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11.オルブライト侯爵の謀略
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王都が寝静まった夜半のこと。
仕事を終えたパトリスは寝台の上で何度も寝返りを打っては溜息をついた。なかなか眠つけないまま、もう一時間は経ってしまったような気がする。
目を閉じても頭が冴えたまま。
頭の中ではレイチェルの言葉が耐えず反芻して止まない。
魔法を使えない自分が魔法騎士として名声を得たブラッドと釣り合うわけがない。
そんなこと、自分が一番よくわかっている。しかし早急に恋心に区切りをつけられるかどうかは別の話。
ゆっくりとその想いを消化して前に進もうとしていたのに、その柔らかな想いを土足で踏み込んでくるなんてあんまりではないか。
悲しみと怒りと不安が胸の中に渦巻き、パトリスの心を蝕んでいる。
「……外の空気に当たろうかしら」
春の夜はまだ寒い。
パトリスは淡い小麦色のショールを羽織ると、部屋を出た。
外では三日月が玲瓏と輝いている。
庭の花は蕾を閉じて夢を見ているものもいれば、宵闇の中でも張り切って咲き誇るものもいる。
パトリスは夜露に濡れた芝生を踏み分け、薄紅色の薔薇たちが咲く生垣の前でしゃがんだ。
薔薇たちは宵闇の中でほんのりと光を帯びているように見える。
そのうちの一輪に、そっと話しかけた。
「ここでの仕事が終わったら、この恋を忘れるわ」
目の奥がじんわりと熱くなる。つんと鼻が痛くなるけれど、パトリスは言葉を続けた。
「忘れるために、街に出てひとりで生活することにしたの。自分の力で生きていける強さを身につけられるようになるまではブラッドに会わないようにするわ。そうしたらいつか、ブラッドが結婚して妻と一緒にいるとことを見ても立ち直れると思うから……」
ぽたり、と冷たい夜風に冷やされた涙が地面に落ちる。
パトリスは指で目元を拭うが、涙はとめどなく出てくる。
「でも今は、ちっとも大丈夫じゃないのよ」
彼を想ってきた時間は長く、心の一部であるかのようにずっといるのだ。
それを取り出してなかったことにするなんて、心の一部を剥ぎ取るのと同じではないか。
パトリスの心が、傷つけないでと叫ぶ。
それでもパトリス自身がその心に爪を立てて剥がそうとしている。
行き場のない悲しみが喉を締め付ける。
パトリスは嗚咽を漏らしてすすり泣いた。
夜の静寂だけが彼女を優しく包む。
しかしパトリスの背後で、木の枝が揺れて葉が擦れ合う音がした。
「――パトリス?」
次いで、聞き慣れた声が自分の名前を呼ぶ。
声がした方を振り返ると、ブラッドが薔薇のアーチに手をついて立っているではないか。
「ブラッド……」
パトリスは自分の口を突いて出た言葉に慌て、口元を両手で覆った。それでもしゃっくりが止まらず、零れる声がブラッドに自分の居場所を知らせてしまう。
ブラッドは声を辿って、パトリスがいる方向に顔を向ける。
「やはりパトリスなのか……どうしてここに? ――それよりも、泣いているのかい?」
どこまでブラッドに聞かれてしまったのだろうか。
焦るあまり考えがまとまらない。
「パトリス、すまないが目が見えないんだ。お願いだから声を聞かせてくれ」
いつもは慣れない足取りで慎重に歩くのに、今は足がもつれるのもお構いなしに前に進む。
誤ってパトリスを踏みつけてしまわないよう、伸ばした手が宙をかく。
パトリスはやや覚束ない足取りで近づくブラッドを案じ、同じように手を伸ばした。
「ブラッド、ここにいるわ」
その声に導かれるようにブラッドの手が動き――二人の指先が触れ合う。
そうしてお互いを確かめ合うように、ゆっくりと指を交差させた。
ブラッドはパトリスの目の前にしゃがむと、空いている方の手を彷徨わせてパトリスの髪に触れる。そこからゆっくりと上へと動かし、パトリスの頭に乗せた。
まるでパトリスをあやすように、ぽんぽんと優しく撫でる。
「パトリス、もう大丈夫だよ。なにがあったのか言ってごらん?」
落ち着いた声音に、優しい言葉。
子どもの頃にもかけてくれた懐かしい言葉に、パトリスはきゅっと胸が軋むのを感じた。
「ブラッドが来てくれたからもう大丈夫よ」
「それならいいけど……それにしても、パトリスがうちの庭にいるなんて……夢でも見ているのかな?」
ブラッドが自分の頬を抓ろうと手を動かすと、パトリスがやんわりとその手を押さえて止めた。
「そう、これは夢よ。ブラッドに会いたくて、夢に出てきたの」
騙すことになって申し訳ないけれど、そうするしかない。
少しだけブラッドと話をして、その後はどこかに隠れ、ブラッドがいなくなるまでやり過ごそう。
ブラッドは魔力で人の気配を察しているけれど、魔力がない自分なら気配を隠し通せるはずだ。
「夢でもようやく会えて嬉しいよ。現実の世界でも会いに行くから、待っていてね?」
「……ええ」
逡巡した後、彼に嘘をついた。
ブラッドが会いたがってくれるのは嬉しいけれど、彼に会えば絶対にこの恋を終わらせられない。
「実は、魔法騎士から教官になったんだ。これからはパトリスに会える時間が増えるよ。だからグランヴィル伯爵を説得してパトリスに会いに行くつもりだ。それに、パトリスに渡したい物があるんだ。もしよかったら受け取ってほしい」
「渡したい物?」
「この前、街に出た時にパトリスに似合いそうな髪飾りを見つけたんだ。……といっても、目が見えないから付き添ってもらったメイドのリズさんに外観を聞いて、似合いそうだと思ったんだけど……」
街に出て見つけた髪飾りとは、きっとあの銀細工の小花をあしらったのバレッタのことだ。
合点するや否や、パトリスは頬を赤くした。
鼓動が駆け足になる。
まさかあれは自分への贈り物だったなんて。
(大切な人に贈りたいって言っていたけど、その大切な人って、私だったの?)
