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第二章 王家に仕組まれた“悲劇の筋書き(システム)”を破壊せよ
第38話 千年の霊廟と、最後の交渉
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開かれた、霊廟の扉の向こうは、深く、冷たい、闇だった。 まるで、世界の、口蓋の奥を、覗き込んでいるかのような、絶対的な、静寂。 背後からは、追っ手の、鎧の擦れる音と、怒声が、刻一刻と、近づいてくる。 もう、迷っている、時間はない。
「――参りますわよ!」 私が、叫ぶと、レオンハルト様が、強く、頷いた。 私たちは、光の世界に、背を向け、千年の秘密が、眠る、闇の中へと、身を、投じた。
重い、鉄の扉が、背後で、独りでに、閉じていく。 ゴゴゴ……という、地響きのような音と共に、私たちの、退路は、完全に、断たれた。
「……」 闇の中で、頼りになるのは、私が、手のひらに、灯した、小さな、光の球だけ。 その、青白い光が、照らし出した光景に、私たちは、息を、呑んだ。
そこは、ただの、墓所では、なかった。 壁という、壁、床、そして、天井に至るまで、無数の、光る、線が、まるで、生きているかのように、脈動していた。 それは、精緻な、魔法回路。 そして、私の、目には、それが、この世界を、構築する、プログラムの、コードそのものに、見えていた。
「……すごい」 レオンハルト様が、呻くように、言った。 「ここ全体が、一つの、巨大な、術式になっているのか……」
「ええ。王家の血を、そして、アークライト家の魂を、千年もの間、縛り続けてきた、“悲劇の筋書き(システム)”の、心臓部ですわ」 私は、光の線を、目で、追いながら、確信を持って、言った。 「そして、わたくしには、もう、分かる。この、呪いを、破壊するための、本当の、祭壇が、どこにあるのか」
私たちは、その、光の奔流に、導かれるように、霊廟の、奥へ、奥へと、進んでいった。
†
しばらく、進んだ、その時。 レオンハ-ルト様が、足を止め、私に、問いかけた。 その声には、彼の、魂の、奥底からの、問いが、滲んでいた。
「……アイナ様」 「はい」 「先ほど、あなた様の、身に、一体、何が、起きたのですか」
私は、一度、足を止めた。 そして、彼に、向き直る。 嘘は、つけない。この、誠実な、騎士様には、もう。
「……少し、この世界の、“脚本家”と、お話を、してきましたの」 「……脚本家?」
「ええ。この世界を、動かしている、見えざる、理(ルール)そのもの、とでも、言いましょうか。どうやら、わたくしたちの、行動は、彼の、書いた、筋書き(シナリオ)から、大きく、逸脱してしまった、みたいですわね」 私は、悪戯っぽく、笑ってみせた。 「随分と、お怒りの、ようでしたけれど」
彼は、私の、突拍子もない、言葉を、ただ、黙って、聞いていた。 そして、ゆっくりと、私の、手を取った。 その、大きな、手は、少し、震えていた。
「……もう、二度と、あんな風に、あなた様が、消えてしまうのは、ごめんだ」 彼の、声が、私の、胸に、突き刺さる。 「あなた様が、何者であろうと、構わない。だが、一つだけ、誓ってほしい。……ご自身を、犠牲にするような、戦い方だけは、しない、と」
「……レオンハルト様……」
「私は、もう、あなたに、守られるだけの、存在ではない。あなたの、隣に立ち、共に、戦うと、誓ったはずだ。……その、誓いを、違えさせないで、いただきたい」
彼の、あまりにも、まっすぐな、瞳。 私は、もう、茶化すことも、誤魔化すことも、できなかった。 ただ、こくり、と、頷く。 「……ええ。約束、いたしますわ」
私たちの、間に、新しい、そして、何よりも、固い、絆が、結ばれた、瞬間だった。
†
私たちは、ついに、最深部に、たどり着いた。 そこは、ドーム状の、巨大な、広間だった。 中央には、黒曜石で、作られた、荘厳な、石棺が、安置されている。 初代国王、アーサーの、墓。 そして、空間全体が、星空のように、美しい、巨大な、魔法陣と、なって、輝いていた。
「……ここですわね」 儀式の、準備を、始めようと、した、その時。
背後から、重い、足音が、響き渡った。 私たちが、通ってきた、通路の、暗闇から、二つの、人影が、現れる。
「――そこまでだ、反逆者ども!」 氷のような、声と共に、剣を、抜き放ったのは、近衛騎士団長、クラウス。 そして、その隣には、悲痛な、表情で、私たちを、見つめる、アルバート王子が、立っていた。
