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第零章 天女の始まり
45 旅立ち
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「お前、あんな人間なんかに力取られやがって…。」
どれだけの時間固まっていたのかは分からない。一瞬だったのか、はたまた数分経ってしまったのか、太郎坊の声で徳はハッとなった。
「……そこじゃない。」
思わず八つ当たりのように太郎坊を睨んでしまったが、そういえばこいつも口から力を吸おうとしていたなと思い出す。
ショックはショックだが、悩んでいてもしょうがない。過ぎたことをくよくよしていてもなにも始まらない、とただでさえ現実的だった徳のかわいらしい年齢相応の部分がまた一つ失われそうになっていると、千代ががしっと徳の肩を掴んだ。
「徳様…。」
「え…?はい。」
「今すぐ忘れましょう。」
「え?」
「あいつは動物です。犬に噛まれたのです!」
そう言いながら千代は徳の唇を手ぬぐいでごしごしと擦り始めた
「ちょっ!痛っ!痛いよ千代…!」
千代の目がメラメラと燃えている。徳はもういいやと思っていたが、千代の方が滅茶苦茶怒っている。しかし、それとこれとは別だ。徳が千代を止めようとすると、横から腕が伸びてきた。
「千代殿、気持ちは分かるが落ち着け。」
「千代ー、こっちおいでー。」
信繁が千代の手の動きを止め、佐助が向こう側から千代を呼んだ。千代がとぼとぼと佐助のもとに歩いていくが、残された二人の間には何とも言えない気まずい空気が漂う。
「…あ、えーっと、ありがとうございます…。」
「……。」
(…なに!?なんで無言…!?)
とりあえず、千代を止めてくれたことに感謝を伝えるも信繁は何も答えない。そこで初めて徳は信繁の顔を見上げる。無表情で何を考えているのか分からない顔が、徳の足を見つめていた。
「…なぜ、素足をさらけ出しているんだ?」
「…え?…あー、走りにくくって…。」
そういえばそうだった。裾を結び動きやすいようにしていたのだった。
「……。」
「っちょ!信繁様…!?」
徳が素直に答えると、信繁は無言でしゃがみ込み、徳の脚に出来てしまった傷の傍を指でなぞった。
「傷がついている…。」
「ひゃっ!そ、そうですね!ごめんなさい!」
指でなぞったと思えば、そのまま下腿を掴み、上目遣いで徳を見つめてきたため、徳はなぜか謝罪してしまう。
(…っ!…ちょっと待ってっ!まさかそんなとこ舐めたりしないよねっ!?)
羞恥で混乱しているうちに、気づけば結ばれていた徳の裾は信繁によってほどかれ、衣服が整えられていた。
「…はぁ…。」
信繁がため息とともに立ち上がる。徳はそれに合わせて視線が下から上に上がった。徳の恥ずかしい考えは杞憂だったようだ。しかし、信繁の何を考えているのか分からない瞳は未だ徳を射抜いている。緊張するが、なぜか逸らしたくも逸らせない。
「……頼むから、あまり無防備になるな。危機感を持ってくれ…。」
「…っ!」
「あんたからは目が離せん…。」
そう言いながら次は徳の唇を指でなぞる信繁。その指使いがあまりに優しく、徳はなぜか泣きそうになる。
「今回のことは千代殿の言う通り忘れろ。」
「…は、はい…。」
「……行くぞ。」
そう言うと信繁は踵を返し佐助と千代のいる場所へと歩いていく。徳は力が抜け、背後の木に背を預けた。どくどくと胸の拍動が止まらない。信繁が触れたところが熱を帯びている。先ほど吉明とキスしてしまった時よりも、恥ずかしく、胸が苦しい。徳はこの気持ちの名前を知らない。知りたくない。
