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第一章 婚約破棄断罪イベント
男爵は国外追放になったのである。
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目が覚めるとルミナスがオレのベッドのそばに立っていた。夜も更けて、キラキラと銀の髪が蝋燭の光を浴びて飴色に光る。ああ、あの後倒れてしまったのか。麻薬使われてたなんで思いもしなかった。
「…ルミナス」
「アンジュ・カトゥルヌス男爵令嬢及び、カトゥルヌス男爵家は、男爵の位の剥奪。国外追放の刑に会いました。」
ルミナスは淡々と喋る。機械的に、あったことのみを返答するさまは、ビスクドールのような白い滑らかな肌とあいまってヒューマノイドのようだった。ローブマントのフードを外し、金銀の装飾だけになった姿は、それでも彼を神々しく美しく見せた。
「ほかの、パーティに来てた貴族には……。」
「王族の毒殺未遂と言っております。」
「そっか…」
王族を薬物中毒にしようとしたなんて外聞が悪いものな。主にオレのだが。
「あのさ、ルミナス。君はアンジュをいじめてなんかなかったよな。」
「ええ、私は竜王の谷で聖女として通年、責務をしていましたから。」
「そうか、竜王の谷か…。」
竜王の谷……で、聖女。せい じょ?
「すまん、寝起きで頭が働いていないのかも知れん。竜王の谷の聖女?聖女って、君、男だろう?」
「竜の寵愛の印が出たもののことを聖女と呼ぶだけです。女でなくても印が付けば聖女としてのお勤めを果たさなくてはならないのです。」
はー。なるほど?オレは神妙な顔持ちで頷く。竜、竜がいる世界か。まあ異世界なんだしそうなんだろう。鑑定魔法とか、あったし。
「竜と対等な関係を持つから、ヘイストス家は公爵の位を頂いています。ヘイストス家が竜をこの国に仕掛けたらこの国は終わってしまいますので。」
「だから、ヘイストス家と王族の結婚があるのか。ヘイストス家に攻められた時の人質として。」
ギリギリ、間一髪だったなこれは。今王宮にはヘイストス家出身の方はいない。療養で辺境に暮らすおばあさまがお一人程度だ。しかももう棺桶に片足を突っ込んでいるようなおばあさまだ。もしここで婚約破棄していたら攻められていた可能性があるぞ。これが、ざまぁフラグか。
「私は、殿下のことを愛しています」
「へ?」
「あの女のような柔らかい肉は持ち合わせていませんが、どうでしょう?私を愛してくださいませんか?」
「あ、あの?ちょっと、ヘイストスさん?」
「お願いします…」
わっと泣き出すイケメン。どうした、オレはどうすればいいんだ?いきなり告白されたんだが?
「ルミナス。落ち着いて、ほら、おいで」
目を擦って泣いてるルミナスの手を引いて抱きしめてやる。つんとアルコールの匂いがして、慌ててベッドチェストを見ると酒の瓶が開けられていた。度数の強そうな琥珀色の液体が底から数センチ分残っている。野宿テントなどで見張りの時に飲む酒があると言われていたが、もしかして、もしかしなくても徹夜するために酒を飲んで酔ってる?
「ルミナス、今日は沢山大変なことがあったからな。驚いてしまったんだろう。」
「ーっ。ん、ジュリアスさまが、盗られたと思った…」
「っ、そうか。そうだな。嫌だったな」
「ジュリアスさまは、私と婚約してるから、大丈夫とおもってたの…」
涙を目に溜めながらこちらに好きだとイケメンが迫ってくるのだ。……うん、悪い気はしないが、それってどうなんだ?面食いってことだよな。相手に不誠実なのではないか?
