追放令嬢(20)、お忍び遊郭で最強スパイに成り上がり、私を陥れたクズ貴族どもに地獄を見せます 〜前世はエリート諜報員なので、情報操作も潜入も

虹湖🌈

文字の大きさ
33 / 44
約束の国のレクイエム

第33話 ピカピカ光る仲間と、反撃の狼煙

しおりを挟む
「――あなたたちの相手は、この私よ!」

 私の宣言に、傷顔のリーダーは一瞬怯んだが、すぐに嘲りの笑みを浮かべた。
「小娘一人が、粋がるな! 全員、かかれ! 姫も、そこの情報屋崩れも、まとめて始末しろ!」
 ギルドの精鋭たちが、再び殺気と共に私たちに迫る!

(このままじゃ、ジリ貧だわ…!)
 私は咄嗟に、懐に忍ばせていた最後の切り札――ミラベルがカレルのためにと密かに開発していた笛を取り出した。

「ごめんなさいカレル、あなたのペット、少し借りるわね!」
 私は思い切り息を吸い込み、その笛を吹いた! キィィィ、と人間には聞こえないはずの特殊な超音波が、森の闇に響き渡る。それは、カレルが使っていた笛の音をミラベルが完全にコピーし、さらに強制的に呼び寄せる機能を追加した『友達の友達はみんな友達☆コウモリ呼び寄せホイッスル(カレル専用・緊急時強奪バージョン!)』だった!

 すると、どうだろう。さっきまでカレルの指示で飛び回っていたコウモリたちが、一斉に方向転換し、今度はギルドの連中に猛然と襲いかかったのだ!

「ぎゃあ! またこいつらか!」
「目が! 目があけられん!」
 予期せぬコウモリの再襲来に、敵の陣形は完全に崩れた。
「今よ! ヴォルフガング中佐の所へ!」
 その混乱に乗じて、私はミラベルとリーナに叫び、カレルの体を支えながら、森の奥へと駆け出した!

「リアナ嬢!」
 森の開けた場所で、少数の部下と共に私たちを待っていたヴォルフガング中佐が、血まみれのカレルを見て息を呑んだ。
「西にある、古い廃教会へ! そこなら、一時的に身を隠せる!」
 彼の的確な指示と、部下たちの援護を受け、私たちはなんとか追手を振り切り、月明かりに照らされた、蔦の絡まる石造りの廃教会へと転がり込んだ。

「ひどい傷です…! すぐに治療しないと、命が…!」
 廃教会の祭壇にカレルを横たえると、ミラベルは涙を拭い、錬金術師の顔になった。彼女はリュックから、次々と怪しげな色の薬品や、見たこともないような器具を取り出す。

「花季様、輸血用の血液増幅薬と、細胞を無理やり活性化させる軟膏を使います! でも、副作用で…たぶん、一週間くらい、カレルさんの体が七色のオーラを放ってピカピカ光っちゃうかもしれません!」
「命が助かるなら、彼が歩くイルミネーションになろうが構わないわ! やりなさい、ミラベル!」
「はいっ!」

 ミラベルの懸命な治療が始まった。リーナは、自分のせいでカレルが深手を負ったことにショックを受け、ただ涙を流していた。
「私の…私のせいで…ごめんなさい…」
 私は、その小さな肩をそっと抱き寄せた。
「あなたのせいじゃないわ、リーナさん。悪いのは、あなたを利用しようとする者たち。それに、あの男は、あなたを守れたことを、きっと誇りに思っているはずよ」
「…でも」
「だから、顔を上げて。あなたには、ただ守られるだけのお姫様じゃない、この状況を打開する力が眠っているはずだから」
 私の言葉に、リーナ――リリアーナ姫は、はっと顔を上げた。その瞳に、か弱さではない、強い意志の光が宿り始めていた。

 治療の最中、カレルはうわ言のように、途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「…王妃様…お守り、します…。リリアーナ…姫…今度こそ…それが、あの人との…約束…」
 彼の背負ってきたものの重さ、その孤独な戦いの意味を、私たちは改めて知った。

 夜が更け、ヴォルフガング中佐が偵察から戻ってきた。彼の表情は、これまでになく険しい。
「最悪の状況だ。村は完全にギルドに包囲された。村人たちを人質に取り、『夜明けまでに姫を引き渡さなければ、一人ずつ殺す』と…」
「なんて卑劣な…!」
 絶望的な状況。しかし、誰も諦めてはいなかった。

 その時、祭壇で治療を受けていたカレルが、うっすらと目を開けた。彼の体は、ミラベルの予告通り、ぼんやりと虹色のオーラを放ち、神々しく(というか、胡散臭く)ピカピカと光り輝いていた。

「…よぉ。ずいぶん、派手なことになってんな、俺…」
「カレル!気がついたのね!」
「ああ…最悪の目覚めだぜ…。で、状況は?」
 彼は、ヴォルフガング中佐から状況を聞くと、フッと力なく笑った。
「…だろうな。だが、あの指揮官…傷顔の男は、意外と単純だ。奴は、自分の力を過信している。…奇襲をかけるなら、奴のいる村長の家…そこだけだ」
 弱っていても、彼の頭脳は健在だった。

 カレルの情報、ヴォルフガング中佐の戦術、ミラベルの発明、そして、リリアーナ姫の持つ王族としてのカリスマ。私たちの持つ全てのカードを組み合わせ、一点突破の奇襲作戦が形になっていく。

 リリアーナ姫は、涙を拭い、まっすぐに私たちを見つめた。
「私に、できることはありますか?」
 その声には、もう迷いはなかった。

 夜明けまで、あと数時間。
 私は、虹色に輝きながら「こんなピカピカじゃ、潜入も何もあったもんじゃねぇな…」と悪態をつくカレル、覚悟を決めたリリアーナ姫、最後の発明品の調整に余念がないミラベル、そして、精鋭を率いるヴォルフガング中佐を見渡し、力強く宣言した。

「さあ、反撃を始めましょう」
「これは、ただの防衛戦じゃない。私たちの仲間を、この村を、そしてエスターニアの未来を、私たちの手で奪い返すための、戦いよ!」

 廃教会に集った仲間たちの瞳に、決戦の炎が燃え上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

さようなら、たったふたつの

あんど もあ
ファンタジー
王子に愛されてる伯爵令嬢のアリアと、その姉のミレイユ。姉妹には秘密があった……。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...