「…ダメよ徳…。私は一国の姫なんだから…。」
気持ちを整えて、徳も皆のいる場所へ小走りで向かった。
◇◇◇◇◇
「えー!徳、もう行っちゃうのー!?」
相変わらず日差しは強く照り付ける。蝉たちが今日も一層元気に鳴き声をあげている真田屋敷で、二郎坊の声が響いた。
「いや、ここは俺の屋敷だが…。」
「まだここに居てよー!一緒に居ようよー!」
「だから、俺の屋敷だ…。」
陰陽師との一件があって3日後、敦賀城から便りが来た。吉継が心配していることや、皆が待っているという旨を伝える文だ。ここにも長居しすぎた。そろそろ城へ帰ることを伝えると、二郎坊が引き留めてくれる。
「はは…。でも、もうここでお世話になる理由もなくなっちゃたし、みんなも心配してるから…。」
「えー…。信繁も引き留めてよー!」
「…俺に引き留める権利はない。吉継殿が心配しているんだ。戻った方がいい。」
「…そうですよね…。…本当に、信繁様と佐助さんにはお世話になりました。ぜひお礼をさせてください。」
信繁は引き留めないだろうとわかっていたものの、徳は少しショックを受ける自分に気づく。しかし、それを無視して話を進める。
「別によい…。大したことは出来なかったし。」
「そうだよー。姫さんいて俺らも楽しかったし。」
「ダメです!ぜひお礼を!」
「わたくしからも、お願いしまする!きっと吉継様もお二人にお礼をと申されるかと思いますぞ!」
「だがなぁ…。」
信繁が徳と千代の二人を交互に見る。二人ともきらきらと目を輝かせ『絶対にお礼をしたい』という意思がまぶしく伝わってくる。
「……………じゃあ、いつか敦賀城の風呂に入ってみたい…。」
根負けしたように信繁はぼそっと呟いた。
「…へ?お風呂ですか?」
「温泉を引いているんだろう?」
「あー、それいいね。」
「なるほど!承知いたしました!敦賀城の風呂はこれはもう言葉で自慢するに足りない素晴らしいものでして…――」
「――え、また、会えるの…?」
千代が城の風呂自慢をしている最中、徳は心で思った言葉がぽろっと口から出てしまった。
皆の視線が徳へ向く。
「あ!いや!あの、違くてですねっ!」
口に出したつもりはなかったのに、一気に静まり視線を感じた徳は、自身の失敗を悟る。言い訳をするにもどういえば良いか分からない。
「――なんだ、会わないつもりでいたのか?」
「へ…?」
信繁が小首を傾げ不思議そうに聞いてくる。
「摂津国から越前国も越前国から俺の故郷である信濃国も果てしなく遠いわけではない。会おうと思えば会える。それとも、大谷の姫はもう会う気はなかったのか?」
「なっ違ッ!」
「なら、会いに行くさ。」
「っ…。………はい。」
笑顔で述べる信繁に、徳は先ほど萎んだ気持ちが今度は温かくなる。
「俺も呼んでくれよな。俺だって今回役に立ったぜ。」
「お前居なくても何とかなったよ。」
「んだと!猿飛この野郎!役に立ってただろ!」
「いや、居ても居なくても変わんなかった。」
「というか、なぜお前はまだここに居るんだ。」
急に話に乱入してきた相変わらず図々しくて自由奔放な才蔵。徳はなんだかんだ皆才蔵とも仲良くなったように思う。
「才蔵さんはどうするんですか?」
「あぁ?…まぁ、そろそろ依頼が来そうだから、一回里へ戻るわ。」
「そうなの?早く帰りなよ。」
「早く帰れ。」
「だから、お前ら俺に冷たくねぇか!?」
仲良くなった…、気がする…。
「俺も一緒に越前へ行く。」
急に発せられた太郎坊の声に、再び皆がシーンとなり、今度は視線が太郎坊へ集中する。
