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1stプロジェクト ヤンデレ懺滅作戦
14.黒い愛を謳う悪魔のヒーロー
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「さあて、ワタシに何が言いたいの? それとも、あんたらは虫だったわけ?」
「……? 貴方こそ私たちに何が言いたいのか、分からないんだけど」
東堂さんがこのまま突き進み、言葉を突きつけていこうとする。そこで頬を鮮血のように真っ赤にさせた浜野先輩が口を開く。
「意味わかんないのは、こっちよ? あんたたちの話では、ワタシが襲撃をお願いしたみたいだけどさあ? 誰が、弱弱しい人たちに頼むわけ?」
「そ、それは浜野さんがヒーローをやるのに弱い方がやりやすいでしょうね」
この次に来る問い。しまった!まだ東堂さんに伝えるべきこと、自分が一番悩んでいたことを教えていなかった。このままではと、浜野先輩が口を開くのを阻止しようと彼女の前に出る。
「えっ? どうしたの?」
「ふふふ……ワタシたちの愛を邪魔するゴミムシは男でも一人一人握り潰し、壊さなきゃいけないのかしら。なんて哀れなのかしら」
「それだけ、ですか? 何か不満な部分でもあるんじゃないんですか?」
僕は相手に強気な態度で質問を誘う。
彼女の背後から迫りくる闇、それは僕たちに吹く追い風が吹き飛ばしていく。そう思えた。
「あるわよ!? 何でさあ、分かる? どうしてワタシが今、あんたたちに頼んだか……分かんないに決まってるわよね! 魅力的なワタシが今、頼む必要があるっていうの!?」
古月さんが出してくれたあの時の言葉が今の僕を後押ししてくれた。これがキーワードとして脳裏に蘇ってくる。
「二人で部活を辞めるしか」
この言葉だ!
「あの。もう大学受験のことは考えてますよね。それで、大会が終わったら必ず部活を退部する。つまり、弓道から離れなければならなくなる。これが仲介高校の部活だったから……そう簡単に辞められないから、宮古さんはアフターケアで世話をしてくれた。だけど部活が終わったら……宮古さんは貴方とはご近所さん以外の関わりを持てなくなりませんか? 彼と離れてしまうことが本当に恐怖だと感じてたから。愛がなくなってしまうと考えたから、必死に考えて、考え抜いて、この計画を実行しようと思ったんですよね! 彼がいつまでも、自分を振り向いてくれるようにと……違うというなら、反論してください! 浜野 米子!」
……喋っている間、全く息をしていなかったから苦しい。胸をおさえて、ゆっくり深呼吸をした。
ぼくは何をしていたんだろう。何故、先輩を呼び捨てにしてしまったのか不思議でたまらない。
困惑していたぼくに東堂さんが声をかける。
「やったね! 彼女の魅力と全力をぶち壊したよ!」
「え? おお……?」
ぼくたちも宮古さんもうなだれて倒れこむ浜野さんの姿を見ていた。……終わったわけではない。彼女がしていたことは逃げようのない犯罪だ。
そこで腰を抜かしていたストーカー被害者の宮古さんが、犯人の彼女が倒れている場所へ駆け込む。
「み、宮古さん……? どうしたんですか?」
「……彼女、そこまで僕のことを考えてたんだね。できれば、口に出して伝えて欲しかった……」
ぼくと彼との会話に分かったような口ぶりで古月さんが割り込んできた。
「察して欲しい。ワタシが言わなくても好きになって貰いたい。そんな気持ちが彼女を狂気に走らせちゃったのかもね」
「そうだな……怪我をさせてしまったときには、気持ちはまだこんなに強くなかった……そのときに気づいていれば」
丁度良く、サイレンの音が耳に入ってくる……って彼女、本当に警察を呼んでいたんだ!それが衝撃的でぼくたちは大きく口を開けてしまった。
その時、宮古さんはぼくたちに向いて話をしようとする。
「ねえ。君たちは帰ってもらいたいんだけど……いいかな。警察には勘違いだって伝えておくから」
「えっ!?」
この言葉に東堂さんも目を見開いて、驚いていた。彼女はスマートフォンに入っていた画像の記録を見せた。
「これ、ぼくが許可して取ってもらった奴だから大丈夫」
そう言った彼の目は左右上下に泳いでいた。これが嘘だということは一目瞭然である。
その次に古月さんが彼の近くに行き、ぼくたちがギリギリ聞き取れるほどの声でこう囁いた。
「貴方に届けられた下着……調べられるよ。宛先不明でも……たぶん」
「いい。そんな手間はいらないよ。いたずらってことで軽く流しておいてくれ」
彼は気絶した彼女を抱え上げ、答えを出した。
古月さんはそれに黙って頷き、ぼくたちに命令する。
「完全犯罪、失敗。帰るわよ?」
「ああ!」
「ええ!」
宮古さんはヤンデレ?である浜野先輩と共に大きな責任という荷物を背負ってくことを選択したのだ。たぶん、宮古さんが浜野さんを怪我をさせてしまったことがそれに関係しているだろうけれど。……ぼくには、その選択肢が無理矢理生まれた愛なのか……もともと育まれていた恋なのか……はたまた今、ぼくたちの口論を聞いて生まれてきた好意なのか。知ることもできないし、知りたくもない。
ただ言うことができるのは、彼と彼女が幸せになる道を探そうとしていること……それしか分からない。