もちろん妹弟子として好ましく思ってくれているのはわかっている。しかし贈り物を選んでいた時のブラッドは――まるでその相手に恋焦がれているかのようだった。
パトリスは口をパクパクと開けたり閉じたりするばかりで、なにも言葉を紡げない。
「パトリス、お願いだからもう遠くに行かないで。ぜったいに君を守るから、だから俺の前から消えないで――」
愛する人もまた自分を愛してくれているなんて、それこそ夢でも見ているのだろうか。
甘い感情が心を溶かす。
しかしパトリスは首を横に振ると、冷静に自分に言い聞かせた。
(受け取ってはダメよ。だって私は、ブラッドに相応しくないもの)
だけど今の一瞬だけは、彼の想いを享受したい。
「ブラッド、ごめんなさい」
小さく謝ると、彼の唇にそっと自分の唇を触れさせる。
ブラッドは息も忘れ、パトリスからもたらされる温かな感覚を受けとめた。
キスなんて一度もした事がなかったパトリスは触れさせるだけで精いっぱいで、気恥ずかしさのあまりすぐに身を引いた。
しかし逞しい腕と大きな掌が彼女を逃がさず、気付くとまた温かく柔らかなものが唇に触れている。
不意打ちに驚き目を見開いたパトリスは、耳の奥でなにかがガシャンと音を立てて砕ける音を聞いた。
しかし慣れないキスを受けとめるので精一杯なパトリスは、聞こえた音すら忘れてしまった。
翻弄されながらも、ブラッドの目が治るようにと祈る。
それがパトリスなりの餞だった。
離れられなくなる前に離れようとしたその時、淡い光が膜のようにパトリスとブラッドを包む。
「いったい、なにが起こったの?」
ぱちくりと目を瞬かせた間に光は消えた。
自分の手を見つめて何か変化はないかと観察していたパトリスは、不意に目の前から視線を感じた。
見上げると、ブラッドの新緑のような緑色の瞳がしっかりと自分を映しているではないか。
「パトリスが見えている……もしかして、視力が戻った……?」
ブラッドは自分の頬を抓ると、「痛い」と小さく零す。
「どうやら夢ではないようだけど……それに、どうしてパトリスの髪の色がリズさんと同じ栗色になっているのかな? パトリス、事情を説明してくれるかい?」
いつもは優しい兄弟子の声音に怒りが滲んでいる。
パトリスは小さく震えた。
騙してしまったのだから、怒られても仕方がない。
「……ごめんなさい。ブラッドのことが心配で、私からメイドとして一緒にいたいと旦那様に言って――」
「わーっ、パトリスは謝らないで? パトリスには怒っていないよ。師匠に怒っているんだ。全ての元凶は師匠だってわかっているから」
ブラッドはしゅんとするパトリスに弁明した。
あの師匠、絶対に許さないと心に誓いながら。
パトリスはこれまでのことを全てブラッドに話した。
勘当されて屋敷を追い出されたこと。
アンブローズに拾われて彼の屋敷でメイドとして働いていたこと。
そして、ブラッドが視力を失ったと聞いて、自分から立候補してリズとしてそばにいたこと。
「……なるほどね。師匠め……パトリスには目のことを言わないでほしいと頼んでいたのに、最初から知らせていたのか……」
「ど、どうして私には知られたくなかったの?」
「心配してくれるからに決まっているだろう? パトリスに心配かけさせたくなかったんだ」
ブラッドは眉尻を下げると、パトリスの頭をまた撫でる。
労わるような手が心地よい。しかし先ほど彼と交わしたキスを思い出してしまい、パトリスは自分の頬が熱くなるのを感じた。
「それにしても、どうしてブラッドの目が見えるようになったのかしら?」
「……きっと、パトリスのおかげだよ」
「私……?」
「パトリス、実はオルブライト侯爵夫人からさっき聞いたばかりだったんだけど――君は魔法が使えるんだ。それも、とてもすごい魔法をね。普通の人では治せないような怪我や病を治せる力を持っている。だけどその力を持っていることが公になると、一部のよくない魔法使いに狙われる可能性があるから、君のお母さんは魔法を使えないようにした。その魔法が解けて――無意識のうちに俺の目を治癒してくれたんだ」
「お母様のかけた魔法が急に解けたのね」
「……違うよ。俺たちで解いたんだ」
ブラッドは照れくさそうにそう言うと、パトリスの唇をすっと指で撫でた。
「その魔法はね、愛する人とのキスで解けるから」
「……えっ?!」
パトリスの顔が林檎のように真っ赤になる。
ブラッドはその様子を愛おしそうに見つめた。
「このままパトリスと話していたいけど……まずはプレストン伯爵らに備えないといけないな。きっとパトリスが発動させた魔力を感じ取って、こちらを探ろうとしているに違いない」
ブラッドはやや名残惜しそうにそう言うと、パトリスを連れて屋敷に戻った。屋敷の中に入ると、扉や窓に手を翳し、念入りに魔法をかける。
「それはどんな魔法なの?」
「防御魔法だよ。あと、解錠する魔法のみ無効化する術式を組み合わせた」
「そんなこともできるのね」
すると二人の前にシレンスが現れる。
もうすっかり寝ているものだと思っていたのに、彼はきっちりと執事服に身を包んでいるではないか。
シレンスはパトリスとブラッドを交互に見ると、ひとりで納得したように首肯した。
その表情は少し柔らかく、口角は微かに上を向いている。
「ホリングワース男爵、視力が戻ったようでなによりです。そして、パトリスと再会できたのですね」
平常運転なシレンスの言葉に、ブラッドは少し不服そうに眉根を寄せる。
「シレンスさんはリズさんの正体を知っていたのですね?」
「はい。正体を隠しているとはいえプレストン伯爵から狙われる可能性があるとして、パトリスを守るよう旦那様から仰せつかっております。ちなみに、パトリスが本当は魔法が使えることも、魔法を封印されていることも、旦那様から聞いていました」
「えっ……シレンスさんは知っていたんですか?」
パトリスは愕然とする。
自分は今まで魔法を使えないと思い、何度も絶望した。そのせいで恋だって諦めようとしたのだ。
「ああ、師匠にすっかりしてやられたよ」
ブラッドは恨めし気に呟いた。
