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第参章 水龍神様と涙雨の巫女と小さな龍の雫!~パパママ神様、今日も育児に奮闘中です!~
第26話 猛特訓の成果と、妖狐の卑劣な罠!
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「チーム雫!打倒・妖狐!(仮)」が結成されてから、数週間。
私たちの、ちょっぴり騒がしくて、でも愛情いっぱいの猛特訓は続いていた。
「せーのっ!」
「わっ!」
巌固様の「岩より重いカボチャを持ち上げて足腰を鍛える」というスパルタ指導で、雫はメソメソ。
「雫さん、風の声を聴いて。花びらだけを、そっと持ち上げるのよ、そっと…」
「うーん…あ、お洗濯物が!」
綾織様の優雅な指導で、私が干したばかりの洗濯物が空の彼方へ飛んでいく。
(あーっ!私の手ぬぐいーっ!)
そして、水晶様との神力コントロール訓練では――。
「いいか、雫。水の力を、この盃の中にだけ留めてみろ。心を静かに…」
「はい、お父様! こう…かな?…わわわっ!」
(びしゃーっ!)
「……うむ。威力が上がっているな(本日三度目のずぶ濡れ)」
(水晶様、もう着替えがありませんよー!?)
毎日がこんな調子で、私の内心のツッコミは休む暇もなかったけれど、確かな変化もあった。
あれだけ自分の力を怖がっていた雫が、失敗を繰り返しながらも、決して「やりたくない」とは言わなくなったのだ。その瞳には、「できるようになりたい」「みんなを守れるようになりたい」という、強い意志の光が灯っている。
そして何より、特訓の後、疲れ果てて私の膝枕で眠る雫の寝顔は、本当に幸せそうだった。
そんなある日、村の様子に、ほんの少しずつ、けれど確かな異変が現れ始めた。
元気に育っていたはずの畑の作物が、理由もなく萎れ始めたのだ。最初は日照りか、あるいは水のやりすぎかと思った。でも、それは村中の畑で同時に起こり、やがては家畜たちも元気をなくし、井戸の水さえ、どこか淀んで生臭い匂いがするようになってしまった。
「こ、これは一体…」月岡村長も、青い顔で首をひねるばかり。
水見里に、あの悪夢のような干ばつの時とはまた違う、じっとりとした、陰湿な暗い影が広がり始めていた。
「…間違いないわ」社殿で緊急会議を開いていた私たちの前で、綾織様が厳しい表情で言った。「この淀んだ気配…弧月の妖気よ。あいつ、村全体にじわじわと効く呪いをかけているんだわ」
「なんだとぉ!?」巌固様が、怒りで拳を震わせる。「神域で飽き足らず、無力な人間たちの村にまで手を出すとは!卑劣千万なキツネ野郎め!」
「目的は、おそらく雫でしょう」水晶様が、静かに、しかし怒りを込めて言った。「村を苦しめ、追い詰められた村人たちが、雫に助けを求めるように仕向けているのだ。そして、雫が村を救うためにその強大な力を使わざるを得ない状況を作り出し、力が尽きたところを狙う…そういう算段だろう」
(なんて、なんて卑劣なやり方なの…!)
その時だった。村の方から、何人かの村人が、悲痛な顔で社殿に駆け込んできた。
「萩乃様!水晶様!どうか、どうかお助けください!」
「このままでは、畑も家畜も全滅です!どうか、雫様のお力で…!」
村人たちの必死の懇願。その背後、少し離れた場所に、あの妖狐・弧月が、まるで心優しき旅人のような顔をして立っているのが見えた。その口元には、うっすらと、計画通りだと言わんばかりの笑みが浮かんでいる。
「おや、これはお困りのご様子。ですが、これほどの呪いを浄化するには、並大抵の力では難しいでしょうなぁ」弧月が、わざとらしくため息をついてみせる。「あるいは…あの類稀なる龍の御子様のお力ならば、あるいは…」
その言葉が、追い詰められた村人たちの最後の希望に火をつけてしまった。
「そうだ!雫様なら!」
「どうか、雫様!我らの村をお救いください!」
「だ、ダメです!」私は思わず叫んだ。「雫の力は、まだ…!」
まだ完全に制御できるわけじゃない。もしまた暴走したら? 村を救うどころか、もっと酷いことになるかもしれない。それに、力を使い果たした雫が、弧月に狙われたら…!