「ルミナス、オレは男色じゃないから、君を愛せるかわからないよ?浮気なんてのは一向に構わないからさ、ほかの人を探して…。」
「あなたじゃなきゃ意味がないんです…」
「そ、うなんだ。でもお互い何も知らないし…。」
「私が十何年も谷で聖女をしていたんだから当たり前です。これから知っていけばいいのです。」
「あの、王族だから子供も作らないといけないし…」
「できますよ?」
「へ?」
「竜王の聖女となら男同士でもできます。試してみますか?」
ルミナスがオレの腹を撫でてほくそ笑む。その目には先程の恋い焦がれる熱は無く、ジリジリと燃え盛るほどの欲に染まっていた。
「…ルミナス」
「アンジュ・カトゥルヌス男爵令嬢及び、カトゥルヌス男爵家は、男爵の位の剥奪。国外追放の刑に会いました。」
ルミナスは淡々と喋る。機械的に、あったことのみを返答するさまは、ビスクドールのような白い滑らかな肌とあいまってヒューマノイドのようだった。ローブマントのフードを外し、金銀の装飾だけになった姿は、それでも彼を神々しく美しく見せた。
「ほかの、パーティに来てた貴族には……。」
「王族の毒殺未遂と言っております。」
「そっか…」
王族を薬物中毒にしようとしたなんて外聞が悪いものな。主にオレのだが。
「あのさ、ルミナス。君はアンジュをいじめてなんかなかったよな。」
「ええ、私は竜王の谷で聖女として通年、責務をしていましたから。」
「そうか、竜王の谷か…。」
竜王の谷……で、聖女。せい じょ?
「すまん、寝起きで頭が働いていないのかも知れん。竜王の谷の聖女?聖女って、君、男だろう?」
「竜の寵愛の印が出たもののことを聖女と呼ぶだけです。女でなくても印が付けば聖女としてのお勤めを果たさなくてはならないのです。」
はー。なるほど?オレは神妙な顔持ちで頷く。竜、竜がいる世界か。まあ異世界なんだしそうなんだろう。鑑定魔法とか、あったし。
「竜と対等な関係を持つから、ヘイストス家は公爵の位を頂いています。ヘイストス家が竜をこの国に仕掛けたらこの国は終わってしまいますので。」
「だから、ヘイストス家と王族の結婚があるのか。ヘイストス家に攻められた時の人質として。」
ギリギリ、間一髪だったなこれは。今王宮にはヘイストス家出身の方はいない。療養で辺境に暮らすおばあさまがお一人程度だ。しかももう棺桶に片足を突っ込んでいるようなおばあさまだ。もしここで婚約破棄していたら攻められていた可能性があるぞ。これが、ざまぁフラグか。
「私は、殿下のことを愛しています」
「へ?」
「あの女のような柔らかい肉は持ち合わせていませんが、どうでしょう?私を愛してくださいませんか?」
「あ、あの?ちょっと、ヘイストスさん?」
「お願いします…」
わっと泣き出すイケメン。どうした、オレはどうすればいいんだ?いきなり告白されたんだが?
「ルミナス。落ち着いて、ほら、おいで」
目を擦って泣いてるルミナスの手を引いて抱きしめてやる。つんとアルコールの匂いがして、慌ててベッドチェストを見ると酒の瓶が開けられていた。度数の強そうな琥珀色の液体が底から数センチ分残っている。野宿テントなどで見張りの時に飲む酒があると言われていたが、もしかして、もしかしなくても徹夜するために酒を飲んで酔ってる?
「ルミナス、今日は沢山大変なことがあったからな。驚いてしまったんだろう。」
「ーっ。ん、ジュリアスさまが、盗られたと思った…」
「っ、そうか。そうだな。嫌だったな」
「ジュリアスさまは、私と婚約してるから、大丈夫とおもってたの…」
涙を目に溜めながらこちらに好きだとイケメンが迫ってくるのだ。……うん、悪い気はしないが、それってどうなんだ?面食いってことだよな。相手に不誠実なのではないか?
「ルミナス、オレは男色じゃないから、君を愛せるかわからないよ?浮気なんてのは一向に構わないからさ、ほかの人を探して…。」
「あなたじゃなきゃ意味がないんです…」
「そ、うなんだ。でもお互い何も知らないし…。」
「私が十何年も谷で聖女をしていたんだから当たり前です。これから知っていけばいいのです。」
「あの、王族だから子供も作らないといけないし…」
「できますよ?」
「へ?」
「竜王の聖女となら男同士でもできます。試してみますか?」
ルミナスがオレの腹を撫でてほくそ笑む。その目には先程の恋い焦がれる熱は無く、ジリジリと燃え盛るほどの欲に染まっていた。
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