「旦那様になにか考えがあってのことでしょう。それにしても、先ほど庭から感じた大きな魔力はパトリスのものですね。きっとあの魔力に反応したプレストン伯爵らが探りを入れてくるはずです。対策を取りましょう」
「そうだね。当初の予定ではこの屋敷は彼らの目を欺くための拠点の一つに過ぎなかったけど、今は本拠地と言っても変わらない。彼らの狙いはパトリスだからね。……ひとまず窓と扉には防御魔法をかけたから、簡単には突破できないはずだ。あとは庭の草木に少し手伝ってもらったり、庭に罠を用意しようか」
ブラッドとシレンスは二人で屋敷中に魔法をかけた。
その間パトリスは、二人のために夜食やお茶を用意した。
「私も二人のように魔法が使えるのよね?」
屋敷中に魔法をかけ終わったブラッドに、パトリスが躊躇いがちに問う。
「うん、もう使えるよ。だけどしばらくはコントロールできるように練習した方がいいから、一緒に練習しようね」
「じゃあ私、諦めなくていいのね」
パトリスはうっすらと目に涙を浮かべて喜ぶ。
「諦めるって、なにを?」
「ブラッドを好きでいること」
「えっ、絶対に諦めないでね?! もしもパトリスが諦めようとしたら、全力で追いかけて止めるから」
ブラッドが真面目腐った顔でそう宣言すると、二人は顔を見合わせた笑った。
それからパトリスたちは一階にある居間で過ごした。
パトリスはブラッドの勧めで仮眠をとった。
明けた空にまだ星が残る頃、屋敷の門の前に一台の馬車が停まったことで、平和な時間は幕を閉じた。
パトリスたちは窓を一つだけ開けて、門の外にある馬車を観察する。
「ホリングワース男爵、あの馬車はいかがしますか?」
「放っておきましょう。今日は師匠の言いつけ通り、なにがあっても屋敷から出ない方がいいです」
静かに見守る時間は長く感じられた。時計の針がコチコチと動く音が、やけに大きく感じられる。
やがて馬車の扉が開き、中から人が出てきた。
パトリスはその人物を見て、きょとんと首を傾げる。
「旦那様がどうしてこんな時間に?」
「いや、あれは師匠じゃないよ。姿変えの魔法で変装している偽物だ」
ブラッドにそう言われても、パトリスには偽物だとわからない。
容姿も服装も全く同じなのだ。
しかしアンブローズのもとで長年過ごしてきたブラッドの目には全く以て別人に映っていた。
たしかに表情も歩き方もほとんど同じだが、同じに見えるように似せているのであって、本人ではないとわかる。
上手く擬態した何者かに過ぎないのだ。
「ブラッド、いるんだろう? 門を開けてくれないか?」
男はブラッドの方に顔を向けると。アンブローズと同じ声でブラッドを呼ぶ。
ブラッドたちが黙ってその様子を眺めていると、男は更に言葉を続けた。
「昨夜この屋敷から強い魔力を感じ取ったのだが、なにか知っているかい?」
「気のせいでしょう。昨夜は特に何も起こりませんでしたよ」
「そんなはずはない。確かにこの場所から発した魔力だった。さあ、門を開けて入れてくれ。調べさせてくれないか?」
「なぜですか?」
「なぜって……可愛い弟子の屋敷で起こったことは調べておきたいだろう?」
ブラッドは男の言葉に笑った。
「それでも無理ですよ。だって、師匠が言ったではありませんか。誰が来ても出てはいけない。たとえ、その相手が私を名乗っていても、と」
「……ああ、なるほど。そう言っていたのか。オルブライト侯爵め。つくづく用心深くて目障りな男だ」
男はアンブローズの顔で舌打ちすると、門に手を伸ばす。すると庭の草木が急激に成長し、門に絡みついて固定してしまう。
「ええい、煩わしい! お前たちも出て来い!」
男が叫ぶと、馬車の中から従者らしい服装の男が二人出てくる。
門が開かないとわかるや否や、二人は魔法で空を飛ぶ。するとブラッドが待ち構えていましたと言わんばかりに魔法の呪文を詠唱し、二人の動きを止めた。
男たちはあっという間に捕らえられ、庭の木に括りつけられる。
それから日が昇るまで何度かトレヴァーの手下が襲来したが、全てブラッドとシレンスの手によって捕らえられた。
やがて朝日が昇ると、ブラッドの同僚たちが現れて犯人たちを連行する。
彼らと入れ違いで、オルブライト侯爵家の馬車がやってきた。
馬車から出てきたのは、アンブローズとレイチェルだ。
「やれやれ、予想より早く二人がくっついたから計画が狂ってしまったではないか」
そう言って門の柵越しから手を振るアンブローズに、ブラッドは絶対零度の眼差しを向ける。
「予想より早くくっつく……? やはり師匠は俺たちを掌の上で転がしていたんですね。パトリスがオルブライト侯爵家でメイドをしていたのに教えてくれなかったし、俺の目のことをパトリスに話さないでほしいと言ったのに早々に伝えているなんてあんまりです」
「人聞きが悪いなぁ。私だって二人を騙すようになって心苦しいと思ったけど、二人のためを想ってやったんだよ?」
アンブローズは悪びれる様子がない。
「それにしても、お疲れ様。計画は狂ったものの、上手くいってすぐに片付いたよ。グランヴィル伯爵家も襲撃してきた犯人たちは一人残らずとらえたようだ。グランヴィル伯爵が張り切りすぎて、犯人はみな気絶したらしいけど」
アンブローズの話によると、オルブライト侯爵家とグランヴィル伯爵のタウンハウスおよび領主邸に忍び込んだ者たちは全員捕縛され、そのまま王立騎士団の騎士たちを呼んで連行させた。
主犯のトレヴァーはグランヴィル伯爵家の領主邸を襲撃した犯人のうちの一人で、屋敷にいた使用人たちの総攻撃で気絶したらしい。
プレストン伯爵家は騎士たちに包囲されており、トレヴァーたちの裁判が終わるまで包囲網は解かれないそうだ。
「終わりよければすべてよし、だよね?」
状況を話し終えたアンブローズは、睨みつけてくるブラッドと頬を膨らませて怒っているパトリスに同意を求める。
「よくありません! 師匠が約束を破ったせいで、パトリスに心配をかけてしまったじゃないですか。そうなるから言わないよう頼みましたよね?!」
「どうして私が本当は魔法が使えると教えてくれなかったんですか?! ずっと悩んでいたんですよ?」
二人の愛弟子に問い質されるアンブローズはたじたじだ。