私と水晶様が、苦渋の表情で言葉に詰まる。その、重苦しい沈黙を破ったのは――。
「……しずくが、やる」
社殿の奥から、凛とした、けれどどこまでも澄んだ声が響いた。
そこに立っていたのは、いつもの可愛らしい着物ではなく、私が昔着ていた、小さな巫女装束を身にまとった、娘の雫だった。
「しずくが、みんなを、まもるの!」
その瞳には、もう迷いも恐怖もなかった。あるのは、大切な人たちを守るという、強い決意だけ。
「雫…!」
「お父様、お母様。しずく、できるよ。だって、みんなに教わったもん!」
雫は、私たちを見て、にこっと笑った。それは、ただの五歳の女の子の笑顔じゃない。神の娘として、そして水見里の巫女の娘として、自らの運命を受け入れた、強く、美しい笑顔だった。
「よく言った、それでこそ俺の孫娘だ!」巌固様が、涙声で吼える。
「…信じましょう、萩乃さん。あの子の力を」綾織様が、優しく私の手を握る。
水晶様は、何も言わずに娘の前に進み出ると、その小さな頭を一度だけ、優しく撫でた。
言葉はいらない。そこには、父と娘の、神と巫女の、絶対的な信頼と愛情が確かに存在していた。
「さあ、見せてやりましょう!」私は、涙をぐっとこらえて叫んだ。「私たちの、家族の力を!」
雫を中央に、私たち四人は、弧月と、そして村全体を覆う邪悪な呪いに、敢然と立ち向かう!
(次回、ついに最終決戦! 雫の力が奇跡を起こす!? 家族の絆で、未来を掴め!)
私たちの、ちょっぴり騒がしくて、でも愛情いっぱいの猛特訓は続いていた。
「せーのっ!」
「わっ!」
巌固様の「岩より重いカボチャを持ち上げて足腰を鍛える」というスパルタ指導で、雫はメソメソ。
「雫さん、風の声を聴いて。花びらだけを、そっと持ち上げるのよ、そっと…」
「うーん…あ、お洗濯物が!」
綾織様の優雅な指導で、私が干したばかりの洗濯物が空の彼方へ飛んでいく。
(あーっ!私の手ぬぐいーっ!)
そして、水晶様との神力コントロール訓練では――。
「いいか、雫。水の力を、この盃の中にだけ留めてみろ。心を静かに…」
「はい、お父様! こう…かな?…わわわっ!」
(びしゃーっ!)
「……うむ。威力が上がっているな(本日三度目のずぶ濡れ)」
(水晶様、もう着替えがありませんよー!?)
