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四人の男――エドワード殿下、アラン、ルシウス、そして隣国の王子レオンハルト。
彼らの視線がぶつかり合う中、私はただ庭園の中央で立ち尽くしていた。
剣を抜きそうなほど怒りに燃えるアラン。
静かながらも厳しい言葉で殿下を諭すルシウス。
冷ややかな笑みを浮かべながら、私を自国へ連れて行くと宣言するレオンハルト。
そして、私を失いたくないと苦悩を滲ませるエドワード殿下。
四方から寄せられる想いは重すぎて、胸の奥が張り裂けそうだった。
「リリアナ」
最初に沈黙を破ったのは、エドワード殿下だった。
彼は他の三人を押しのけるように一歩前に出て、真っ直ぐに私を見つめる。
「私は、お前を愛している。……だが、王太子としての立場が私の心を縛った。
あの日、お前を断罪する言葉を口にした瞬間、私は己の愚かさを悟ったのだ」
その声は震えていた。
普段は冷徹で威厳に満ちている殿下が、今はただの一人の青年として苦悩を吐露している。
「もう二度と、同じ過ちを繰り返したくはない。
リリアナ……どうか、私に償わせてはくれないか」
すぐにアランが割って入った。
「殿下、今さら何を言っている! リリアナは死刑にされるところだったんだぞ。
俺は誓ったんだ。リリアナを命に代えても守ると。……だから、殿下には渡さない」
アランの言葉は真っ直ぐで熱い。
幼い頃から彼がずっと私を守ってくれていたことを、私は知っている。
その眼差しに宿る強さは、決して偽りではなかった。
「争いは無益です」
ルシウスが静かに口を開いた。
その声は優しく、けれど凛としていた。
「リリアナ様。私は、あなたが神に選ばれた存在であると信じています。
あなたが誰を選ぼうとも、神の加護は失われません。……ですが、私は願わずにはいられないのです。
どうか、私の隣で共に祈りを捧げる未来を――」
その真摯な告白に、胸が締め付けられた。
ルシウスは誰よりも誠実で、私を「聖女」として認めてくれた唯一の存在。
彼の優しい眼差しに、どれほど救われたか知れない。
「お前たちのやり取りはもう十分だ」
最後に、レオンハルトが冷ややかに言い放った。
「リリアナ、私の国へ来い。ここにいてはいつまた裏切られるか分からん。
だが、私のもとに来れば誰もお前を傷つけられない。……私は必ずお前を王妃にする」
その声には揺るぎない力があった。
彼は常に行動が早く、ためらいがない。その強引さに振り回されることもあったが……その一途さもまた本物だった。
四人の告白を受けて、私は深く息を吸った。
胸の奥で、答えはもう決まっていた。
「……ありがとう、皆さん」
私は一歩前に出て、静かに告げた。
「私のためにここまでしてくださったこと、心から感謝します。
けれど――私は、誰の庇護の下に生きるのでもなく、自分の意思で未来を選びたいのです」
四人の瞳が一斉に私に注がれる。
その視線を真っ直ぐに受け止めながら、私は続けた。
「私は……アラン。あなたと共に歩みたい」
アランの瞳が大きく見開かれ、震える声が漏れる。
「……俺で、いいのか?」
「ええ。子供のころから私を守ってくれていたこと、あの日壇上で剣を抜いてまで私を庇ってくれたこと。
そのすべてが、私にとって何よりも大切な証だから」
涙が滲む。
アランは一瞬唇を噛み、次の瞬間、私を力強く抱きしめた。
「必ず幸せにする。……もう二度と、お前をひとりにはしない」
沈黙が流れる中、エドワード殿下がゆっくりと目を伏せた。
「……そうか。私は、己の愚かさで最愛の人を失ったのだな」
彼の声には深い悔恨が滲んでいた。
だが次に顔を上げたとき、その瞳には決意の光が宿っていた。
「ならば私は、この国を正しく導くことで贖おう。……どうか、幸せに」
ルシウスは微笑みを浮かべ、胸に手を当てた。
「神は見ておられます。あなたが選んだ未来に祝福を。……私の祈りは、いつでもあなたの傍にあります」
レオンハルトはわずかに眉をひそめたが、すぐに鋭い笑みを浮かべた。
「フン……気が変わったらいつでも来い。私の国の扉は閉ざさない」
彼らの言葉に、胸が熱くなる。
それぞれの想いは痛いほど伝わった。
けれど私は、自分の意思で未来を選んだ。
数日後。
私は王宮を後にし、アランと共に新しい道を歩み始めた。
王太子の断罪を乗り越え、聖女としての加護を認められた私。
もう誰かに翻弄される令嬢ではなく、自らの意思で人生を選ぶ一人の女性として。
隣には、どこまでも真っ直ぐで、不器用なほど誠実な騎士。
その温もりに包まれながら、私は微笑んだ。
(大丈夫。これからはきっと、幸せになれる)
