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七話
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しおりを挟む僕が美術部に入ったのは、卓に誘われたのがきっかけだった。
卓は入学した頃から美術部に入っているらしく、部活を決められないでいる僕に美術部を勧めた。正直、どの部活にも入りたいとは思わなかった。今でもあまり変わったような気はしていないけれど、あの頃の僕はとくに、何についてもとにかく無気力だった。やりたいこともなければ、何をするにもそれをやることにどんな意味があるのかを考えていた。
しかし、三か月間の仮入部はきちんとした理由を申請しない限りは全員必須で、入部希望用紙の提出期限は容赦なく迫ってくる。
そんな僕を、卓は美術部に誘ったのだ。
美術なんて授業以外で触れたことのない僕はその誘いに戸惑ったけれど、「先生がめちゃくちゃゆるい部活で、名前を置いてあるだけの人が多い」という言葉に釣られ、僕は無事に入部希望用紙を提出することになった。
それから二か月ほどが経った日のことだ。七月前半、雨の日だった。
その日の放課後は、生徒指導室で説教をされた。何日も続けて遅刻をしすぎたせいだ。生徒指導担当の教師は椅子に座ったまま、呼び出した僕を見上げた。何か理由があるのか、と質される。駅のベンチで訳もなく電車を何本も見送っていた、だなんて口には出せなかったので、僕は咄嗟に「すみません」と言った。
それまで何度か同じように呼び出されたことがあったけれど、黙っているとさらに叱られるのだ。何か言ったらどうなんだ、と。
どうせ遅刻をした理由を正直に答えても、適当に見繕っても、叱られることはわかっている。黙っていても埒が明かない。だからとりあえず謝ることにした。
教師は少し眉を上げたあと、「次は親に連絡するぞ」と溜め息を吐いただけで、その日の説教は短かった。
指導室を出たあと、僕は美術室に向かった。
すぐに帰る気にもなれなかったし、美術部は活動日ではないから教室には誰もいないと思ったからだ。それに、雨が音を立てて降っていたので、少し弱まるのを待ってみようとも思った。
美術室には電気が点いていなかったけれど、ドアに手をかけると鍵はかかっていなかった。篠崎先生は、生徒よりも施錠に意識がない。また開けっ放しにしてるのか、と思ったけれど、違った。
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