魔王を倒すと用済みとされ、捨てられた勇者 〜2度目の転移で復讐を誓う〜

黒猫

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プロローグ

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「キリュウ!」

「おうっ!」

 勇者として転移してきて3年、ようやく討伐対象の魔王を追い詰めることに成功したキリュウ

魔王討伐のパーティは大島桐生キリュウジャラン・ハンマートジャラン聖女兼王女のサーナ・アラビスサーナタンクのメギア・マーズメギアの4人だ

「雷電圧ッ!!!!」

 「グァーーー!」

 キリュウが魔法を使い、遂に魔王を討伐した

「やった?やったぞ!!!」

 俺は両手を挙げ、喜ぶ。他のメンバーも喜び、3年の長旅を終え、城に帰る
 この国の名前はバーノン王国、世界で最も貧しい国だったが、勇者の誕生により、文明は大きく栄えた
 国はおよそ3カ国ほどしかない

 学生の転移者だが、転生の前の世界はあまり気に入っておらず、魔王を討伐すると引き換えに永住権を貰えると言うことになっていた
 
ーー城ーー

「陛下!魔王を討伐しました!」

 バーノン王国の国王の名前はマート・アラビス。この世界では色々とお世話になっていた

「そうか。よくやった下がってよいぞ」

「はい?」

「だから、下がってよいぞ」

 マートは少し喜んだが、面倒くさそうにシッシと手を払う
 普段ならほんとか!?と大声を上げて喜び、報酬を与えるのがいつもの流れだった。しかも魔王を倒すとなると大喜びのはずだ
 しかし、普段とは違う素っ気ない態度を取る

(機嫌が悪いのかな……?)

 叔父のような存在で、いつも優しくしてくれたマートが自分のことを嫌うなど考えることができずに、機嫌が悪いと解釈し、外に出ようとする

「あっ!サーナ!そういえば魔王を討伐すると、結婚だったよな!いつにする?」

 サーナとは長い間、たくさんデートしたりして、両思いだった。もちろん直接好きと言う言葉も聞いた
 サーナは王女だと言うこともあり、王国一の美女だった。そのため、国民やパーティメンバーから羨ましがられていた

「…………まぁ、後でね」

「?」

 サーナも素っ気ない態度を取る。そしていつの間にか他のメンバーもどこかに消えていた

(なんだよ…みんな何か冷たくないか?)

 何も分からず、とりあえず自分の家に戻り、寝ることにした

 ーー深夜2時どこからかガサガサっと音がする
 それを聞いたキリュウは勇者として潜り抜けた修羅場のおかげで、直ぐに警戒態勢を取る

ガサッ!!!

 ナイフを持ち、フードを被った何者かが、キリュウを刺そうと突撃してくる

(暗くてよく見えないが…ここかな?)

 ナイフを避け、フードの男を取り押さえる

「誰だ………えっ!」

 フードを取ると、パーティメンバーの一人、ジャラン・ハンマートだと言うことが分かった

「くそっ…失敗した………!!」

 ジャランは煙玉を投げ、キリュウの視界を遮り、窓から飛び降り、逃走する

 ジャランとは転生した時からの長い付き合いで、気が合ってよく一緒にトレーニングをしていた
 「俺達はずっと親友だな」と笑顔で言ってくれ、キリュウもその気でいた
 しかし、何故か俺を暗殺しようとしてきたのだ

(なんなんだよ!一体!)

 その後、キリュウは眠れなくなり、朝を迎える

 時計の針が午前9時を刺した瞬間、キリュウは城のどこかに飛ばされる

「!?」

 そこには国王のマート、王女のサーナ、顔に傷があるジャラン、そして騎士団長のナラバー・ヒリュウ、王国の頭脳派魔法使いのプログ・ハラマーが居た

「ジャラン!」

 俺が声を上げると、マートはシーっと人差し指を唇の前に出し、モニターを指す
 そのモニターには俺が魔王討伐した時の動画が映されていた

(あっ!分かった!この動画を見せながら俺の良いところを褒めるサプライズだな?なーんだ!間際らしいマネするなよ~)

 しかし、この動画のおかしい点を見つける
 キリュウの姿が全く映っていない。少し画面が動くと、キリュウが倒れた姿が映されており、魔王討伐には居なかったはずのナラバーが映っていた
 そして、魔王を討伐したのはナラバーと言うことになっていた

「なんだよこれ!?プログ!お前だな?お前があの動画を捏造させたんだろ!?」

 プログは王国最強の魔法使いだ。カメラの魔法や、人を造り出したりできる
 おそらくカメラ魔法を応用し、キリュウとナラバーを入れ替えたのだろう

「ははっ!よく分かりましたね。クックック…実はこの動画、全世界に流しております 」

「はっ!?」

ナラバーは眼鏡をクイッと上げて説明する

「つまり、全世界は勇者キリュウは死亡し、バーノン王国は勇者の力を頼らずに魔王を討伐したと認識します。もちろん国民もです」

 ナラバーは悪い笑みを浮かべる。他4名もニヤッと笑う
 勇者がやられたのに魔王を討伐できたと全世界が知ると、バーノン王国は今より更に優遇され、尊敬される
 今まで、どこか勇者が居るから発展してるんだろ…と思われていたのをこの動画で覆せる

「そして、お前は邪魔だから死んでもらうぞ」

「えっ!?」

 マートが今まで見たことない冷たい目でキリュウを見下す
 しかし、勇者として力には自身があるキリュウは戦闘態勢を取る

「俺は勇者だぞ!?お前らなんかに負けるか!」

 さっきまで優しい叔父、愛しい王女、最高の親友、気の合う団長、魔法を教えてくれた恩人から遂に敵とみなした

五月蝿いうるさい

「!?」

 何者かが、自分の背後をナイフでグサリと刺した

(俺に気配を気付かれずに…!?誰だ!?)

 俺は何者かを確認するために、顔を見ようとしたが目がボヤけて確認できなかった
 しかし、影を使う奴だと言うことが分かった

 他4名の笑い声が部屋全体に響くーー
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