「私も悩んだんだよ? だけど色々な事情があったし……それに、それぞれに大きな障壁があった方が、早く二人がくっつくかなぁ~と思って……」
「だから俺たちを騙したんですか?」
「騙したのには違いないけど、君たちのためを想って……お願いだからブラッド、怖い顔をしないでよ」
たとえ尊敬する師であったとしても、約束を破った罪は重い。
アンブローズはブラッドの気迫にすっかり気圧される。
「レイチェル、あなたからもなにか言ってくれませんか?」
「因果応報だわ」
「うっ……、その通りですけど、もう少し助けてくれてもいいのでは?」
助けを求めようとしたレイチェルには早々に見捨てられてしまい、取りつく島もない。
「だけど……今世の妹も助けてくれてありがとう」
レイチェルは微笑むと、アンブローズを抱きしめた。
アンブローズはどきりとして一瞬だけ固まってしまったが、すぐにレイチェルを抱きしめ返す。その顔はこれまでになく幸せそうだった。
その後、レイチェルと一緒に父親と再会したパトリスは二人から謝罪を受けた。
パトリスはその謝罪を受け入れた。
これまで冷たく接してきたのは全てパトリスのためを想ってしていたことだとアンブローズから聞いていたため、二人の言葉を信じることにしたのだ。
しかしパトリスが負った心の傷や感じた寂しさをなかったことにはできない。
パトリスは彼らと名付け親であるアンブローズを交えて話し合った結果、籍をグランヴィル伯爵家においたままオルブライト侯爵家で過ごすことになった。
本音を言うと引き続きブラッドの屋敷で過ごしたかったのだが、父親とレイチェルに猛反対されてしまったのだ。
それからブラッドの屋敷では、オルブライト侯爵家から転職してきたシレンスと、ブラッドが新たに雇った彼の母親ほどの年齢の家政婦が働くことになった。
そうして事件が起きた一年後、パトリスはまたオルブライト侯爵家でレイチェル監修のもと、花嫁修業を受けている。
メイドとして働くかたわら、貴婦人としての極意を教わっているのだ。
そうなるに至るまで、決して平坦な道のりではなかった。
父親は養子を迎えるのを止めてパトリスを後継者にすると言い出し、ブラッドとの結婚を認めようとしなかった。
そのため、ブラッドは更に功績を上げなければならなかった。
愛する恋人のために懸命に任務をこなすブラッドの姿に貴婦人と令嬢――そして王妃までもが感銘を受け、彼女たちが国王に提案してブラッドとパトリスが婚姻するよう命令を下したのだ。
その一件にアンブローズも一枚噛んでいたことを、二人は後日知ることとなる。
「お姉様、少し休憩しましょう? 無理をなさるとお体に障ってしまいます」
温室で社交界の要人についての講義を受けていたパトリスは、躊躇いがちにそう切り出す。
レイチェルは小さく首を横に振りつつ、本人も無意識のうちに自身のお腹を撫でた。
「座ってあなたと話すくらい、なんてこともないわ」
「いいえ、春は気温の変化が激しいので、普通に過ごしていても疲れてしまうのですよ。だからこまめに休息をとるべきです!」
レイチェルのお腹には新しい命が宿っている。
アンブローズはレイチェルから懐妊を告げられた時、ボロボロと涙を零して喜び、一日中レイチェルにくっついて離れなかった。
そんな身重のレイチェルが温室で講義をすると言うや否や、パトリスはレイチェルにカーディガンを着せたりブランケットをかけたりと甲斐甲斐しく世話をする。
使用人たちは体にいいお茶や軽食を用意した。
一年前はレイチェルと使用人たちの関係性は最悪に近かったが、全てパトリスを想ってのことだと知って以来、彼女によくしている。
「お姉様になにかあったら泣きますからね!」
「ふふっ、そこまで言われるとしかたがないわね。可愛い妹を泣かせたくないもの」
パトリスがぷくりと頬を膨らませて抗議すると、レイチェルは仕方がなく折れるのだった。
二人の仲の良さとレイチェルが妹を溺愛している話は、今では社交界では誰もが知っていること。
パトリスが体に優しいお茶を淹れてレイチェルにティーカップとソーサを渡す。
レイチェルはその豊かな茶の香りを楽しんだ。
淡い色彩の花が咲き、麗らかな景色が広がる春の昼下がり。
風が悪戯に雲を動かし、陽を隠す。
「急に肌寒くなりましたね」
ぽつりと呟くパトリスの背中に、ふわりと温かなものがかけられた。見ると、魔法騎士の制服である深い青色の騎士服の上着だ。
振り返ると、優しく微笑むブラッドと視線が交じり合う。
彼の背後には、こちらを生温かい眼差しで見守るアンブローズの姿もあった。
「そうだね。風が少し冷たくて、パトリスが風邪をひいてしまいそうで心配だ」
「ブラッド! 旦那様に会いに来たの?」
「いや、パトリスを迎えに来たんだよ。結婚式のドレスの手直しが終わったそうなんだ。師匠には話しておいたから、一緒に店に行こう」
「もうできたの? とても早いわね」
「師匠とオルブライト侯爵夫人が張り切って……服飾士たちを急かしているらしい。早くパトリスのウェディングドレス姿を見たがっているそうだよ」
ブラッドは苦笑すると、大きな掌をパトリスに向ける。
パトリスがそっと自分の掌を重ねると、優しく握る。
「そんな師匠たちを差し置いて、あなたのウェディングドレス姿を一番最初に見せてもらう栄誉をいただけますか?」
「ええ、もちろん。喜んで」
風が雲を押し流し、太陽が再び顔を表す。
柔らかな陽光に照らされたパトリスが微笑みを浮かべたまま目を閉じると、ブラッドは誘われるように彼女を抱きしめる。
温室の床に敷き詰められている白い大理石の上で二人の影が重なり、一つになった。
(結)
***あとがき***
最後までお読みいただきありがとうございました。ようやく完結です。
始めはGW中に完結とお伝えしていたのに、やはり丁寧に描写したいと思ってしまい、なかなか完結できず申し訳ございませんでした。
長くなってしまったところ、変わらず応援いただき誠にありがとうございました。
パトリスとブラッドの一途な恋や、アンブローズとパトリスたちのゆるぎない師弟関係をお楽しみいただけましたらとても嬉しいです。
それでは、新しい物語の世界でまたお会いしましょう!