「え…、なんで?」
思わず徳は聞いてしまったが、太郎坊はそれが不快だったのか徳を睨んだ。
「なんだよ。行っちゃいけないのかよ。」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…。」
「太郎坊が行くならおれも行く!」
二郎坊が嬉しそうに挙手をしながら同行に賛同した。癒しだ。
「…まあ、いいんじゃないか?女子二人で帰るよりは。」
信繁の発言はもっともだが、急にどうしたのかと疑問に思ってしまう。しかし、太郎坊は母のことを知っていたのだ。そのことについて聞くも教えてくれないため、何か考えがあるのだろうと徳は思い直した。
「じゃあ、一緒にお願いします。」
「あぁ…。」
◇◇◇◇
明朝早く、皆が真田屋敷の前に集まっていた。小鳥が囀り始め、一日の始まりを教えてくれる。
別れにはあまりに清々しい朝だが、悲しい気分でも無いためちょうど良かったのかもしれない。
「…じゃあ、帰ります。本当にありがとうございました。」
「お世話になりました!…佐助兄さま、文を出します…。」
「はいよ。…会えてよかったよ千代。」
猿飛兄妹が別れの抱擁を交わしている。この二人は初めのうちはぎこちなかったも今じゃとても仲が良い。見ていてうらやましい限りだ。
「は!俺はもう行くぜ。世話になったな。」
「「早く帰れ。」」
「ほんっと、腹立つ兄妹だぜっ!――じゃあな!」
抱擁しながら才蔵に冷たい発言をする佐助と千代に、怒鳴りながらも才蔵はシュッといなくなってしまった。勝手に居座っていたものの思ったよりも味気ない別れだ。自由奔放な人物なので、それもそれで才蔵らしいか、と才蔵が消えた場所を徳が眺めていると、頭の上に何かがポンッと乗った。
「気を付けて帰れよ。」
「…はい。」
信繁に頭を撫でられながら徳は信繁を見上げる。朝日で輝くまぶしい青年。誰の導きでこの場所に落ちてしまったのかは未だ分からないが、この出会いは徳にとって素晴らしいものであった。
「信繁様もお元気で。」
こうして二人の出会いは幕を閉じた。暑い真夏の不思議な出会い。徳は齢14で信繁が19の出来事であった。
どれだけの時間固まっていたのかは分からない。一瞬だったのか、はたまた数分経ってしまったのか、太郎坊の声で徳はハッとなった。
「……そこじゃない。」
思わず八つ当たりのように太郎坊を睨んでしまったが、そういえばこいつも口から力を吸おうとしていたなと思い出す。
ショックはショックだが、悩んでいてもしょうがない。過ぎたことをくよくよしていてもなにも始まらない、とただでさえ現実的だった徳のかわいらしい年齢相応の部分がまた一つ失われそうになっていると、千代ががしっと徳の肩を掴んだ。
「徳様…。」
「え…?はい。」
「今すぐ忘れましょう。」
「え?」
「あいつは動物です。犬に噛まれたのです!」
そう言いながら千代は徳の唇を手ぬぐいでごしごしと擦り始めた
「ちょっ!痛っ!痛いよ千代…!」
千代の目がメラメラと燃えている。徳はもういいやと思っていたが、千代の方が滅茶苦茶怒っている。しかし、それとこれとは別だ。徳が千代を止めようとすると、横から腕が伸びてきた。
「千代殿、気持ちは分かるが落ち着け。」
「千代ー、こっちおいでー。」
信繁が千代の手の動きを止め、佐助が向こう側から千代を呼んだ。千代がとぼとぼと佐助のもとに歩いていくが、残された二人の間には何とも言えない気まずい空気が漂う。
「…あ、えーっと、ありがとうございます…。」
「……。」
(…なに!?なんで無言…!?)