新しい朝の光が差し込む中、私たちは共に歩き出した。
彼らの視線がぶつかり合う中、私はただ庭園の中央で立ち尽くしていた。
剣を抜きそうなほど怒りに燃えるアラン。
静かながらも厳しい言葉で殿下を諭すルシウス。
冷ややかな笑みを浮かべながら、私を自国へ連れて行くと宣言するレオンハルト。
そして、私を失いたくないと苦悩を滲ませるエドワード殿下。
四方から寄せられる想いは重すぎて、胸の奥が張り裂けそうだった。
「リリアナ」
最初に沈黙を破ったのは、エドワード殿下だった。
彼は他の三人を押しのけるように一歩前に出て、真っ直ぐに私を見つめる。
「私は、お前を愛している。……だが、王太子としての立場が私の心を縛った。
あの日、お前を断罪する言葉を口にした瞬間、私は己の愚かさを悟ったのだ」
その声は震えていた。
普段は冷徹で威厳に満ちている殿下が、今はただの一人の青年として苦悩を吐露している。
「もう二度と、同じ過ちを繰り返したくはない。
リリアナ……どうか、私に償わせてはくれないか」
すぐにアランが割って入った。
「殿下、今さら何を言っている! リリアナは死刑にされるところだったんだぞ。
俺は誓ったんだ。リリアナを命に代えても守ると。……だから、殿下には渡さない」
アランの言葉は真っ直ぐで熱い。
幼い頃から彼がずっと私を守ってくれていたことを、私は知っている。
その眼差しに宿る強さは、決して偽りではなかった。
「争いは無益です」
ルシウスが静かに口を開いた。
その声は優しく、けれど凛としていた。
「リリアナ様。私は、あなたが神に選ばれた存在であると信じています。
あなたが誰を選ぼうとも、神の加護は失われません。……ですが、私は願わずにはいられないのです。
どうか、私の隣で共に祈りを捧げる未来を――」
その真摯な告白に、胸が締め付けられた。
ルシウスは誰よりも誠実で、私を「聖女」として認めてくれた唯一の存在。
彼の優しい眼差しに、どれほど救われたか知れない。
「お前たちのやり取りはもう十分だ」
最後に、レオンハルトが冷ややかに言い放った。
「リリアナ、私の国へ来い。ここにいてはいつまた裏切られるか分からん。
だが、私のもとに来れば誰もお前を傷つけられない。……私は必ずお前を王妃にする」
その声には揺るぎない力があった。
彼は常に行動が早く、ためらいがない。その強引さに振り回されることもあったが……その一途さもまた本物だった。
四人の告白を受けて、私は深く息を吸った。
胸の奥で、答えはもう決まっていた。
「……ありがとう、皆さん」
私は一歩前に出て、静かに告げた。
「私のためにここまでしてくださったこと、心から感謝します。
けれど――私は、誰の庇護の下に生きるのでもなく、自分の意思で未来を選びたいのです」
四人の瞳が一斉に私に注がれる。
その視線を真っ直ぐに受け止めながら、私は続けた。
「私は……アラン。あなたと共に歩みたい」
アランの瞳が大きく見開かれ、震える声が漏れる。
「……俺で、いいのか?」
「ええ。子供のころから私を守ってくれていたこと、あの日壇上で剣を抜いてまで私を庇ってくれたこと。
そのすべてが、私にとって何よりも大切な証だから」
涙が滲む。
アランは一瞬唇を噛み、次の瞬間、私を力強く抱きしめた。
「必ず幸せにする。……もう二度と、お前をひとりにはしない」
沈黙が流れる中、エドワード殿下がゆっくりと目を伏せた。
「……そうか。私は、己の愚かさで最愛の人を失ったのだな」
彼の声には深い悔恨が滲んでいた。
だが次に顔を上げたとき、その瞳には決意の光が宿っていた。
「ならば私は、この国を正しく導くことで贖おう。……どうか、幸せに」
ルシウスは微笑みを浮かべ、胸に手を当てた。
「神は見ておられます。あなたが選んだ未来に祝福を。……私の祈りは、いつでもあなたの傍にあります」
レオンハルトはわずかに眉をひそめたが、すぐに鋭い笑みを浮かべた。
「フン……気が変わったらいつでも来い。私の国の扉は閉ざさない」
彼らの言葉に、胸が熱くなる。
それぞれの想いは痛いほど伝わった。
けれど私は、自分の意思で未来を選んだ。
数日後。
私は王宮を後にし、アランと共に新しい道を歩み始めた。
王太子の断罪を乗り越え、聖女としての加護を認められた私。
もう誰かに翻弄される令嬢ではなく、自らの意思で人生を選ぶ一人の女性として。
隣には、どこまでも真っ直ぐで、不器用なほど誠実な騎士。
その温もりに包まれながら、私は微笑んだ。
(大丈夫。これからはきっと、幸せになれる)
新しい朝の光が差し込む中、私たちは共に歩き出した。
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