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約束の国のレクイエム
第33話 ピカピカ光る仲間と、反撃の狼煙
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「――あなたたちの相手は、この私よ!」
私の宣言に、傷顔のリーダーは一瞬怯んだが、すぐに嘲りの笑みを浮かべた。
「小娘一人が、粋がるな! 全員、かかれ! 姫も、そこの情報屋崩れも、まとめて始末しろ!」
ギルドの精鋭たちが、再び殺気と共に私たちに迫る!
(このままじゃ、ジリ貧だわ…!)
私は咄嗟に、懐に忍ばせていた最後の切り札――ミラベルがカレルのためにと密かに開発していた笛を取り出した。
「ごめんなさいカレル、あなたのペット、少し借りるわね!」
私は思い切り息を吸い込み、その笛を吹いた! キィィィ、と人間には聞こえないはずの特殊な超音波が、森の闇に響き渡る。それは、カレルが使っていた笛の音をミラベルが完全にコピーし、さらに強制的に呼び寄せる機能を追加した『友達の友達はみんな友達☆コウモリ呼び寄せホイッスル(カレル専用・緊急時強奪バージョン!)』だった!
すると、どうだろう。さっきまでカレルの指示で飛び回っていたコウモリたちが、一斉に方向転換し、今度はギルドの連中に猛然と襲いかかったのだ!
「ぎゃあ! またこいつらか!」
「目が! 目があけられん!」
予期せぬコウモリの再襲来に、敵の陣形は完全に崩れた。
「今よ! ヴォルフガング中佐の所へ!」
その混乱に乗じて、私はミラベルとリーナに叫び、カレルの体を支えながら、森の奥へと駆け出した!
「リアナ嬢!」
森の開けた場所で、少数の部下と共に私たちを待っていたヴォルフガング中佐が、血まみれのカレルを見て息を呑んだ。
「西にある、古い廃教会へ! そこなら、一時的に身を隠せる!」
彼の的確な指示と、部下たちの援護を受け、私たちはなんとか追手を振り切り、月明かりに照らされた、蔦の絡まる石造りの廃教会へと転がり込んだ。
「ひどい傷です…! すぐに治療しないと、命が…!」
廃教会の祭壇にカレルを横たえると、ミラベルは涙を拭い、錬金術師の顔になった。彼女はリュックから、次々と怪しげな色の薬品や、見たこともないような器具を取り出す。
「花季様、輸血用の血液増幅薬と、細胞を無理やり活性化させる軟膏を使います! でも、副作用で…たぶん、一週間くらい、カレルさんの体が七色のオーラを放ってピカピカ光っちゃうかもしれません!」
「命が助かるなら、彼が歩くイルミネーションになろうが構わないわ! やりなさい、ミラベル!」
「はいっ!」
ミラベルの懸命な治療が始まった。リーナは、自分のせいでカレルが深手を負ったことにショックを受け、ただ涙を流していた。
「私の…私のせいで…ごめんなさい…」
私は、その小さな肩をそっと抱き寄せた。
「あなたのせいじゃないわ、リーナさん。悪いのは、あなたを利用しようとする者たち。それに、あの男は、あなたを守れたことを、きっと誇りに思っているはずよ」
「…でも」
「だから、顔を上げて。あなたには、ただ守られるだけのお姫様じゃない、この状況を打開する力が眠っているはずだから」
私の言葉に、リーナ――リリアーナ姫は、はっと顔を上げた。その瞳に、か弱さではない、強い意志の光が宿り始めていた。