毎日がこんな調子で、私の内心のツッコミは休む暇もなかったけれど、確かな変化もあった。
あれだけ自分の力を怖がっていた雫が、失敗を繰り返しながらも、決して「やりたくない」とは言わなくなったのだ。その瞳には、「できるようになりたい」「みんなを守れるようになりたい」という、強い意志の光が灯っている。
そして何より、特訓の後、疲れ果てて私の膝枕で眠る雫の寝顔は、本当に幸せそうだった。
そんなある日、村の様子に、ほんの少しずつ、けれど確かな異変が現れ始めた。
元気に育っていたはずの畑の作物が、理由もなく萎れ始めたのだ。最初は日照りか、あるいは水のやりすぎかと思った。でも、それは村中の畑で同時に起こり、やがては家畜たちも元気をなくし、井戸の水さえ、どこか淀んで生臭い匂いがするようになってしまった。
「こ、これは一体…」月岡村長も、青い顔で首をひねるばかり。
水見里に、あの悪夢のような干ばつの時とはまた違う、じっとりとした、陰湿な暗い影が広がり始めていた。
「…間違いないわ」社殿で緊急会議を開いていた私たちの前で、綾織様が厳しい表情で言った。「この淀んだ気配…弧月の妖気よ。あいつ、村全体にじわじわと効く呪いをかけているんだわ」
「なんだとぉ!?」巌固様が、怒りで拳を震わせる。「神域で飽き足らず、無力な人間たちの村にまで手を出すとは!卑劣千万なキツネ野郎め!」
「目的は、おそらく雫でしょう」水晶様が、静かに、しかし怒りを込めて言った。「村を苦しめ、追い詰められた村人たちが、雫に助けを求めるように仕向けているのだ。そして、雫が村を救うためにその強大な力を使わざるを得ない状況を作り出し、力が尽きたところを狙う…そういう算段だろう」
(なんて、なんて卑劣なやり方なの…!)
その時だった。村の方から、何人かの村人が、悲痛な顔で社殿に駆け込んできた。
「萩乃様!水晶様!どうか、どうかお助けください!」
「このままでは、畑も家畜も全滅です!どうか、雫様のお力で…!」
村人たちの必死の懇願。その背後、少し離れた場所に、あの妖狐・弧月が、まるで心優しき旅人のような顔をして立っているのが見えた。その口元には、うっすらと、計画通りだと言わんばかりの笑みが浮かんでいる。
「おや、これはお困りのご様子。ですが、これほどの呪いを浄化するには、並大抵の力では難しいでしょうなぁ」弧月が、わざとらしくため息をついてみせる。「あるいは…あの類稀なる龍の御子様のお力ならば、あるいは…」
その言葉が、追い詰められた村人たちの最後の希望に火をつけてしまった。
「そうだ!雫様なら!」
「どうか、雫様!我らの村をお救いください!」
「だ、ダメです!」私は思わず叫んだ。「雫の力は、まだ…!」
まだ完全に制御できるわけじゃない。もしまた暴走したら? 村を救うどころか、もっと酷いことになるかもしれない。それに、力を使い果たした雫が、弧月に狙われたら…!
私と水晶様が、苦渋の表情で言葉に詰まる。その、重苦しい沈黙を破ったのは――。
「……しずくが、やる」
社殿の奥から、凛とした、けれどどこまでも澄んだ声が響いた。
そこに立っていたのは、いつもの可愛らしい着物ではなく、私が昔着ていた、小さな巫女装束を身にまとった、娘の雫だった。
「しずくが、みんなを、まもるの!」
その瞳には、もう迷いも恐怖もなかった。あるのは、大切な人たちを守るという、強い決意だけ。
「雫…!」
「お父様、お母様。しずく、できるよ。だって、みんなに教わったもん!」
雫は、私たちを見て、にこっと笑った。それは、ただの五歳の女の子の笑顔じゃない。神の娘として、そして水見里の巫女の娘として、自らの運命を受け入れた、強く、美しい笑顔だった。
「よく言った、それでこそ俺の孫娘だ!」巌固様が、涙声で吼える。
「…信じましょう、萩乃さん。あの子の力を」綾織様が、優しく私の手を握る。
水晶様は、何も言わずに娘の前に進み出ると、その小さな頭を一度だけ、優しく撫でた。
言葉はいらない。そこには、父と娘の、神と巫女の、絶対的な信頼と愛情が確かに存在していた。
「さあ、見せてやりましょう!」私は、涙をぐっとこらえて叫んだ。「私たちの、家族の力を!」
雫を中央に、私たち四人は、弧月と、そして村全体を覆う邪悪な呪いに、敢然と立ち向かう!
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