とりあえず、千代を止めてくれたことに感謝を伝えるも信繁は何も答えない。そこで初めて徳は信繁の顔を見上げる。無表情で何を考えているのか分からない顔が、徳の足を見つめていた。
「…なぜ、素足をさらけ出しているんだ?」
「…え?…あー、走りにくくって…。」
そういえばそうだった。裾を結び動きやすいようにしていたのだった。
「……。」
「っちょ!信繁様…!?」
徳が素直に答えると、信繁は無言でしゃがみ込み、徳の脚に出来てしまった傷の傍を指でなぞった。
「傷がついている…。」
「ひゃっ!そ、そうですね!ごめんなさい!」
指でなぞったと思えば、そのまま下腿を掴み、上目遣いで徳を見つめてきたため、徳はなぜか謝罪してしまう。
(…っ!…ちょっと待ってっ!まさかそんなとこ舐めたりしないよねっ!?)
羞恥で混乱しているうちに、気づけば結ばれていた徳の裾は信繁によってほどかれ、衣服が整えられていた。
「…はぁ…。」
信繁がため息とともに立ち上がる。徳はそれに合わせて視線が下から上に上がった。徳の恥ずかしい考えは杞憂だったようだ。しかし、信繁の何を考えているのか分からない瞳は未だ徳を射抜いている。緊張するが、なぜか逸らしたくも逸らせない。
「……頼むから、あまり無防備になるな。危機感を持ってくれ…。」
「…っ!」
「あんたからは目が離せん…。」
そう言いながら次は徳の唇を指でなぞる信繁。その指使いがあまりに優しく、徳はなぜか泣きそうになる。
「今回のことは千代殿の言う通り忘れろ。」
「…は、はい…。」
「……行くぞ。」
そう言うと信繁は踵を返し佐助と千代のいる場所へと歩いていく。徳は力が抜け、背後の木に背を預けた。どくどくと胸の拍動が止まらない。信繁が触れたところが熱を帯びている。先ほど吉明とキスしてしまった時よりも、恥ずかしく、胸が苦しい。徳はこの気持ちの名前を知らない。知りたくない。
「…ダメよ徳…。私は一国の姫なんだから…。」
気持ちを整えて、徳も皆のいる場所へ小走りで向かった。
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「えー!徳、もう行っちゃうのー!?」
相変わらず日差しは強く照り付ける。蝉たちが今日も一層元気に鳴き声をあげている真田屋敷で、二郎坊の声が響いた。
「いや、ここは俺の屋敷だが…。」
「まだここに居てよー!一緒に居ようよー!」
「だから、俺の屋敷だ…。」
陰陽師との一件があって3日後、敦賀城から便りが来た。吉継が心配していることや、皆が待っているという旨を伝える文だ。ここにも長居しすぎた。そろそろ城へ帰ることを伝えると、二郎坊が引き留めてくれる。
「はは…。でも、もうここでお世話になる理由もなくなっちゃたし、みんなも心配してるから…。」
「えー…。信繁も引き留めてよー!」
「…俺に引き留める権利はない。吉継殿が心配しているんだ。戻った方がいい。」
「…そうですよね…。…本当に、信繁様と佐助さんにはお世話になりました。ぜひお礼をさせてください。」
信繁は引き留めないだろうとわかっていたものの、徳は少しショックを受ける自分に気づく。しかし、それを無視して話を進める。
「別によい…。大したことは出来なかったし。」
「そうだよー。姫さんいて俺らも楽しかったし。」
「ダメです!ぜひお礼を!」
「わたくしからも、お願いしまする!きっと吉継様もお二人にお礼をと申されるかと思いますぞ!」
「だがなぁ…。」
信繁が徳と千代の二人を交互に見る。二人ともきらきらと目を輝かせ『絶対にお礼をしたい』という意思がまぶしく伝わってくる。
「……………じゃあ、いつか敦賀城の風呂に入ってみたい…。」
根負けしたように信繁はぼそっと呟いた。
「…へ?お風呂ですか?」
「温泉を引いているんだろう?」
