完全犯罪計画部!~ご相談につきどんな完全犯罪でも創ります!~

夜野舞斗

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1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦

13.完全犯罪計画部の直接対決!?

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「予定は変更よね!」

 東堂が狭い道を走りながら、そう叫ぶ。
 そのまま通りの予定でいけば、駅から宮古さんの自宅までの間で、ぼくたちが覆面をかぶりターゲットの彼を襲うことになっていた。少し脅せば彼は逃げるか、こちらに襲ってくるがどちらかの行動を取ると性格から推測ができる。そうして古月さんと東堂さんが追い討ちをするのだ。襲われた彼はストーカーだから、警察に通報できないと仮定して。
 ぼくの方は証拠隠滅のために、用意したゴミ袋を破って襲撃場所にゴミをぶちまける。ぼくが掃除しておけば、髪の毛の処理ができるかもしれないし証拠が残ってしまってもゴミの一部だと誤魔化せる。
 東堂さんが独自で考えたこの計画は、ぼくの推理で大破綻。
 不思議だったが、推理したのは放課後であったのに彼女は覆面もゴミ袋も「要らないよね」と準備していなかったことだ。

「東堂さん、襲撃時間は浜野さんにちゃんと教えた?」
「教えといたよ」
「よし!」

 古月さんは何も言わなかったが、目を瞑って納得したような顔をしている。彼女も突然の計画変更(と言っても、東堂さんの計画も部活が始まった途端、突然言われた)を理解してくれたので良かった。
 ぼくたちは、宮古さんの通る道で道路標識に隠れて、待ち伏せをする……
 自分が間違っていないか。東堂さんに迷惑をかけていないか。焦って焦って、どうしようもなかった。胸の鼓動も走ったときよりも速かった。

「この時間、もうすぐ来るわね」

宮古さんが何も知らずに、歩いてくる。一歩、一歩。その先に何があるのか分からずに……やがて、足を止める。
 ぼくと古月さん、東堂さんが彼の通り道を塞いだからだ。彼はぼくを指さしてこう言う。

「君は昨日の……どうしたんだい?」
「あっ――」

 ぼくが言葉を伝えようとしたのを東堂さんが遮った。

「貴方は誰か好きな人を追いかけたり――」

「そこの三人、何してるの!?」

 突然、後ろから異常に高い声が聞こえてきた。……予想通り。
 浜野 米子先輩だ。

「何してるの? ねえ。三人とも先輩に何をしようとしてたの!?」
「……」

 ぼくたちは彼女の怒り顔に冷静な顔を返す。驚いているのは、宮古さんの方だ。
 それも気にせず彼女はこちらを睨んで狂ったごとく、叫びぬく。……何か、心に刺さるものがある。

「もう警察も呼んだことだし、宮古先輩! 逃げましょう!」
「え? 何の事? 二人は昨日……とにかく、知り合いだよ。別に……」
「は!?」

 宮古さんの言葉にとんだ間抜けな表情を出す浜野さん。
 当たり前だ。この時、ぼくたちは彼女の依頼通りに宮古さんを襲ってなければならない。

「しまった……飛び出すのが早かったの……?」

 その小声に古月さんが反応し、彼女を弾圧しようと試みた。

「早いもあるかもしれないけど、もうバレてんのよ! この完全犯罪計画部を罠に仕立てようなんて魂胆はねえ!」
「はあ? 何それ? ワタシと彼の愛の邪魔をしようとしてるの……?」
「……!?」

 宮古さんが顔を歪めた。彼女の豹変を真に受けることができなかったのだろう。
 ぼくたちはそれを覚悟していた。それなら、遠慮なく言葉をぶつけさせてもらうぞ。決戦の開始だ!
 最初に古月さんが彼女自身の計画を明らかにする。

「浜野先輩。貴方が考えた最初の計画はアタシたち自身をはめることだったんですよね。アタシたちに宮古さんがストーカーだと勘違いさせ、襲撃させようとした。そこで先輩がヒーローみたいになって、宮古さんを助ける。そんな、よくあるストーリーを作ろうとしたんですよね」
「はあ? よくわかんないよ。ワタシ……はあ……はあ。ワタシ、あんなに素敵な宮古さんを襲おうなんてどうして考えるの? ワタシ、こんなに魅力的なのに。そんな計画、必要なんじゃない。あんたみたいな……はあ……はあ」
「何ですって!?」
「ユニちゃん! 落ち着いて!」

 東堂さんは前に出る。その方が安全だ。……浜野先輩の豹変、なかなか迫力がある。それこそ、今自分たちが戦ってると感じられる。
 でも、少しだけ血の気が引いてしまった。怖いな……
 それに顔一つ変えず、東堂さんは彼女の動機を説明する。

「幾ら貴方が魅力的でも浜野さんは彼に女の子として、見てもらえなくなることを恐れてたんですよね……言葉で強がっていても、無駄ですよ」
「何の話? 恐れるって? 強がってるって? 邪魔な女なんてどこにもいないし、注目されるのは間違いなくワタシだけでしょ!」
「うううううう……」

 古月さんが怖い顔で唸っている。多少顔が青いから、怯えていることを悟られないようにするための行動でもあるのだろう。
 怖いよ。ぼくだって……宮古さんだって足が震えていてうまく歩けないだろう。
 その中で東堂さんと浜野先輩だけが言い争いをしていた。まさに、虎対竜の戦いの如く。

「浜野さんは怖かったんでしょ。貴方が高一のとき、怪我をしてやっと向けてもらった宮古さんの目。それからも弓道としてはアフターケア、つまり二人で話せる時間とか、一緒に入れる時間が多くなったじゃない……そこで、憧れから好きに変わったんでしょ」
「それで……へっ!? 何で知ってるの!? 彼にさせられた愛の怪我のことを何で知ってるの!? 愛の怪我のことを!?」
「とある女の人から教わったのよね。裏の情報網は完璧だから、だから完全犯罪ができちゃうのよ?」
「……はっ!?」

 睨む場所がなかったのか、ぼくの方に強い眼力を向けてきた。
 浜野さんの手がいつ飛んでくるのかが分からず、冷や汗が水たまりを作っている。

 しかし、これでこのプロジェクトも最後だ。終わらせるしかない!今のところ、頑張っているのは東堂さんだけで、ぼくは何にもしていないけれど……
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