治療の最中、カレルはうわ言のように、途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「…王妃様…お守り、します…。リリアーナ…姫…今度こそ…それが、あの人との…約束…」
彼の背負ってきたものの重さ、その孤独な戦いの意味を、私たちは改めて知った。
夜が更け、ヴォルフガング中佐が偵察から戻ってきた。彼の表情は、これまでになく険しい。
「最悪の状況だ。村は完全にギルドに包囲された。村人たちを人質に取り、『夜明けまでに姫を引き渡さなければ、一人ずつ殺す』と…」
「なんて卑劣な…!」
絶望的な状況。しかし、誰も諦めてはいなかった。
その時、祭壇で治療を受けていたカレルが、うっすらと目を開けた。彼の体は、ミラベルの予告通り、ぼんやりと虹色のオーラを放ち、神々しく(というか、胡散臭く)ピカピカと光り輝いていた。
「…よぉ。ずいぶん、派手なことになってんな、俺…」
「カレル!気がついたのね!」
「ああ…最悪の目覚めだぜ…。で、状況は?」
彼は、ヴォルフガング中佐から状況を聞くと、フッと力なく笑った。
「…だろうな。だが、あの指揮官…傷顔の男は、意外と単純だ。奴は、自分の力を過信している。…奇襲をかけるなら、奴のいる村長の家…そこだけだ」
弱っていても、彼の頭脳は健在だった。
カレルの情報、ヴォルフガング中佐の戦術、ミラベルの発明、そして、リリアーナ姫の持つ王族としてのカリスマ。私たちの持つ全てのカードを組み合わせ、一点突破の奇襲作戦が形になっていく。
リリアーナ姫は、涙を拭い、まっすぐに私たちを見つめた。
「私に、できることはありますか?」
その声には、もう迷いはなかった。
夜明けまで、あと数時間。
私は、虹色に輝きながら「こんなピカピカじゃ、潜入も何もあったもんじゃねぇな…」と悪態をつくカレル、覚悟を決めたリリアーナ姫、最後の発明品の調整に余念がないミラベル、そして、精鋭を率いるヴォルフガング中佐を見渡し、力強く宣言した。
「さあ、反撃を始めましょう」
「これは、ただの防衛戦じゃない。私たちの仲間を、この村を、そしてエスターニアの未来を、私たちの手で奪い返すための、戦いよ!」
廃教会に集った仲間たちの瞳に、決戦の炎が燃え上がった。
私の宣言に、傷顔のリーダーは一瞬怯んだが、すぐに嘲りの笑みを浮かべた。
「小娘一人が、粋がるな! 全員、かかれ! 姫も、そこの情報屋崩れも、まとめて始末しろ!」
ギルドの精鋭たちが、再び殺気と共に私たちに迫る!
(このままじゃ、ジリ貧だわ…!)
私は咄嗟に、懐に忍ばせていた最後の切り札――ミラベルがカレルのためにと密かに開発していた笛を取り出した。
「ごめんなさいカレル、あなたのペット、少し借りるわね!」
私は思い切り息を吸い込み、その笛を吹いた! キィィィ、と人間には聞こえないはずの特殊な超音波が、森の闇に響き渡る。それは、カレルが使っていた笛の音をミラベルが完全にコピーし、さらに強制的に呼び寄せる機能を追加した『友達の友達はみんな友達☆コウモリ呼び寄せホイッスル(カレル専用・緊急時強奪バージョン!)』だった!
すると、どうだろう。さっきまでカレルの指示で飛び回っていたコウモリたちが、一斉に方向転換し、今度はギルドの連中に猛然と襲いかかったのだ!
「ぎゃあ! またこいつらか!」
「目が! 目があけられん!」
予期せぬコウモリの再襲来に、敵の陣形は完全に崩れた。
「今よ! ヴォルフガング中佐の所へ!」
その混乱に乗じて、私はミラベルとリーナに叫び、カレルの体を支えながら、森の奥へと駆け出した!