「……やはり、追いつかれましたか」 レオンハルト様が、私の前に、立ちはだかる。 クラウス団長が、その、冷徹な、瞳で、私たちを、射抜いた。 「全ての、謎は、解けた。アイナ・フォン・ルーメル。貴様こそが、全ての、元凶。その、異質な、魔力で、サー・レオンハルトを、誑かし、王国を、内側から、蝕む、魔女め!」
「クラウス、やめろ!」 アルバート王子が、叫んだ。 「アイナは、そんな……!」
「殿下は、お黙りください!」 団長の、一喝が、響く。 「もはや、問答は、無用! ここで、二人を、捕らえ、国王陛下の、御前にて、裁きを下す!」
戦闘が、始まる。 誰もが、そう、思った、その瞬間。
「――もう、その、茶番は、おやめなさい」 静かに、しかし、凛として、響き渡ったのは、レオンハルト様の、声だった。 彼は、私を、庇うように、前に、出ると、自らの、胸当てに、刻まれた、一族の、紋章を、指し示した。
「団長。あなたも、騎士ならば、分かるはずだ。アークライト家に、代々、受け継がれてきた、この、紋章の、本当の、意味が」 「……何?」
「これは、誇りなどでは、ない。……枷だ」 レオンハルト様は、語り始めた。 自らの、一族が、千年もの間、背負わされてきた、あまりにも、残酷な、真実を。 初代国王が、自らの、弟を、生贄にした、その、非道を。 王家の、繁栄が、一族の、犠牲の上に、成り立ってきた、その、千年の、嘘を。
彼の、魂からの、告白に、クラウス団長も、アルバート王子も、ただ、言葉を、失っていた。
「……嘘だ」 王子が、か細い声で、呟く。 「我が、王家が、そんな、非道なことを……」
「ですが、それが、真実なのです、殿下」 私は、レオンハルト様の、隣に、並び立った。 そして、最後の、交渉(カード)を、切った。
「あなた様方も、そして、王家もまた、この、世界の、悲劇の、筋書き(システム)の、犠牲者なのです。……ですが、今日、ここで、その、千年の、呪いを、終わらせることができる」
私は、広間全体を、指し示した。 脈打つ、光の、魔法陣を。
「終わらせるのでは、ありませんわ。――**更新(アップデート)**するのです。悲劇の、犠牲の上に、成り立つ、古い、世界を、誰もが、自分の、物語を、生きられる、新しい、世界へと」
「さあ、お選びなさいませ」 私は、二人に、問いかけた。 「あなた様方は、千年の、“嘘”を、守り続けますか?」 「それとも、わたくしたちと、共に、新しい、“真実”の、扉を、開きますか?」
私たちの、運命を、そして、この世界の、未来を、決める、最後の、選択が、今、彼らに、委ねられたのだ。
「――参りますわよ!」 私が、叫ぶと、レオンハルト様が、強く、頷いた。 私たちは、光の世界に、背を向け、千年の秘密が、眠る、闇の中へと、身を、投じた。
重い、鉄の扉が、背後で、独りでに、閉じていく。 ゴゴゴ……という、地響きのような音と共に、私たちの、退路は、完全に、断たれた。
「……」 闇の中で、頼りになるのは、私が、手のひらに、灯した、小さな、光の球だけ。 その、青白い光が、照らし出した光景に、私たちは、息を、呑んだ。
そこは、ただの、墓所では、なかった。 壁という、壁、床、そして、天井に至るまで、無数の、光る、線が、まるで、生きているかのように、脈動していた。 それは、精緻な、魔法回路。 そして、私の、目には、それが、この世界を、構築する、プログラムの、コードそのものに、見えていた。
「……すごい」 レオンハルト様が、呻くように、言った。 「ここ全体が、一つの、巨大な、術式になっているのか……」
「ええ。王家の血を、そして、アークライト家の魂を、千年もの間、縛り続けてきた、“悲劇の筋書き(システム)”の、心臓部ですわ」 私は、光の線を、目で、追いながら、確信を持って、言った。 「そして、わたくしには、もう、分かる。この、呪いを、破壊するための、本当の、祭壇が、どこにあるのか」
私たちは、その、光の奔流に、導かれるように、霊廟の、奥へ、奥へと、進んでいった。
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しばらく、進んだ、その時。 レオンハ-ルト様が、足を止め、私に、問いかけた。 その声には、彼の、魂の、奥底からの、問いが、滲んでいた。
「……アイナ様」 「はい」 「先ほど、あなた様の、身に、一体、何が、起きたのですか」
私は、一度、足を止めた。 そして、彼に、向き直る。 嘘は、つけない。この、誠実な、騎士様には、もう。
「……少し、この世界の、“脚本家”と、お話を、してきましたの」 「……脚本家?」
