな」

「いえいえ、私は使用人ですから」

その言葉を言った瞬間、神が起こした奇跡のように王太子おれ 記憶が戻った。幼い時、心配性であった母が定めた家のルールを。
そのルールは簡単だ。俺の寝室に入れる使用人は爺だけという至って簡単なルールであった。

焦って使用人の方を向いた刹那、不審者しようにん の手のなかに鈍い鋼の反射を見た。

避けれた事はそれこそ奇跡、俺の動物的本能の賜物だった。
刃先は微かに俺の頬を傷付けたのみであった。
だが、次はない、次来たら今度意味するは死だ。

「チッ、楽に逝かせたものを!!小僧。だが次はないぞ?まぁ、避けれるものなら避けてみろ」

さっきとまるで違う女の口調にひしひしと死を感じ、目を瞑って数秒、覚悟した死は一向に訪れなかった。




恐る恐る目を開けるとそこには、全身黒ずくめの女が、不審者しようにんのナイフを握った手を抑えつけていた。




水晶は世界を写し出した。

「ねぇ、なんであいつまで私をくそロリとか言ってんの?私天界第二位のえっらい神様でしょ?」

「仕方ないだろう、お前には威厳がない」

そこから世界を覗くは創世神ウェルスと生きる物を統べる神ルートゥヴェル。

「威厳が...ない?この私が?この私が威厳がないっていうの!?わざわざ威厳マシマシの口調まで使って!あの子を導いてあげたのよ!?」

「あの口調が威厳ある口調だと思ってたのか!?」

「ええ、そうよ?」

「筋金入りのバカだな。あの口調で増してたのは威厳じゃなくて滑稽さだけだぞ?」

「あぁ、ウェルスまた私をバカって言った!酷い!?」


「五月蝿い。黙ってろ。」

ウェルスがそう言った瞬間ルートゥヴェルは叫んだ


「なんか急に人が出てきた!?」

「中々の潜伏能力だな。」

「おっぱいでか!!??」

「ブォッ」

「ウブなウェルスには2億年早いわ!あのおっぱい」

「ゴホッゴホッ、ルートゥヴェル、取り敢えず黙れ」

「おっ?やっぱりまだウェルスには早かった?」

「いや、違う。そんな事言ってると絶対あいつが...」

ドォン(ドアが物理的に消される音)

「だ...」

「誰が貧乳だとゴラァ、このクソロリ!!今こそ一千年の腐れ縁絶ってやるぞごらぁ」
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