あっ!?まだ、分かることがあった。
今日の月は、いつにも増して奇麗だなあ!……それだけだ。
「……? 貴方こそ私たちに何が言いたいのか、分からないんだけど」
東堂さんがこのまま突き進み、言葉を突きつけていこうとする。そこで頬を鮮血のように真っ赤にさせた浜野先輩が口を開く。
「意味わかんないのは、こっちよ? あんたたちの話では、ワタシが襲撃をお願いしたみたいだけどさあ? 誰が、弱弱しい人たちに頼むわけ?」
「そ、それは浜野さんがヒーローをやるのに弱い方がやりやすいでしょうね」
この次に来る問い。しまった!まだ東堂さんに伝えるべきこと、自分が一番悩んでいたことを教えていなかった。このままではと、浜野先輩が口を開くのを阻止しようと彼女の前に出る。
「えっ? どうしたの?」
「ふふふ……ワタシたちの愛を邪魔するゴミムシは男でも一人一人握り潰し、壊さなきゃいけないのかしら。なんて哀れなのかしら」
「それだけ、ですか? 何か不満な部分でもあるんじゃないんですか?」
僕は相手に強気な態度で質問を誘う。
彼女の背後から迫りくる闇、それは僕たちに吹く追い風が吹き飛ばしていく。そう思えた。
「あるわよ!? 何でさあ、分かる? どうしてワタシが今、あんたたちに頼んだか……分かんないに決まってるわよね! 魅力的なワタシが今、頼む必要があるっていうの!?」
古月さんが出してくれたあの時の言葉が今の僕を後押ししてくれた。これがキーワードとして脳裏に蘇ってくる。
「二人で部活を辞めるしか」
この言葉だ!
「あの。もう大学受験のことは考えてますよね。それで、大会が終わったら必ず部活を退部する。つまり、弓道から離れなければならなくなる。これが仲介高校の部活だったから……そう簡単に辞められないから、宮古さんはアフターケアで世話をしてくれた。だけど部活が終わったら……宮古さんは貴方とはご近所さん以外の関わりを持てなくなりませんか? 彼と離れてしまうことが本当に恐怖だと感じてたから。愛がなくなってしまうと考えたから、必死に考えて、考え抜いて、この計画を実行しようと思ったんですよね! 彼がいつまでも、自分を振り向いてくれるようにと……違うというなら、反論してください! 浜野 米子!」
……喋っている間、全く息をしていなかったから苦しい。胸をおさえて、ゆっくり深呼吸をした。
ぼくは何をしていたんだろう。何故、先輩を呼び捨てにしてしまったのか不思議でたまらない。
困惑していたぼくに東堂さんが声をかける。
「やったね! 彼女の魅力と全力をぶち壊したよ!」
「え? おお……?」
ぼくたちも宮古さんもうなだれて倒れこむ浜野さんの姿を見ていた。……終わったわけではない。彼女がしていたことは逃げようのない犯罪だ。
そこで腰を抜かしていたストーカー被害者の宮古さんが、犯人の彼女が倒れている場所へ駆け込む。
「み、宮古さん……? どうしたんですか?」
「……彼女、そこまで僕のことを考えてたんだね。できれば、口に出して伝えて欲しかった……」
ぼくと彼との会話に分かったような口ぶりで古月さんが割り込んできた。
「察して欲しい。ワタシが言わなくても好きになって貰いたい。そんな気持ちが彼女を狂気に走らせちゃったのかもね」
「そうだな……怪我をさせてしまったときには、気持ちはまだこんなに強くなかった……そのときに気づいていれば」
丁度良く、サイレンの音が耳に入ってくる……って彼女、本当に警察を呼んでいたんだ!それが衝撃的でぼくたちは大きく口を開けてしまった。
その時、宮古さんはぼくたちに向いて話をしようとする。
「ねえ。君たちは帰ってもらいたいんだけど……いいかな。警察には勘違いだって伝えておくから」
「えっ!?」
この言葉に東堂さんも目を見開いて、驚いていた。彼女はスマートフォンに入っていた画像の記録を見せた。
「これ、ぼくが許可して取ってもらった奴だから大丈夫」
そう言った彼の目は左右上下に泳いでいた。これが嘘だということは一目瞭然である。
その次に古月さんが彼の近くに行き、ぼくたちがギリギリ聞き取れるほどの声でこう囁いた。
「貴方に届けられた下着……調べられるよ。宛先不明でも……たぶん」
「いい。そんな手間はいらないよ。いたずらってことで軽く流しておいてくれ」
彼は気絶した彼女を抱え上げ、答えを出した。
古月さんはそれに黙って頷き、ぼくたちに命令する。
「完全犯罪、失敗。帰るわよ?」
「ああ!」
「ええ!」
宮古さんはヤンデレ?である浜野先輩と共に大きな責任という荷物を背負ってくことを選択したのだ。たぶん、宮古さんが浜野さんを怪我をさせてしまったことがそれに関係しているだろうけれど。……ぼくには、その選択肢が無理矢理生まれた愛なのか……もともと育まれていた恋なのか……はたまた今、ぼくたちの口論を聞いて生まれてきた好意なのか。知ることもできないし、知りたくもない。
ただ言うことができるのは、彼と彼女が幸せになる道を探そうとしていること……それしか分からない。
あっ!?まだ、分かることがあった。
今日の月は、いつにも増して奇麗だなあ!……それだけだ。
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