「リアナ嬢!」
森の開けた場所で、少数の部下と共に私たちを待っていたヴォルフガング中佐が、血まみれのカレルを見て息を呑んだ。
「西にある、古い廃教会へ! そこなら、一時的に身を隠せる!」
彼の的確な指示と、部下たちの援護を受け、私たちはなんとか追手を振り切り、月明かりに照らされた、蔦の絡まる石造りの廃教会へと転がり込んだ。
「ひどい傷です…! すぐに治療しないと、命が…!」
廃教会の祭壇にカレルを横たえると、ミラベルは涙を拭い、錬金術師の顔になった。彼女はリュックから、次々と怪しげな色の薬品や、見たこともないような器具を取り出す。
「花季様、輸血用の血液増幅薬と、細胞を無理やり活性化させる軟膏を使います! でも、副作用で…たぶん、一週間くらい、カレルさんの体が七色のオーラを放ってピカピカ光っちゃうかもしれません!」
「命が助かるなら、彼が歩くイルミネーションになろうが構わないわ! やりなさい、ミラベル!」
「はいっ!」
ミラベルの懸命な治療が始まった。リーナは、自分のせいでカレルが深手を負ったことにショックを受け、ただ涙を流していた。
「私の…私のせいで…ごめんなさい…」
私は、その小さな肩をそっと抱き寄せた。
「あなたのせいじゃないわ、リーナさん。悪いのは、あなたを利用しようとする者たち。それに、あの男は、あなたを守れたことを、きっと誇りに思っているはずよ」
「…でも」
「だから、顔を上げて。あなたには、ただ守られるだけのお姫様じゃない、この状況を打開する力が眠っているはずだから」
私の言葉に、リーナ――リリアーナ姫は、はっと顔を上げた。その瞳に、か弱さではない、強い意志の光が宿り始めていた。
治療の最中、カレルはうわ言のように、途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「…王妃様…お守り、します…。リリアーナ…姫…今度こそ…それが、あの人との…約束…」
彼の背負ってきたものの重さ、その孤独な戦いの意味を、私たちは改めて知った。
夜が更け、ヴォルフガング中佐が偵察から戻ってきた。彼の表情は、これまでになく険しい。
「最悪の状況だ。村は完全にギルドに包囲された。村人たちを人質に取り、『夜明けまでに姫を引き渡さなければ、一人ずつ殺す』と…」
「なんて卑劣な…!」
絶望的な状況。しかし、誰も諦めてはいなかった。
その時、祭壇で治療を受けていたカレルが、うっすらと目を開けた。彼の体は、ミラベルの予告通り、ぼんやりと虹色のオーラを放ち、神々しく(というか、胡散臭く)ピカピカと光り輝いていた。
「…よぉ。ずいぶん、派手なことになってんな、俺…」
「カレル!気がついたのね!」
「ああ…最悪の目覚めだぜ…。で、状況は?」
彼は、ヴォルフガング中佐から状況を聞くと、フッと力なく笑った。
「…だろうな。だが、あの指揮官…傷顔の男は、意外と単純だ。奴は、自分の力を過信している。…奇襲をかけるなら、奴のいる村長の家…そこだけだ」
弱っていても、彼の頭脳は健在だった。
カレルの情報、ヴォルフガング中佐の戦術、ミラベルの発明、そして、リリアーナ姫の持つ王族としてのカリスマ。私たちの持つ全てのカードを組み合わせ、一点突破の奇襲作戦が形になっていく。
リリアーナ姫は、涙を拭い、まっすぐに私たちを見つめた。
「私に、できることはありますか?」
その声には、もう迷いはなかった。
夜明けまで、あと数時間。
私は、虹色に輝きながら「こんなピカピカじゃ、潜入も何もあったもんじゃねぇな…」と悪態をつくカレル、覚悟を決めたリリアーナ姫、最後の発明品の調整に余念がないミラベル、そして、精鋭を率いるヴォルフガング中佐を見渡し、力強く宣言した。
「さあ、反撃を始めましょう」
「これは、ただの防衛戦じゃない。私たちの仲間を、この村を、そしてエスターニアの未来を、私たちの手で奪い返すための、戦いよ!」
廃教会に集った仲間たちの瞳に、決戦の炎が燃え上がった。
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