歌わない合唱部員と放送規制

歌わない合唱部員と放送規制！

モノローグ

　僕は右目に眼帯をつけ、傲慢に振る舞う女子高生のお嬢様を変だとは思わない。
　彼女は目立ちたがりやなのだろう。

　僕の飼っている文鳥をビーフジャーキーで餌付けしようとした男子高生だって、変とは思わない。
　文鳥が痩せているように見えたから。脂肪が必要だったんじゃないかと……彼なりの気遣いだったのだろう。
　余計なお世話だ。

　合唱経験が長いはずなのに、初心者の僕から知識を求めようとする弱気な女子高生も変ではない。
　たぶん、小さな声でしか歌えない僕の知識は彼女の知っているものとは別だから。

　十人十色。人によって考え方も違うし、困難を乗り越える術もバラバラだから。
　やることには理由があったんだ。

　合唱部の部室には、使い終わった楽譜が並んでいる。
　合唱曲、Jポップ、バンドはたまたボカロの曲まで様々な種類が何冊もあり、普通の人が整理しようとしたら、三時間はかかるかもしれない。
　その作業を十分もかけず、終わらせた少女が窓のヘリに座って読書をしている。
　
　彼女だけは変わっていた。