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2ndプロジェクト 殺人詐欺の怪奇談
24.現場検証と幽霊の謎
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「はいはい。陽介君も落ち着いてね。君が燃えてりゃ、そのまま真実も灰になって見えなくなるよ……」
「誰がうまいこと言えと。……けど、許せませんね。息子のせいにするなんてさ。何が目当てなんでしょうか」
東堂さんは同意の意味で首を縦に振った後、振り返って家の中を覗いていた。それはそれは、悪魔のような微笑みで。
一体、何をしようというのか。不安になる。
古月さんは腕を組んで、彼女を見張っていた。
「もしかしてだけど、刑事の目を盗んで……再調査しようだなんて言わないわよね」
「しないよ。ただ。刑事さんに聞きたいことがあるだけだよ。被害者の死亡時刻とかさあ、どうやって亡くなったのか。とかさ」
「教えてくれるわけないでしょ」
確かに推理には不可欠な死因と死亡推定時刻。見たところ、鉄製の置物で撲殺しているように見えたが真相は分からない。意外なところから筍の如く、ひょっこりと顔を出すのだから。
……そうでもしなければ、犯人。警察が来て、三分で捕まってるはずだよな。
焦る気持ちに反応していたのか、ぼくの制服は濡れていた。このまま犯人が逃げたら……と思うと、暗い物置小屋に閉じ込められたような気分になる……そんなことをさせないためにも、刑事からどうやって情報を聞き出すかだ。
「古月さん。賄賂をして」
「さすがに嫌よ。そもそもこの場にいる刑事を納得させられる金額なんて持ち合わせてないから」
そう言うと、彼女は顔を傾かせ何かを考え始めた。……そうだ!
あの計画で行こう!一つの案を導き出したぼくは、東堂さんを引き連れて捜査中の家に潜り込んだ。
「いこう……」
「きっとアイデアがあるのね」
「うん」
抜き足差し足で見つからないようにしたのだが、廊下のところで背後から来た刑事に取り押さえられてしまった。ぼくたちを追い出した刑事だ。東堂さんは「鈴岡警部」と呼んでいる。
彼に向けて言葉を発するのに少し時間はかかったが、言いたいことは伝えられたと思う。
「ぼ、ぼくたちはその。あの。死ぬ前の……その被害者の悲鳴を聞いたんです。その、えっと」
「用事があって、息子の湯治さんに電話したんです。その記録は家のそこの電話を調べればわかります」
「あっ。東堂さんありがとう。で、ぼくは被害者の最期を耳にした……そういうことです」
その情報に興味を持ってくれたみたいだ。彼は急いで、近くにいた刑事を「通話記録」について調査するように命令していた。
そして歯ぎしりをしながら、ぼくの顔を直視してきた。緊張して、瞼までもが震える。予想はしていた。しかし、ここまで刑事というものに迫力があるなんて知りもしなかった。
「……で、通話内容はなんだったんだ?」
ぼくの背中に寒気が走る。「完全犯罪計画部」の活動。詐欺の練習だと言ってしまったら、間違いなく逮捕されるだろう。足を地面に擦りつけている内に東堂さんがその返答をしていた。
「湯治さんとは小さい頃、面倒を見てもらった人なんですよ。陽介君。ああ。この子のことです」
この子呼ばわりされてしまった……それにしても、体が硬直してしまう。緊張と表すべきなのか。恐怖と言うべきなのか。
そこに彼は不信感を覚えたらしい。
「……陽介……思い切り目が泳いでいるが、信頼して大丈夫なのか? まあ、東堂の情報提供は役に立つこともあるから、いいんだが」
「やっぱり、彼。警察というものに慣れてないんだと思います。いますよね。何もしてないのにオドオドしてる人」
「まあ。いるから……変には思わないな。すまんすまん、緊張させちまったかな」
彼女のフォローのおかげで、何とかこの場をやり過ごすことができた。
一瞬、手錠が突き出されるところが幻覚として映し出されたのだが、それが現実ではないことに気づき、少しだけほっとした。
「で、時間はいつか分かるか」
この問いを待っていました。東堂さんの方は目を光らして「早く答えて」と言うかのように肘をぼくの横っ腹に突いてきた。
「ちょ、痛いよ」
「あっごめん。で」
「ええ。刑事さん。ぼくが聞いたのは確か」
「それで…………銀行に行けばいいんだよな。明日でもいいですか。ほら、後十分で銀行閉まってしまいますし……それでいいですよね」
この言葉にヒントが息を潜めているはずだ。銀行の営業時間は法律で決まっていて、都合がない限り、午後三時には必ずシャッターを下ろさなければならないのだ。テレビで見た知識がここで役に立つとは思わなかった……
「つまり……二時五十分頃に被害者は死亡したのだと思います」
「妙だな」
「え?」
彼は大きく息を吸い込んで頬を掻きながら、こちらに時計を見るように伝えた。
「今、何時だ」
「えっと、五時です……もう」
「結構、早いのね」
「ああ……そうだな」
もうこんなに時間が経っていたのか。そのことに驚いて、少しの間沈黙に辺りを支配させてしまった。
それを破る鈴岡警部。
「で。いいか? さっき……四時半くらいに死後硬直が始まったと連絡があった」
東堂さんがそこに言葉を入れる。
「と言うことは、電話があった二十分前に被害者はし、死んでいた。……じゃあ、出たのは幽霊ってこと? いやあああ」