仕事を終えたパトリスは寝台の上で何度も寝返りを打っては溜息をついた。なかなか眠つけないまま、もう一時間は経ってしまったような気がする。
目を閉じても頭が冴えたまま。
頭の中ではレイチェルの言葉が耐えず反芻して止まない。
魔法を使えない自分が魔法騎士として名声を得たブラッドと釣り合うわけがない。
そんなこと、自分が一番よくわかっている。しかし早急に恋心に区切りをつけられるかどうかは別の話。
ゆっくりとその想いを消化して前に進もうとしていたのに、その柔らかな想いを土足で踏み込んでくるなんてあんまりではないか。
悲しみと怒りと不安が胸の中に渦巻き、パトリスの心を蝕んでいる。
「……外の空気に当たろうかしら」
春の夜はまだ寒い。
パトリスは淡い小麦色のショールを羽織ると、部屋を出た。
外では三日月が玲瓏と輝いている。
庭の花は蕾を閉じて夢を見ているものもいれば、宵闇の中でも張り切って咲き誇るものもいる。
パトリスは夜露に濡れた芝生を踏み分け、薄紅色の薔薇たちが咲く生垣の前でしゃがんだ。
薔薇たちは宵闇の中でほんのりと光を帯びているように見える。
そのうちの一輪に、そっと話しかけた。
「ここでの仕事が終わったら、この恋を忘れるわ」
目の奥がじんわりと熱くなる。つんと鼻が痛くなるけれど、パトリスは言葉を続けた。
「忘れるために、街に出てひとりで生活することにしたの。自分の力で生きていける強さを身につけられるようになるまではブラッドに会わないようにするわ。そうしたらいつか、ブラッドが結婚して妻と一緒にいるとことを見ても立ち直れると思うから……」
ぽたり、と冷たい夜風に冷やされた涙が地面に落ちる。
パトリスは指で目元を拭うが、涙はとめどなく出てくる。
「でも今は、ちっとも大丈夫じゃないのよ」
彼を想ってきた時間は長く、心の一部であるかのようにずっといるのだ。
それを取り出してなかったことにするなんて、心の一部を剥ぎ取るのと同じではないか。
パトリスの心が、傷つけないでと叫ぶ。
それでもパトリス自身がその心に爪を立てて剥がそうとしている。
行き場のない悲しみが喉を締め付ける。
パトリスは嗚咽を漏らしてすすり泣いた。
夜の静寂だけが彼女を優しく包む。
しかしパトリスの背後で、木の枝が揺れて葉が擦れ合う音がした。
「――パトリス?」
次いで、聞き慣れた声が自分の名前を呼ぶ。
声がした方を振り返ると、ブラッドが薔薇のアーチに手をついて立っているではないか。
「ブラッド……」
パトリスは自分の口を突いて出た言葉に慌て、口元を両手で覆った。それでもしゃっくりが止まらず、零れる声がブラッドに自分の居場所を知らせてしまう。
ブラッドは声を辿って、パトリスがいる方向に顔を向ける。
「やはりパトリスなのか……どうしてここに? ――それよりも、泣いているのかい?」
どこまでブラッドに聞かれてしまったのだろうか。
焦るあまり考えがまとまらない。
「パトリス、すまないが目が見えないんだ。お願いだから声を聞かせてくれ」
いつもは慣れない足取りで慎重に歩くのに、今は足がもつれるのもお構いなしに前に進む。
誤ってパトリスを踏みつけてしまわないよう、伸ばした手が宙をかく。
パトリスはやや覚束ない足取りで近づくブラッドを案じ、同じように手を伸ばした。
「ブラッド、ここにいるわ」
その声に導かれるようにブラッドの手が動き――二人の指先が触れ合う。
そうしてお互いを確かめ合うように、ゆっくりと指を交差させた。
ブラッドはパトリスの目の前にしゃがむと、空いている方の手を彷徨わせてパトリスの髪に触れる。そこからゆっくりと上へと動かし、パトリスの頭に乗せた。
まるでパトリスをあやすように、ぽんぽんと優しく撫でる。
「パトリス、もう大丈夫だよ。なにがあったのか言ってごらん?」
落ち着いた声音に、優しい言葉。
子どもの頃にもかけてくれた懐かしい言葉に、パトリスはきゅっと胸が軋むのを感じた。
「ブラッドが来てくれたからもう大丈夫よ」
「それならいいけど……それにしても、パトリスがうちの庭にいるなんて……夢でも見ているのかな?」
ブラッドが自分の頬を抓ろうと手を動かすと、パトリスがやんわりとその手を押さえて止めた。
「そう、これは夢よ。ブラッドに会いたくて、夢に出てきたの」
騙すことになって申し訳ないけれど、そうするしかない。
少しだけブラッドと話をして、その後はどこかに隠れ、ブラッドがいなくなるまでやり過ごそう。
ブラッドは魔力で人の気配を察しているけれど、魔力がない自分なら気配を隠し通せるはずだ。
「夢でもようやく会えて嬉しいよ。現実の世界でも会いに行くから、待っていてね?」
「……ええ」
逡巡した後、彼に嘘をついた。
ブラッドが会いたがってくれるのは嬉しいけれど、彼に会えば絶対にこの恋を終わらせられない。
「実は、魔法騎士から教官になったんだ。これからはパトリスに会える時間が増えるよ。だからグランヴィル伯爵を説得してパトリスに会いに行くつもりだ。それに、パトリスに渡したい物があるんだ。もしよかったら受け取ってほしい」
「渡したい物?」
「この前、街に出た時にパトリスに似合いそうな髪飾りを見つけたんだ。……といっても、目が見えないから付き添ってもらったメイドのリズさんに外観を聞いて、似合いそうだと思ったんだけど……」
街に出て見つけた髪飾りとは、きっとあの銀細工の小花をあしらったのバレッタのことだ。
合点するや否や、パトリスは頬を赤くした。
鼓動が駆け足になる。
まさかあれは自分への贈り物だったなんて。
(大切な人に贈りたいって言っていたけど、その大切な人って、私だったの?)
