浮気相手を選んだ元婚約者ざまぁ!捨てられ令嬢は隣国の王子に溺愛されています

ゆっこ

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 アルノルト殿下が私に縋りついてきた夜から、数日が経った。
 彼は何度も「やり直したい」と言い募ったらしいが、その度にリヒャルト殿下に遮られ、面会を拒まれていた。

 そして――事態をさらに混乱させる存在が現れた。







 「エリーゼ!」

 甲高い声に振り返ると、豪奢なドレスを身に纏った女性が廊下を歩いてきた。
 見間違えるはずがない。アルノルト殿下が私を捨ててまで選んだ浮気相手――マリアベルだ。

 「まあ、こんなところで再会するなんて! でも可哀想に……また婚約破棄されたのでしょう? だから隣国に逃げてきたのね?」

 彼女は勝ち誇った笑みを浮かべながら、わざと大きな声でそう言った。
 通りすがる侍女や騎士たちが立ち止まり、こちらを振り返る。

 「……違います」

 私は静かに言った。だが、彼女は聞きもしない。

 「わたくしはアルノルト殿下に選ばれたの! 本当なら次期王妃になるはずだったのに、どうしてあなたみたいな女が……」

 その目は嫉妬と焦燥に燃えていた。
 私は一歩も退かず、毅然とした態度を取る。

 「マリアベル。あなたは“選ばれた”のではありません。アルノルト殿下が一時の気の迷いで手を伸ばしただけ」

 「な……っ」

 「結果はどうですか? あなたを得ても、彼はもう私のところに戻ろうと必死になっている」

 マリアベルの顔色が見る見る青ざめる。
 それが答えだった。

 ――これ以上、言葉を重ねる必要はない。
 私は背を向け、その場を去った。





 数日後。王城で開かれた公的な場にて、アルノルト殿下とマリアベルの運命は決定づけられた。

 外交の席で彼らは取り繕おうとしたが、既に隣国の王もリヒャルト殿下も、彼らの内情を掴んでいた。
 特にマリアベルの振る舞いは醜悪で、貴族たちの反感を買った。

 「身の程を知れ」
 そう冷たく言い放ったのはリヒャルト殿下だった。

 そしてアルノルト殿下には、国王自らが突きつけた。
 「外交の場で恥を晒した以上、責任を取らせる」と。

 二人は祖国に送還され、重い処罰を受けることになった。
 それが、彼らの“ざまぁ”の結末だった。






 夜。王城のバルコニーにて。
 月明かりがリヒャルト殿下の横顔を照らし出す。

 「……すべてが片付いたな」

 「はい」
 私も静かに頷いた。

 「君はもう、過去に縛られる必要はない。アルノルトも、マリアベルも、君の人生から消え去った」

 殿下の声は穏やかで、けれど確かな力強さを秘めていた。
 私は胸の奥が温かくなるのを感じながら、そっと彼を見上げた。

 「エリーゼ」
 彼は私の名を呼び、真剣な眼差しで続けた。

 「私は君を正式に妃として迎えたい。もう、隣に立ってほしいのではなく――生涯を共にしてほしい」

 ――心臓が大きく跳ねる。
 夢見ていた言葉が、今、目の前の人から告げられたのだ。

 私は震える声で答えた。

 「……はい。喜んで」

 その瞬間、彼の瞳が柔らかく光を宿す。
 そして次の瞬間、温かな唇が私の唇を優しく塞いだ。

 世界が静止したように感じた。
 過去の痛みも、苦しみも、すべてが溶けて消えていく。
 残ったのはただ、この人と共に歩んでいきたいという想いだけ。





 後日。

 私とリヒャルト殿下の婚約は、国を挙げて祝福される大きな慶事となった。
 民衆は熱狂し、貴族たちはこぞって祝辞を述べた。

 「婚約破棄された令嬢」と嘲笑された過去は、もう誰も口にしない。
 今の私は――隣国の王子に溺愛される、未来の妃なのだから。

 リヒャルト殿下は式典の席で、皆の前で私の手を取り、誓った。

 「この人を生涯、愛し、守り抜く」

 その声を聞いたとき、私は心の底から思った。
 ――あの日、婚約破棄されたことは決して不幸ではなかった。
 むしろ、それがあったからこそ、今の幸せに辿り着けたのだと。





 そして、過去の亡霊に怯えることなく、私は新たな人生を歩み始める。

 浮気相手を選んだ元婚約者に、心からこう告げられる。

 ――ざまぁ、と。
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