美少女クレーマー探偵と夢殺し完全犯罪論信者

夜野舞斗

文字の大きさ
47 / 95
第三節 夢の先には後悔か

Ep.9 言えなかった

しおりを挟む
 まず、最初に驚愕していたのがナノカだった。皆も震えているのだが。誰よりも彼女自身がその事実が信じられなかったらしい。手をぐっと握りしめている。

「な、何で頑張ってる姿が追い詰めることになるのよ!?」

 そこに気付いたのは、彼女自身の発言だった。

「ナノカ、光があるから闇を感じるって言ったじゃないか。それと同じ。自分にできないことをやっていたから、自分にできない光が目の前に感じて、嫌になったんだと思う」
「じ、自分にできないことって、やろうと思えば、訴えられるんじゃないの? 確かにちょっと手間はかかるけどさ……それでも」

 ナノカならば簡単に法廷へ出るわよと言えるが。他の人はそうそう強気には出られないとも思うのだ。
 ただ、まぁ、三葉さんのとても強い性格からしても、訴えられるような気はする。やろうとすれば、誹謗中傷をする奴等をボコボコにすることだって可能だと思われる。
 ただ、何故その手段を選ばなかったのかには理由がある。
 僕は美少女AIことVtuberハグルママワリが配信した動画のコメント欄を提示していく。最初に嫌なことを感じ取ったのが桃助くんだった。

「めっちゃ、嫌なこと書いてあるやん。こんなブロックしちゃえばいいのに……本当、こいつら……最悪だな……」

 今回の事件ではその悪口も重要だが、今見てもらいたいものは違う。アヤコさんが体を屈めて、覗いていった。彼女がとても大切な事実を発見してくれる。

「でも、それと同じ位、彼女を救うようなコメントもあるわね」

 そうだ。
 僕も確認していた。

『いつも相談に乗ってもらって、凄い助かってるんだよ! 流石、美少女AIちゃん! 世界を救うよ』
『悪人にすらも慈悲を見せるところがまた、素敵! 我ら美少女AI教に幸あれ! 讃えよ崇めよ、歌えよ! あっ、今度歌ってよ』
『いっつも優しくて楽しいね。見てて心が安らぐよ。明日も楽しみにしてるね。これ生き甲斐だから』
『そういや、最近声の質が落ちてるけど……そういう時期なのかな? 何とか乗り越えてほしいなぁ』
『最近、出てくるの少なくない? 大丈夫?』

 そう。彼女を慕ったり、心配したり。ファンの方々がいる。それもただ、彼女を好きってだけではない。
 僕が説明してみせよう。

「これって、誹謗中傷に対抗したら、どうなると思うかな?」

 古戸くんがもしかしたら一番近い夢を追っていると言えるかもしれない。だからこそか、一番早く発言した。

「それって……自分が訴えでもしたら、いつも救われてると思ってるリスナーさんやファンが離れてくかもしれないって恐怖から……? 自分が誹謗中傷に対抗したら、それが怖いと思って、自分のファンが怯えてしまうから……?」
「僕はそうだと思う……だから、三葉さん、貴方は誹謗中傷のことを訴えることができなかった! そうだよね! だから、やめてしまったんだよね……!」

 彼女ががっくしと項垂れていく。威勢のなくなったとても悲しい顔だが、目を離してはいけないと思った。真実を知ろうとした僕等は彼女の心も受け入れる必要があると思うのだ。

「ああ……その通りだ……表ではどうしても人を傷付けてしまう言葉遣いんなっちまう……だから、ネットならって思ってやってきたんだ。ネットなら誰も傷付けずに済む。それどころか、ネットの顔なら誰かを助けられるって思ったんだ。確かに助けられた人もいた……いてくれたんだ……でもお前の言った通り、誹謗中傷があった……ダメだった。だからもうやめたんだよ……このままこっそり何もかもやめれば、もう何も考えずに済むんだから……」

 あまりに強い悲嘆に対し、僕は少し下を向いてしまう。
 その間に桃助くんが動いていた。語っていた。

「そんなことしたって悲しいだけだよ……そんな理由で終わっちゃったら……自分の中で我慢しちゃったら……後から悔やむことになる。何であの時、誰にも言わなかったんじゃないかって」

 アヤコさんも胸に手を当てて、自身の気持ちを訴えていく。僕達が心から感じていたことも全て、桃助くんとアヤコさんが言ってくれたのだ。

「もっと近くにいる人を頼ってよ。言えない事情だったら、隠しても良かったから……そこの活動のことは言わなくても良かったから。同じ仲間として、同じ女の子として傷付くのを助けたかったから……」

 古戸くんも首を縦に振る。

「うん……」

 そんなところで僕に芦峯さんが少し空気を読まない発言を。まぁ、誰にも聞こえていなかったから良かったのかもしれないが。

「で、これでおしまい? 真犯人とかいないの? あっ、そっか。真犯人は誹謗中傷する人かな! そこをぶっ潰せば」
「物騒な話だけど……ああ……真犯人はまぁ……いるよ?」
「えっ?」
「この中に、追い詰めた真犯人がいるんだよ」
「何で? どういうことなの!?」

 僕はタイミングを見計らって、全員に伝えていく。

「……そして、今から三葉さんをこんな風にした真犯人について話していこうと思うんだ」
「真犯人!?」

 その瞬間、火村さんが驚いて飛び跳ねそうになっていた。一瞬彼女が転ぶのかとヒヤッとしたけれども、近くにいた八木岡くんが支えてくれたから事なきを得た。
 自分も落ち着いて話さねば。

「そう、その犯人はきっと三葉さんにこんな思いをさせるために行動したんだ。三葉さんが誰にも言えず、一人で自分自身の夢を殺すように仕向けた犯人が、ね。僕達が動かなければ、完全犯罪になるところだったよ」

 火村さんが「それって、誹謗中傷してた人のこととか? えっ、でも必ず訴えるとは限らないし」なんて言ったことがヒントに繋がったらしい。
 すぐアヤコさんが気付いてくれた。勘の良い人がいると、推理は少しやりやすくなる。

「ねぇ、それって……もしかして、あたしのところに来た、あの訴えようって言ってたメッセージ……あれって、その真犯人が三葉ちゃんを苦しめるために送りつけてきたって言うの?」
「僕はそう思う。三葉さんが状況的に恥ずかしくて誰にも相談できない状況を知って、アヤコさんに訴えようと提案したんだ」
「で、君はそれが誰だと思ってるの……? まさか、この中の中にいるって言うの? 夢を目指した人達の中に……」

 僕は間違いなく、奴がクロだと思っている。指差しで示すことにした。

「ああ……今の説明で間違がってないよね。八木岡くん……?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...