もちろん妹弟子として好ましく思ってくれているのはわかっている。しかし贈り物を選んでいた時のブラッドは――まるでその相手に恋焦がれているかのようだった。
パトリスは口をパクパクと開けたり閉じたりするばかりで、なにも言葉を紡げない。
「パトリス、お願いだからもう遠くに行かないで。ぜったいに君を守るから、だから俺の前から消えないで――」
愛する人もまた自分を愛してくれているなんて、それこそ夢でも見ているのだろうか。
甘い感情が心を溶かす。
しかしパトリスは首を横に振ると、冷静に自分に言い聞かせた。
(受け取ってはダメよ。だって私は、ブラッドに相応しくないもの)
だけど今の一瞬だけは、彼の想いを享受したい。
「ブラッド、ごめんなさい」
小さく謝ると、彼の唇にそっと自分の唇を触れさせる。
ブラッドは息も忘れ、パトリスからもたらされる温かな感覚を受けとめた。
キスなんて一度もした事がなかったパトリスは触れさせるだけで精いっぱいで、気恥ずかしさのあまりすぐに身を引いた。
しかし逞しい腕と大きな掌が彼女を逃がさず、気付くとまた温かく柔らかなものが唇に触れている。
不意打ちに驚き目を見開いたパトリスは、耳の奥でなにかがガシャンと音を立てて砕ける音を聞いた。
しかし慣れないキスを受けとめるので精一杯なパトリスは、聞こえた音すら忘れてしまった。
翻弄されながらも、ブラッドの目が治るようにと祈る。
それがパトリスなりの餞だった。
離れられなくなる前に離れようとしたその時、淡い光が膜のようにパトリスとブラッドを包む。
「いったい、なにが起こったの?」
ぱちくりと目を瞬かせた間に光は消えた。
自分の手を見つめて何か変化はないかと観察していたパトリスは、不意に目の前から視線を感じた。
見上げると、ブラッドの新緑のような緑色の瞳がしっかりと自分を映しているではないか。
「パトリスが見えている……もしかして、視力が戻った……?」
ブラッドは自分の頬を抓ると、「痛い」と小さく零す。
「どうやら夢ではないようだけど……それに、どうしてパトリスの髪の色がリズさんと同じ栗色になっているのかな? パトリス、事情を説明してくれるかい?」
いつもは優しい兄弟子の声音に怒りが滲んでいる。
パトリスは小さく震えた。
騙してしまったのだから、怒られても仕方がない。
「……ごめんなさい。ブラッドのことが心配で、私からメイドとして一緒にいたいと旦那様に言って――」
「わーっ、パトリスは謝らないで? パトリスには怒っていないよ。師匠に怒っているんだ。全ての元凶は師匠だってわかっているから」
ブラッドはしゅんとするパトリスに弁明した。
あの師匠、絶対に許さないと心に誓いながら。
パトリスはこれまでのことを全てブラッドに話した。
勘当されて屋敷を追い出されたこと。
アンブローズに拾われて彼の屋敷でメイドとして働いていたこと。
そして、ブラッドが視力を失ったと聞いて、自分から立候補してリズとしてそばにいたこと。
「……なるほどね。師匠め……パトリスには目のことを言わないでほしいと頼んでいたのに、最初から知らせていたのか……」
「ど、どうして私には知られたくなかったの?」
「心配してくれるからに決まっているだろう? パトリスに心配かけさせたくなかったんだ」
ブラッドは眉尻を下げると、パトリスの頭をまた撫でる。
労わるような手が心地よい。しかし先ほど彼と交わしたキスを思い出してしまい、パトリスは自分の頬が熱くなるのを感じた。
「それにしても、どうしてブラッドの目が見えるようになったのかしら?」
「……きっと、パトリスのおかげだよ」
「私……?」
「パトリス、実はオルブライト侯爵夫人からさっき聞いたばかりだったんだけど――君は魔法が使えるんだ。それも、とてもすごい魔法をね。普通の人では治せないような怪我や病を治せる力を持っている。だけどその力を持っていることが公になると、一部のよくない魔法使いに狙われる可能性があるから、君のお母さんは魔法を使えないようにした。その魔法が解けて――無意識のうちに俺の目を治癒してくれたんだ」
「お母様のかけた魔法が急に解けたのね」
「……違うよ。俺たちで解いたんだ」
ブラッドは照れくさそうにそう言うと、パトリスの唇をすっと指で撫でた。
「その魔法はね、愛する人とのキスで解けるから」
「……えっ?!」
パトリスの顔が林檎のように真っ赤になる。
ブラッドはその様子を愛おしそうに見つめた。
「このままパトリスと話していたいけど……まずはプレストン伯爵らに備えないといけないな。きっとパトリスが発動させた魔力を感じ取って、こちらを探ろうとしているに違いない」
ブラッドはやや名残惜しそうにそう言うと、パトリスを連れて屋敷に戻った。屋敷の中に入ると、扉や窓に手を翳し、念入りに魔法をかける。
「それはどんな魔法なの?」
「防御魔法だよ。あと、解錠する魔法のみ無効化する術式を組み合わせた」
「そんなこともできるのね」
すると二人の前にシレンスが現れる。
もうすっかり寝ているものだと思っていたのに、彼はきっちりと執事服に身を包んでいるではないか。
シレンスはパトリスとブラッドを交互に見ると、ひとりで納得したように首肯した。
その表情は少し柔らかく、口角は微かに上を向いている。
「ホリングワース男爵、視力が戻ったようでなによりです。そして、パトリスと再会できたのですね」
平常運転なシレンスの言葉に、ブラッドは少し不服そうに眉根を寄せる。
「シレンスさんはリズさんの正体を知っていたのですね?」
「はい。正体を隠しているとはいえプレストン伯爵から狙われる可能性があるとして、パトリスを守るよう旦那様から仰せつかっております。ちなみに、パトリスが本当は魔法が使えることも、魔法を封印されていることも、旦那様から聞いていました」
「えっ……シレンスさんは知っていたんですか?」
パトリスは愕然とする。
自分は今まで魔法を使えないと思い、何度も絶望した。そのせいで恋だって諦めようとしたのだ。
「ああ、師匠にすっかりしてやられたよ」
ブラッドは恨めし気に呟いた。
「旦那様になにか考えがあってのことでしょう。それにしても、先ほど庭から感じた大きな魔力はパトリスのものですね。きっとあの魔力に反応したプレストン伯爵らが探りを入れてくるはずです。対策を取りましょう」
