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第二章 陰謀戦争許さぬ意向
里帰りなのです
しおりを挟む前回までのあらすじ。
オレは、ジュリアス・フォン・エーギル。エーデフォルン王国の第三王子だ。17歳の成人誕生会でオレは、アンジュと結婚するために、アンジュを虐めているという悪役婚約者のルミナスに婚約破棄を言い渡すはずだった。
婚約破棄をいう直前で、なんと前世の記憶を思い出したのだ。日本と呼ばれるその国の、Web小説という文化では、婚約破棄はザマァ系のフラグだということを知っていたオレは、ルミナスを呼び出し、アンジュと三人で話し合いをすることにした。
ルミナスは男だった。
放心しつつ、誕生日会会場から場所を移すと、アンジュはど偉い行動に出る。幻覚剤。いわゆる麻薬をオレたちに盛ろうとしたのだ。アンジュは兵士に連れていかれ、オレはショックのあまり気を失った。
ルミナスはその間に国王にら全て報告、アンジュの処分もきっちりと決め、オレに寄り添ってくれた。そして、アンジュを虐めることはアリバイ的に無理だということを話してくれた。ルミナスの一族は国を守る竜王を世話する聖女であり、竜を使い謀反をさせないように政略結婚をしていることも。
オレはルミナスの誠実さに感服した。政略結婚なんて可哀想だろう、自由に恋愛しても構わないと告げると、告白されてしまう。
いや、王位継承権ないけど、子供は作っとかなきゃだめだから男同士はちょっと……と断ろうとするも、竜王の聖女なら可能ですと押し切られベッドインを…してしまい、まして……。
子供ができてしまいまして……。
何故か竜王の谷で5日間みっちり精を注がれまして……。ジュリアス・フォン・エーギル、17歳、卵を出産しました。
……。
「なんでやねん…!!」
今は、艶々した卵を抱っこ紐にくくりつけて温めながら、王宮に向かう最中です。竜がもつ籠の中で快適な空の旅をしてます。
「本当に、産後間もないのに、アンジュ・カトゥルヌス男爵の調査のために呼び出すなんて許せませんね。」
ルミナスはオレの隣に座って、大事そうに卵を撫でている。その横顔は聖母のような慈悲深さがあるものの、これを産んだのはオレだ。
「何か、わかったんだろうか?」
「男爵が持ってた薬の解析結果は聞きました。相当強いモノで、症状末期の者に投与する薬だったようです。男爵の親戚や召使いなどに該当する患者はおらず、誰か他の物が暗躍してる可能性があります。」
「へぇ……」
ルミナスはオレのことをすごく心配している。オレだってジュリアスの記憶が曖昧で困っているんだ。それにこのまま日本の話や前世の話をしたらルミナスはきっとオレが壊れたって泣いちゃうだろう。前世のこと……夫婦になるのだし、隠し事はしたくないんだけどな…と思うのは、おかしいだろうか?
「まぁ、ジュリアス様と子ができた事をまだ報告できてませんし。いい機会だとは思いますが…」
「……えっ!?ルミナス、オレ父上に手紙書いたよ?!」
「ジュリアス様が書いた手紙なら私の宝箱にありますが?」
ルミナスの宝箱とは、聖女のスキル、マジックボックスだ。ルミナスは竜王の谷でオレが使ったスプーン、とかオレにまつわる記念品を理由をつけては収集するようになってしまった。オレの使った万年筆、オレの服をかけたハンガーまでも収集して……お前はカラスにでもなるつもりか?!と怒ったのは記憶に新しい。
「なにドヤ顔してるんだよ!!ダメだろう報告しなきゃ!」
「国王陛下にジュリアス様から手紙をもらう資格なんてありません。アンジュや周りのことをきっちり調べ管理ができないから竜王頼りになるのです。」
こ、こいつ…親にできたことを報告しないのはダメだろ!アンジュを引き合いに出しても許さないからな?!
「…ルミナスはオレの旦那様になるんだろう?親と仲良くしてくれないのか?」
「……ジュリアス様、もう一回言ってくださいませ。」
「親と仲良くしてくれないのか?」
「……」
「ふふ、だんなさま。父上と仲良くしてくれよ♡」
「ジュリアス様覚えておいてくださいね……。」
「やーだ」
頬を赤らめながらこちらを睨んでくるルミナスを嗜める。産んだら1ヶ月は激しいの禁止だろ?我慢してくれよ、と頬にキスを送った。
「ルミナス?ちょ、ダメだって!胎教に悪い!しないでったら!嫌いになるぞ」
「……わかりました。」
全く、この我儘性欲魔人め。
ーーーー
5日間子作りはまた後で書きます!!
何連続もR-18って難しいし恥ずかしい…
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