困り顔の東堂さん。彼女、幽霊が怖いのか。それはどうでもいいか……
ぼくの方はと言うと不思議な話を聞き入れて、焦っている。あるはずもない妄想をしてしまった。(国家ぐるみの事件で、被害者の死亡時刻を改ざんする必要があった等)
「誰がうまいこと言えと。……けど、許せませんね。息子のせいにするなんてさ。何が目当てなんでしょうか」
東堂さんは同意の意味で首を縦に振った後、振り返って家の中を覗いていた。それはそれは、悪魔のような微笑みで。
一体、何をしようというのか。不安になる。
古月さんは腕を組んで、彼女を見張っていた。
「もしかしてだけど、刑事の目を盗んで……再調査しようだなんて言わないわよね」
「しないよ。ただ。刑事さんに聞きたいことがあるだけだよ。被害者の死亡時刻とかさあ、どうやって亡くなったのか。とかさ」
「教えてくれるわけないでしょ」
確かに推理には不可欠な死因と死亡推定時刻。見たところ、鉄製の置物で撲殺しているように見えたが真相は分からない。意外なところから筍の如く、ひょっこりと顔を出すのだから。
……そうでもしなければ、犯人。警察が来て、三分で捕まってるはずだよな。
焦る気持ちに反応していたのか、ぼくの制服は濡れていた。このまま犯人が逃げたら……と思うと、暗い物置小屋に閉じ込められたような気分になる……そんなことをさせないためにも、刑事からどうやって情報を聞き出すかだ。
「古月さん。賄賂をして」
「さすがに嫌よ。そもそもこの場にいる刑事を納得させられる金額なんて持ち合わせてないから」
そう言うと、彼女は顔を傾かせ何かを考え始めた。……そうだ!
あの計画で行こう!一つの案を導き出したぼくは、東堂さんを引き連れて捜査中の家に潜り込んだ。
「いこう……」
「きっとアイデアがあるのね」
「うん」
抜き足差し足で見つからないようにしたのだが、廊下のところで背後から来た刑事に取り押さえられてしまった。ぼくたちを追い出した刑事だ。東堂さんは「鈴岡警部」と呼んでいる。
彼に向けて言葉を発するのに少し時間はかかったが、言いたいことは伝えられたと思う。
「ぼ、ぼくたちはその。あの。死ぬ前の……その被害者の悲鳴を聞いたんです。その、えっと」
「用事があって、息子の湯治さんに電話したんです。その記録は家のそこの電話を調べればわかります」
「あっ。東堂さんありがとう。で、ぼくは被害者の最期を耳にした……そういうことです」
その情報に興味を持ってくれたみたいだ。彼は急いで、近くにいた刑事を「通話記録」について調査するように命令していた。
そして歯ぎしりをしながら、ぼくの顔を直視してきた。緊張して、瞼までもが震える。予想はしていた。しかし、ここまで刑事というものに迫力があるなんて知りもしなかった。
「……で、通話内容はなんだったんだ?」
ぼくの背中に寒気が走る。「完全犯罪計画部」の活動。詐欺の練習だと言ってしまったら、間違いなく逮捕されるだろう。足を地面に擦りつけている内に東堂さんがその返答をしていた。
「湯治さんとは小さい頃、面倒を見てもらった人なんですよ。陽介君。ああ。この子のことです」
この子呼ばわりされてしまった……それにしても、体が硬直してしまう。緊張と表すべきなのか。恐怖と言うべきなのか。
そこに彼は不信感を覚えたらしい。
「……陽介……思い切り目が泳いでいるが、信頼して大丈夫なのか? まあ、東堂の情報提供は役に立つこともあるから、いいんだが」
「やっぱり、彼。警察というものに慣れてないんだと思います。いますよね。何もしてないのにオドオドしてる人」
「まあ。いるから……変には思わないな。すまんすまん、緊張させちまったかな」
彼女のフォローのおかげで、何とかこの場をやり過ごすことができた。
一瞬、手錠が突き出されるところが幻覚として映し出されたのだが、それが現実ではないことに気づき、少しだけほっとした。
「で、時間はいつか分かるか」
この問いを待っていました。東堂さんの方は目を光らして「早く答えて」と言うかのように肘をぼくの横っ腹に突いてきた。
「ちょ、痛いよ」
「あっごめん。で」
「ええ。刑事さん。ぼくが聞いたのは確か」
「それで…………銀行に行けばいいんだよな。明日でもいいですか。ほら、後十分で銀行閉まってしまいますし……それでいいですよね」
この言葉にヒントが息を潜めているはずだ。銀行の営業時間は法律で決まっていて、都合がない限り、午後三時には必ずシャッターを下ろさなければならないのだ。テレビで見た知識がここで役に立つとは思わなかった……
「つまり……二時五十分頃に被害者は死亡したのだと思います」
「妙だな」
「え?」
彼は大きく息を吸い込んで頬を掻きながら、こちらに時計を見るように伝えた。
「今、何時だ」
「えっと、五時です……もう」
「結構、早いのね」
「ああ……そうだな」
もうこんなに時間が経っていたのか。そのことに驚いて、少しの間沈黙に辺りを支配させてしまった。
それを破る鈴岡警部。
「で。いいか? さっき……四時半くらいに死後硬直が始まったと連絡があった」
東堂さんがそこに言葉を入れる。
「と言うことは、電話があった二十分前に被害者はし、死んでいた。……じゃあ、出たのは幽霊ってこと? いやあああ」
困り顔の東堂さん。彼女、幽霊が怖いのか。それはどうでもいいか……
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