「そうだね。当初の予定ではこの屋敷は彼らの目を欺くための拠点の一つに過ぎなかったけど、今は本拠地と言っても変わらない。彼らの狙いはパトリスだからね。……ひとまず窓と扉には防御魔法をかけたから、簡単には突破できないはずだ。あとは庭の草木に少し手伝ってもらったり、庭に罠を用意しようか」
ブラッドとシレンスは二人で屋敷中に魔法をかけた。
その間パトリスは、二人のために夜食やお茶を用意した。
「私も二人のように魔法が使えるのよね?」
屋敷中に魔法をかけ終わったブラッドに、パトリスが躊躇いがちに問う。
「うん、もう使えるよ。だけどしばらくはコントロールできるように練習した方がいいから、一緒に練習しようね」
「じゃあ私、諦めなくていいのね」
パトリスはうっすらと目に涙を浮かべて喜ぶ。
「諦めるって、なにを?」
「ブラッドを好きでいること」
「えっ、絶対に諦めないでね?! もしもパトリスが諦めようとしたら、全力で追いかけて止めるから」
ブラッドが真面目腐った顔でそう宣言すると、二人は顔を見合わせた笑った。
それからパトリスたちは一階にある居間で過ごした。
パトリスはブラッドの勧めで仮眠をとった。
明けた空にまだ星が残る頃、屋敷の門の前に一台の馬車が停まったことで、平和な時間は幕を閉じた。
パトリスたちは窓を一つだけ開けて、門の外にある馬車を観察する。
「ホリングワース男爵、あの馬車はいかがしますか?」
「放っておきましょう。今日は師匠の言いつけ通り、なにがあっても屋敷から出ない方がいいです」
静かに見守る時間は長く感じられた。時計の針がコチコチと動く音が、やけに大きく感じられる。
やがて馬車の扉が開き、中から人が出てきた。
パトリスはその人物を見て、きょとんと首を傾げる。
「旦那様がどうしてこんな時間に?」
「いや、あれは師匠じゃないよ。姿変えの魔法で変装している偽物だ」
ブラッドにそう言われても、パトリスには偽物だとわからない。
容姿も服装も全く同じなのだ。
しかしアンブローズのもとで長年過ごしてきたブラッドの目には全く以て別人に映っていた。
たしかに表情も歩き方もほとんど同じだが、同じに見えるように似せているのであって、本人ではないとわかる。
上手く擬態した何者かに過ぎないのだ。
「ブラッド、いるんだろう? 門を開けてくれないか?」
男はブラッドの方に顔を向けると。アンブローズと同じ声でブラッドを呼ぶ。
ブラッドたちが黙ってその様子を眺めていると、男は更に言葉を続けた。
「昨夜この屋敷から強い魔力を感じ取ったのだが、なにか知っているかい?」
「気のせいでしょう。昨夜は特に何も起こりませんでしたよ」
「そんなはずはない。確かにこの場所から発した魔力だった。さあ、門を開けて入れてくれ。調べさせてくれないか?」
「なぜですか?」
「なぜって……可愛い弟子の屋敷で起こったことは調べておきたいだろう?」
ブラッドは男の言葉に笑った。
「それでも無理ですよ。だって、師匠が言ったではありませんか。誰が来ても出てはいけない。たとえ、その相手が私を名乗っていても、と」
「……ああ、なるほど。そう言っていたのか。オルブライト侯爵め。つくづく用心深くて目障りな男だ」
男はアンブローズの顔で舌打ちすると、門に手を伸ばす。すると庭の草木が急激に成長し、門に絡みついて固定してしまう。
「ええい、煩わしい! お前たちも出て来い!」
男が叫ぶと、馬車の中から従者らしい服装の男が二人出てくる。
門が開かないとわかるや否や、二人は魔法で空を飛ぶ。するとブラッドが待ち構えていましたと言わんばかりに魔法の呪文を詠唱し、二人の動きを止めた。
男たちはあっという間に捕らえられ、庭の木に括りつけられる。
それから日が昇るまで何度かトレヴァーの手下が襲来したが、全てブラッドとシレンスの手によって捕らえられた。
やがて朝日が昇ると、ブラッドの同僚たちが現れて犯人たちを連行する。
彼らと入れ違いで、オルブライト侯爵家の馬車がやってきた。
馬車から出てきたのは、アンブローズとレイチェルだ。
「やれやれ、予想より早く二人がくっついたから計画が狂ってしまったではないか」
そう言って門の柵越しから手を振るアンブローズに、ブラッドは絶対零度の眼差しを向ける。
「予想より早くくっつく……? やはり師匠は俺たちを掌の上で転がしていたんですね。パトリスがオルブライト侯爵家でメイドをしていたのに教えてくれなかったし、俺の目のことをパトリスに話さないでほしいと言ったのに早々に伝えているなんてあんまりです」
「人聞きが悪いなぁ。私だって二人を騙すようになって心苦しいと思ったけど、二人のためを想ってやったんだよ?」
アンブローズは悪びれる様子がない。
「それにしても、お疲れ様。計画は狂ったものの、上手くいってすぐに片付いたよ。グランヴィル伯爵家も襲撃してきた犯人たちは一人残らずとらえたようだ。グランヴィル伯爵が張り切りすぎて、犯人はみな気絶したらしいけど」
アンブローズの話によると、オルブライト侯爵家とグランヴィル伯爵のタウンハウスおよび領主邸に忍び込んだ者たちは全員捕縛され、そのまま王立騎士団の騎士たちを呼んで連行させた。
主犯のトレヴァーはグランヴィル伯爵家の領主邸を襲撃した犯人のうちの一人で、屋敷にいた使用人たちの総攻撃で気絶したらしい。
プレストン伯爵家は騎士たちに包囲されており、トレヴァーたちの裁判が終わるまで包囲網は解かれないそうだ。
「終わりよければすべてよし、だよね?」
状況を話し終えたアンブローズは、睨みつけてくるブラッドと頬を膨らませて怒っているパトリスに同意を求める。
「よくありません! 師匠が約束を破ったせいで、パトリスに心配をかけてしまったじゃないですか。そうなるから言わないよう頼みましたよね?!」
「どうして私が本当は魔法が使えると教えてくれなかったんですか?! ずっと悩んでいたんですよ?」
二人の愛弟子に問い質されるアンブローズはたじたじだ。
「私も悩んだんだよ? だけど色々な事情があったし……それに、それぞれに大きな障壁があった方が、早く二人がくっつくかなぁ~と思って……」
「だから俺たちを騙したんですか?」
「騙したのには違いないけど、君たちのためを想って……お願いだからブラッド、怖い顔をしないでよ」
たとえ尊敬する師であったとしても、約束を破った罪は重い。