「ええ。この世界を、動かしている、見えざる、理(ルール)そのもの、とでも、言いましょうか。どうやら、わたくしたちの、行動は、彼の、書いた、筋書き(シナリオ)から、大きく、逸脱してしまった、みたいですわね」 私は、悪戯っぽく、笑ってみせた。 「随分と、お怒りの、ようでしたけれど」
彼は、私の、突拍子もない、言葉を、ただ、黙って、聞いていた。 そして、ゆっくりと、私の、手を取った。 その、大きな、手は、少し、震えていた。
「……もう、二度と、あんな風に、あなた様が、消えてしまうのは、ごめんだ」 彼の、声が、私の、胸に、突き刺さる。 「あなた様が、何者であろうと、構わない。だが、一つだけ、誓ってほしい。……ご自身を、犠牲にするような、戦い方だけは、しない、と」
「……レオンハルト様……」
「私は、もう、あなたに、守られるだけの、存在ではない。あなたの、隣に立ち、共に、戦うと、誓ったはずだ。……その、誓いを、違えさせないで、いただきたい」
彼の、あまりにも、まっすぐな、瞳。 私は、もう、茶化すことも、誤魔化すことも、できなかった。 ただ、こくり、と、頷く。 「……ええ。約束、いたしますわ」
私たちの、間に、新しい、そして、何よりも、固い、絆が、結ばれた、瞬間だった。
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私たちは、ついに、最深部に、たどり着いた。 そこは、ドーム状の、巨大な、広間だった。 中央には、黒曜石で、作られた、荘厳な、石棺が、安置されている。 初代国王、アーサーの、墓。 そして、空間全体が、星空のように、美しい、巨大な、魔法陣と、なって、輝いていた。
「……ここですわね」 儀式の、準備を、始めようと、した、その時。
背後から、重い、足音が、響き渡った。 私たちが、通ってきた、通路の、暗闇から、二つの、人影が、現れる。
「――そこまでだ、反逆者ども!」 氷のような、声と共に、剣を、抜き放ったのは、近衛騎士団長、クラウス。 そして、その隣には、悲痛な、表情で、私たちを、見つめる、アルバート王子が、立っていた。
「……やはり、追いつかれましたか」 レオンハルト様が、私の前に、立ちはだかる。 クラウス団長が、その、冷徹な、瞳で、私たちを、射抜いた。 「全ての、謎は、解けた。アイナ・フォン・ルーメル。貴様こそが、全ての、元凶。その、異質な、魔力で、サー・レオンハルトを、誑かし、王国を、内側から、蝕む、魔女め!」
「クラウス、やめろ!」 アルバート王子が、叫んだ。 「アイナは、そんな……!」
「殿下は、お黙りください!」 団長の、一喝が、響く。 「もはや、問答は、無用! ここで、二人を、捕らえ、国王陛下の、御前にて、裁きを下す!」
戦闘が、始まる。 誰もが、そう、思った、その瞬間。
「――もう、その、茶番は、おやめなさい」 静かに、しかし、凛として、響き渡ったのは、レオンハルト様の、声だった。 彼は、私を、庇うように、前に、出ると、自らの、胸当てに、刻まれた、一族の、紋章を、指し示した。
「団長。あなたも、騎士ならば、分かるはずだ。アークライト家に、代々、受け継がれてきた、この、紋章の、本当の、意味が」 「……何?」
「これは、誇りなどでは、ない。……枷だ」 レオンハルト様は、語り始めた。 自らの、一族が、千年もの間、背負わされてきた、あまりにも、残酷な、真実を。 初代国王が、自らの、弟を、生贄にした、その、非道を。 王家の、繁栄が、一族の、犠牲の上に、成り立ってきた、その、千年の、嘘を。
彼の、魂からの、告白に、クラウス団長も、アルバート王子も、ただ、言葉を、失っていた。
「……嘘だ」 王子が、か細い声で、呟く。 「我が、王家が、そんな、非道なことを……」
「ですが、それが、真実なのです、殿下」 私は、レオンハルト様の、隣に、並び立った。 そして、最後の、交渉(カード)を、切った。
「あなた様方も、そして、王家もまた、この、世界の、悲劇の、筋書き(システム)の、犠牲者なのです。……ですが、今日、ここで、その、千年の、呪いを、終わらせることができる」
私は、広間全体を、指し示した。 脈打つ、光の、魔法陣を。
「終わらせるのでは、ありませんわ。――**更新(アップデート)**するのです。悲劇の、犠牲の上に、成り立つ、古い、世界を、誰もが、自分の、物語を、生きられる、新しい、世界へと」
「さあ、お選びなさいませ」 私は、二人に、問いかけた。 「あなた様方は、千年の、“嘘”を、守り続けますか?」 「それとも、わたくしたちと、共に、新しい、“真実”の、扉を、開きますか?」
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