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第三章 再会……そして失くした記憶
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しおりを挟む「ネム兄ちゃん、今頃真一どうしているかな」
「そうだな、きっと『能ある猫は爪隠す』の出版に向けて頑張っているのだろうな」
「これでよかったんだよね」
「うむ、少しばかり寂しいがあいつを巻き込むわけにはいかないからな」
「ああ、真一と遊べないなんて残念。楽しかったのになぁ。本当に、私たちの記憶消しちゃったんでしょ」
ネムは頷き丸くなり「もうミコも寝なさい。そして、忘れることだ」と呟いた。
ミコは溜め息交じりに「はーい」と返事をして静かになった。チラッと薄目を開けて見れば、ミコもまた丸くなって目を閉じていた。
これでよかったんだ、きっと。あいつのためだ。
お茶に眠り薬を入れた後、ダイの能力で真一の記憶の一部を消し去ってもらった。ネムのことはもちろん、ネムに関わるすべての記憶を消し去ってもらった。真一だけではない、編集長の三田の記憶も同じようにダイには頼んである。ネムのことを知っているのは二人だけだった。消し去ると同時に、ネムが書き上げた作品は真一の作品だという記憶も植え付けてもらった。本当にダイの能力はすごいものだ。ただダイの力はかなりの危険性を孕(はら)んでいることは間違いない。
ふと今の記憶は、真実なのだろうかと懸念を抱く。ダイに記憶を操作されていることもありえる。絶対にないとは言い切れない。信じてやりたいところだが、そうもいかない現実があった。ネムは目を閉じながら黙考していた。
だからこそ、この猫の街に真一がいることは危険だった。真一の記憶の書き換えなど本意ではない。けど致し方ない。
ヤドナシからの経過報告があって、こうしたほうがいいと判断した結果だった。ミコはまだ真相をしらない。真一の記憶を消さなくてもと思っていたはずだ。けど、真一を思えばこその判断だった。ダイに記憶を消してもらえば、真一に危害は加わらない。
なぜなら……。
ネムは嘆息をつき、天を仰いだ。
なんで、こんなことに。まだ、可能性があるというだけだ。この権力争いにダイが関係しているとはまだ確かではない。ダイはスサに荷担しているのだろうか。あくまでも疑いがあるだけだ。もしも事実だとしたら、何か策を練らなくてはならない。ヤドナシの捜査能力は長けている。きっと間違いないのだろう。
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