アンブローズはブラッドの気迫にすっかり気圧される。
「レイチェル、あなたからもなにか言ってくれませんか?」
「因果応報だわ」
「うっ……、その通りですけど、もう少し助けてくれてもいいのでは?」
助けを求めようとしたレイチェルには早々に見捨てられてしまい、取りつく島もない。
「だけど……今世の妹も助けてくれてありがとう」
レイチェルは微笑むと、アンブローズを抱きしめた。
アンブローズはどきりとして一瞬だけ固まってしまったが、すぐにレイチェルを抱きしめ返す。その顔はこれまでになく幸せそうだった。
その後、レイチェルと一緒に父親と再会したパトリスは二人から謝罪を受けた。
パトリスはその謝罪を受け入れた。
これまで冷たく接してきたのは全てパトリスのためを想ってしていたことだとアンブローズから聞いていたため、二人の言葉を信じることにしたのだ。
しかしパトリスが負った心の傷や感じた寂しさをなかったことにはできない。
パトリスは彼らと名付け親であるアンブローズを交えて話し合った結果、籍をグランヴィル伯爵家においたままオルブライト侯爵家で過ごすことになった。
本音を言うと引き続きブラッドの屋敷で過ごしたかったのだが、父親とレイチェルに猛反対されてしまったのだ。
それからブラッドの屋敷では、オルブライト侯爵家から転職してきたシレンスと、ブラッドが新たに雇った彼の母親ほどの年齢の家政婦が働くことになった。
そうして事件が起きた一年後、パトリスはまたオルブライト侯爵家でレイチェル監修のもと、花嫁修業を受けている。
メイドとして働くかたわら、貴婦人としての極意を教わっているのだ。
そうなるに至るまで、決して平坦な道のりではなかった。
父親は養子を迎えるのを止めてパトリスを後継者にすると言い出し、ブラッドとの結婚を認めようとしなかった。
そのため、ブラッドは更に功績を上げなければならなかった。
愛する恋人のために懸命に任務をこなすブラッドの姿に貴婦人と令嬢――そして王妃までもが感銘を受け、彼女たちが国王に提案してブラッドとパトリスが婚姻するよう命令を下したのだ。
その一件にアンブローズも一枚噛んでいたことを、二人は後日知ることとなる。
「お姉様、少し休憩しましょう? 無理をなさるとお体に障ってしまいます」
温室で社交界の要人についての講義を受けていたパトリスは、躊躇いがちにそう切り出す。
レイチェルは小さく首を横に振りつつ、本人も無意識のうちに自身のお腹を撫でた。
「座ってあなたと話すくらい、なんてこともないわ」
「いいえ、春は気温の変化が激しいので、普通に過ごしていても疲れてしまうのですよ。だからこまめに休息をとるべきです!」
レイチェルのお腹には新しい命が宿っている。
アンブローズはレイチェルから懐妊を告げられた時、ボロボロと涙を零して喜び、一日中レイチェルにくっついて離れなかった。
そんな身重のレイチェルが温室で講義をすると言うや否や、パトリスはレイチェルにカーディガンを着せたりブランケットをかけたりと甲斐甲斐しく世話をする。
使用人たちは体にいいお茶や軽食を用意した。
一年前はレイチェルと使用人たちの関係性は最悪に近かったが、全てパトリスを想ってのことだと知って以来、彼女によくしている。
「お姉様になにかあったら泣きますからね!」
「ふふっ、そこまで言われるとしかたがないわね。可愛い妹を泣かせたくないもの」
パトリスがぷくりと頬を膨らませて抗議すると、レイチェルは仕方がなく折れるのだった。
二人の仲の良さとレイチェルが妹を溺愛している話は、今では社交界では誰もが知っていること。
パトリスが体に優しいお茶を淹れてレイチェルにティーカップとソーサを渡す。
レイチェルはその豊かな茶の香りを楽しんだ。
淡い色彩の花が咲き、麗らかな景色が広がる春の昼下がり。
風が悪戯に雲を動かし、陽を隠す。
「急に肌寒くなりましたね」
ぽつりと呟くパトリスの背中に、ふわりと温かなものがかけられた。見ると、魔法騎士の制服である深い青色の騎士服の上着だ。
振り返ると、優しく微笑むブラッドと視線が交じり合う。
彼の背後には、こちらを生温かい眼差しで見守るアンブローズの姿もあった。
「そうだね。風が少し冷たくて、パトリスが風邪をひいてしまいそうで心配だ」
「ブラッド! 旦那様に会いに来たの?」
「いや、パトリスを迎えに来たんだよ。結婚式のドレスの手直しが終わったそうなんだ。師匠には話しておいたから、一緒に店に行こう」
「もうできたの? とても早いわね」
「師匠とオルブライト侯爵夫人が張り切って……服飾士たちを急かしているらしい。早くパトリスのウェディングドレス姿を見たがっているそうだよ」
ブラッドは苦笑すると、大きな掌をパトリスに向ける。
パトリスがそっと自分の掌を重ねると、優しく握る。
「そんな師匠たちを差し置いて、あなたのウェディングドレス姿を一番最初に見せてもらう栄誉をいただけますか?」
「ええ、もちろん。喜んで」
風が雲を押し流し、太陽が再び顔を表す。
柔らかな陽光に照らされたパトリスが微笑みを浮かべたまま目を閉じると、ブラッドは誘われるように彼女を抱きしめる。
温室の床に敷き詰められている白い大理石の上で二人の影が重なり、一つになった。
(結)
***あとがき***
最後までお読みいただきありがとうございました。ようやく完結です。
始めはGW中に完結とお伝えしていたのに、やはり丁寧に描写したいと思ってしまい、なかなか完結できず申し訳ございませんでした。
長くなってしまったところ、変わらず応援いただき誠にありがとうございました。
パトリスとブラッドの一途な恋や、アンブローズとパトリスたちのゆるぎない師弟関係をお楽しみいただけましたらとても嬉しいです。
それでは、新しい物語の世界でまたお会いしましょう!
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実は主人公の思いも寄らぬことが周囲で繰り広げられているようで…いつか必ず真実に辿り着いてほしいですね。
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これからラストスパートを駆け抜けますので、引き続きパトリスたちを見守っていただけますと嬉しいです!
よろしくお願いします。