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忌み嫌われた魔女は、押し付けられて育てた王子によって、舞踏会に呼び出される
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「さて、どうしよう」
私――魔女のステラは、腕の中にいる赤子に視線を落とす。
赤子は私の金色の髪か瞳に触れたいのか、両手を伸ばしてきている。
(金色の髪と紫色の瞳の、男の子。明らかに、王家の血が流れているわ)
レイモンドという名のこの赤子は、さきほどやってきた壮年の男性に、金貨が大量に入った革袋と一緒に押し付けられた。
迎えに来ると言っていたが、果たして本当に来るのだろうか。男には、死を覚悟した者特有の空気が漂っていた。
(忌むべき魔女に子どもを預けるなんて、訳ありのようね)
王族や貴族が私の力を頼るために尋ねてくることがあるが、人間たちから疎まれている存在だ。
魔法という特異な力を持つし、不老長寿な私たち魔女のことが、怖いのだ。
「いつ頃まで一緒に居るのかわからないけれど、姿が変わらない私のことを、いつか気味悪がるだろうね」
そうわかっていても、レイモンドの境遇が可哀想だから、私は彼を大切に育てた。
「ステラ、僕が大きくなったら、結婚してね」
「ええ、いいわよ」
レイモンドは子ガモのように私の後ろをついてくる、とてもかわいい美少年へと育った。
しかし、彼は十五歳になると、私と距離をとるようになり、ある日、突然姿を消した。
――それから三年後。
私は、王城の中にある大広間にいた。
新しい国王が、舞踏会の招待状を送ってきたのだ。
私は、人々が左右に避けてできた一本道を歩いて、大広間の奥にある玉座へと進んでいる。
その先にいるのは、戴冠したレイモンドだ。
彼は固い面持ちで、私をみおろしている。
彼は、十八年前に当時の国王夫妻と一緒に殺されたと言われていた、この国の王子だった。
しかし、半年前にクーデターを起こして、国王となった。
(舞踏会で断罪される悪役令嬢のような気分だわ)
知り合いの魔女が貸してくれた恋愛小説の一場面を思い出した。
(レイモンドもやっぱり、魔女が疎ましいのね)
鼻の奥が、ツンと痛む。
魔女の私を、追放するつもりなのだろうか。
目を閉じて、断罪のときを待つ。
「――この者は、命を狙われていた私を守り、育ててくれた恩人だ」
レイモンドの言葉に、場内がざわりと騒がしくなる。
「魔女は悪辣な性格だと疎まれていたが、それはただの噂だ。よって、私は国中の魔女を保護する」
そして、とレイモンドは言葉を続ける。
表情が、途端に柔らかくなった。
「ステラ、どうか私と結婚してくれませんか?」
私は涙を拭いて、彼に微笑む。
「ええ、いいわよ」
***あとがき***
はじめまして!お読みいただきありがとうございます。
いつか書きたかった、魔女に育てられた少年のお話を、やっと描けてルンルンしています。
短いお話ですが、お楽しみいただけましたでしょうか?
また、もしよろしければ、いいね・感想などで応援いただけますと嬉しいです…!
それでは、新しい物語の世界で、またお会いしましょう。
私――魔女のステラは、腕の中にいる赤子に視線を落とす。
赤子は私の金色の髪か瞳に触れたいのか、両手を伸ばしてきている。
(金色の髪と紫色の瞳の、男の子。明らかに、王家の血が流れているわ)
レイモンドという名のこの赤子は、さきほどやってきた壮年の男性に、金貨が大量に入った革袋と一緒に押し付けられた。
迎えに来ると言っていたが、果たして本当に来るのだろうか。男には、死を覚悟した者特有の空気が漂っていた。
(忌むべき魔女に子どもを預けるなんて、訳ありのようね)
王族や貴族が私の力を頼るために尋ねてくることがあるが、人間たちから疎まれている存在だ。
魔法という特異な力を持つし、不老長寿な私たち魔女のことが、怖いのだ。
「いつ頃まで一緒に居るのかわからないけれど、姿が変わらない私のことを、いつか気味悪がるだろうね」
そうわかっていても、レイモンドの境遇が可哀想だから、私は彼を大切に育てた。
「ステラ、僕が大きくなったら、結婚してね」
「ええ、いいわよ」
レイモンドは子ガモのように私の後ろをついてくる、とてもかわいい美少年へと育った。
しかし、彼は十五歳になると、私と距離をとるようになり、ある日、突然姿を消した。
――それから三年後。
私は、王城の中にある大広間にいた。
新しい国王が、舞踏会の招待状を送ってきたのだ。
私は、人々が左右に避けてできた一本道を歩いて、大広間の奥にある玉座へと進んでいる。
その先にいるのは、戴冠したレイモンドだ。
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彼は、十八年前に当時の国王夫妻と一緒に殺されたと言われていた、この国の王子だった。
しかし、半年前にクーデターを起こして、国王となった。
(舞踏会で断罪される悪役令嬢のような気分だわ)
知り合いの魔女が貸してくれた恋愛小説の一場面を思い出した。
(レイモンドもやっぱり、魔女が疎ましいのね)
鼻の奥が、ツンと痛む。
魔女の私を、追放するつもりなのだろうか。
目を閉じて、断罪のときを待つ。
「――この者は、命を狙われていた私を守り、育ててくれた恩人だ」
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「魔女は悪辣な性格だと疎まれていたが、それはただの噂だ。よって、私は国中の魔女を保護する」
そして、とレイモンドは言葉を続ける。
表情が、途端に柔らかくなった。
「ステラ、どうか私と結婚してくれませんか?」
私は涙を拭いて、彼に微笑む。
「ええ、いいわよ」
***あとがき***
はじめまして!お読みいただきありがとうございます。
いつか書きたかった、魔女に育てられた少年のお話を、やっと描けてルンルンしています。
短いお話ですが、お楽しみいただけましたでしょうか?
また、もしよろしければ、いいね・感想などで応援いただけますと嬉しいです…!
それでは、新しい物語の世界で、またお会いしましょう。
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