「あー、それいいね。」
「なるほど!承知いたしました!敦賀城の風呂はこれはもう言葉で自慢するに足りない素晴らしいものでして…――」
「――え、また、会えるの…?」
千代が城の風呂自慢をしている最中、徳は心で思った言葉がぽろっと口から出てしまった。
皆の視線が徳へ向く。
「あ!いや!あの、違くてですねっ!」
口に出したつもりはなかったのに、一気に静まり視線を感じた徳は、自身の失敗を悟る。言い訳をするにもどういえば良いか分からない。
「――なんだ、会わないつもりでいたのか?」
「へ…?」
信繁が小首を傾げ不思議そうに聞いてくる。
「摂津国から越前国も越前国から俺の故郷である信濃国も果てしなく遠いわけではない。会おうと思えば会える。それとも、大谷の姫はもう会う気はなかったのか?」
「なっ違ッ!」
「なら、会いに行くさ。」
「っ…。………はい。」
笑顔で述べる信繁に、徳は先ほど萎んだ気持ちが今度は温かくなる。
「俺も呼んでくれよな。俺だって今回役に立ったぜ。」
「お前居なくても何とかなったよ。」
「んだと!猿飛この野郎!役に立ってただろ!」
「いや、居ても居なくても変わんなかった。」
「というか、なぜお前はまだここに居るんだ。」
急に話に乱入してきた相変わらず図々しくて自由奔放な才蔵。徳はなんだかんだ皆才蔵とも仲良くなったように思う。
「才蔵さんはどうするんですか?」
「あぁ?…まぁ、そろそろ依頼が来そうだから、一回里へ戻るわ。」
「そうなの?早く帰りなよ。」
「早く帰れ。」
「だから、お前ら俺に冷たくねぇか!?」
仲良くなった…、気がする…。
「俺も一緒に越前へ行く。」
急に発せられた太郎坊の声に、再び皆がシーンとなり、今度は視線が太郎坊へ集中する。
「え…、なんで?」
思わず徳は聞いてしまったが、太郎坊はそれが不快だったのか徳を睨んだ。
「なんだよ。行っちゃいけないのかよ。」
「いや、そういうわけじゃないんだけど…。」
「太郎坊が行くならおれも行く!」
二郎坊が嬉しそうに挙手をしながら同行に賛同した。癒しだ。
「…まあ、いいんじゃないか?女子二人で帰るよりは。」
信繁の発言はもっともだが、急にどうしたのかと疑問に思ってしまう。しかし、太郎坊は母のことを知っていたのだ。そのことについて聞くも教えてくれないため、何か考えがあるのだろうと徳は思い直した。
「じゃあ、一緒にお願いします。」
「あぁ…。」
◇◇◇◇
明朝早く、皆が真田屋敷の前に集まっていた。小鳥が囀り始め、一日の始まりを教えてくれる。
別れにはあまりに清々しい朝だが、悲しい気分でも無いためちょうど良かったのかもしれない。
「…じゃあ、帰ります。本当にありがとうございました。」
「お世話になりました!…佐助兄さま、文を出します…。」
「はいよ。…会えてよかったよ千代。」
猿飛兄妹が別れの抱擁を交わしている。この二人は初めのうちはぎこちなかったも今じゃとても仲が良い。見ていてうらやましい限りだ。
「は!俺はもう行くぜ。世話になったな。」
「「早く帰れ。」」
「ほんっと、腹立つ兄妹だぜっ!――じゃあな!」
抱擁しながら才蔵に冷たい発言をする佐助と千代に、怒鳴りながらも才蔵はシュッといなくなってしまった。勝手に居座っていたものの思ったよりも味気ない別れだ。自由奔放な人物なので、それもそれで才蔵らしいか、と才蔵が消えた場所を徳が眺めていると、頭の上に何かがポンッと乗った。
「気を付けて帰れよ。」
「…はい。」
信繁に頭を撫でられながら徳は信繁を見上げる。朝日で輝くまぶしい青年。誰の導きでこの場所に落ちてしまったのかは未だ分からないが、この出会いは徳にとって素晴らしいものであった。
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