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翔太とさとみの出会い
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「はじめまして、私、さとみです」
翔太は叫び声をあげてすってんころりとしりもちをついてしまった。
「翔太、だいじょうぶかい。ほらほら」
翔太はぽかーんと口をあけたままおばあちゃんの顔をみつめた。
「どうしちまったんだい。何が見えたんだい」
「お、おばあちゃん、こ、この中に女の子が……」
「女の子。なにバカなこと言っているんだい。この子ったらもう」
おばあちゃんは翔太の手から空きカンを取ってのぞき込んだ。おばあちゃんは「あわあわあわ」と、口を震わせてくずれるように座り込んでしまった。空きカンがおばちゃん手からコロコロと転がり落ちる。
「翔太、これはいったいどういうことだい。わたしゃ夢でも見ているのかい」
「おばあちゃん、夢じゃないよ」
「ニャン」
「ほら白ネコさんだってそう言っているよ。だから、こんなに大事なんだよ。この空きカンがさ」
白ネコはユラユラとしっぽをゆらしていた。なんだか喜んでいるみたいだ。
「白ネコさん、この空きカン、ぼくにくれないかなぁ」
翔太は転がっている空きカンを拾いあげて、白ネコに聞いた。翔太の言葉を聞いた白ネコはネコパンチをくりだし空きカンを翔太からうばうとくわえて一歩一歩後退りしていく。
「おや、翔太。白ネコちゃんはイヤみたいだね」
「うん、そうだね。ごめんね、白ネコさん持っていかないから空きカンの中のさとみちゃんと話をさせてくれないかなぁ」
今度は「ニャー」と一鳴きすると、トコトコトコと軽やかに翔太のところへ歩いてきた。翔太は空きカンを白ネコから受け取るとさとみと話しはじめた。
「あの、さっきはごめんね。おどろいちゃってさ」
なんだか顔が熱くなってきた。もしかしたらリンゴみたいに真っ赤なほっぺになっているかも。
「気にしなくていいよ。おどろくのも無理ないもん。それより、お名前教えて」
「あっ、そうだね。まだ言っていなかったもんね。ぼく、翔太っていうんだ。よろしく」
「こちらこそ、よろしく。うふ」
さとみはニコニコしていた。その笑顔を見ていると、空きカンの中に妖精が住んでいるかのように翔太には思えた。気づくと自然に笑顔になっていた。その様子を白ネコは置物のようにじっとして見続けていた。
おばあちゃんはいつの間にかだれもお客のいないお店の中にもどって小さなイスにこしかけてぶつぶつ何かつぶやいていた。よほど驚いたのだろう。
翔太も最初は心臓が飛び出るくらいびっくりしたけど、さとみのかわいさに楽しくなっていろんな話をし続けた。どれくらい話をしたのだろう。だいぶ長い間話していたのかもしれない。
気づくとおばあちゃんは、こっくりこっくり頭を上下ゆらして居眠りをしていた。そのおばあちゃんの寝顔をオレンジ色の夕陽が照らしていた。
いつの間にか夕暮れ時になっていた。
「さとみちゃん、ぼく、もう帰るね。お母さんが心配しているといけないから」
「そっか、帰っちゃうのか」
さとみの顔は今にも雨が降ってきそうなくらい暗くなっていた。翔太は「ごめんね、明日また来るからさ」とつぶやいて空きカンを白ネコにたくすと、走り出した。背後から白ネコの鳴き声が微かに聞こえてきた。チラッとだけ後ろを振り返ると、大きくなってゆらめきながらしずむ夕陽を背にして白ネコがしっぽをゆらせていた。
また会いに来るからね。そう思って家に向かってかけていく。なんとなく胸の奥がチクリと痛んでいた。なぜだかわからないけど。
翔太は叫び声をあげてすってんころりとしりもちをついてしまった。
「翔太、だいじょうぶかい。ほらほら」
翔太はぽかーんと口をあけたままおばあちゃんの顔をみつめた。
「どうしちまったんだい。何が見えたんだい」
「お、おばあちゃん、こ、この中に女の子が……」
「女の子。なにバカなこと言っているんだい。この子ったらもう」
おばあちゃんは翔太の手から空きカンを取ってのぞき込んだ。おばあちゃんは「あわあわあわ」と、口を震わせてくずれるように座り込んでしまった。空きカンがおばちゃん手からコロコロと転がり落ちる。
「翔太、これはいったいどういうことだい。わたしゃ夢でも見ているのかい」
「おばあちゃん、夢じゃないよ」
「ニャン」
「ほら白ネコさんだってそう言っているよ。だから、こんなに大事なんだよ。この空きカンがさ」
白ネコはユラユラとしっぽをゆらしていた。なんだか喜んでいるみたいだ。
「白ネコさん、この空きカン、ぼくにくれないかなぁ」
翔太は転がっている空きカンを拾いあげて、白ネコに聞いた。翔太の言葉を聞いた白ネコはネコパンチをくりだし空きカンを翔太からうばうとくわえて一歩一歩後退りしていく。
「おや、翔太。白ネコちゃんはイヤみたいだね」
「うん、そうだね。ごめんね、白ネコさん持っていかないから空きカンの中のさとみちゃんと話をさせてくれないかなぁ」
今度は「ニャー」と一鳴きすると、トコトコトコと軽やかに翔太のところへ歩いてきた。翔太は空きカンを白ネコから受け取るとさとみと話しはじめた。
「あの、さっきはごめんね。おどろいちゃってさ」
なんだか顔が熱くなってきた。もしかしたらリンゴみたいに真っ赤なほっぺになっているかも。
「気にしなくていいよ。おどろくのも無理ないもん。それより、お名前教えて」
「あっ、そうだね。まだ言っていなかったもんね。ぼく、翔太っていうんだ。よろしく」
「こちらこそ、よろしく。うふ」
さとみはニコニコしていた。その笑顔を見ていると、空きカンの中に妖精が住んでいるかのように翔太には思えた。気づくと自然に笑顔になっていた。その様子を白ネコは置物のようにじっとして見続けていた。
おばあちゃんはいつの間にかだれもお客のいないお店の中にもどって小さなイスにこしかけてぶつぶつ何かつぶやいていた。よほど驚いたのだろう。
翔太も最初は心臓が飛び出るくらいびっくりしたけど、さとみのかわいさに楽しくなっていろんな話をし続けた。どれくらい話をしたのだろう。だいぶ長い間話していたのかもしれない。
気づくとおばあちゃんは、こっくりこっくり頭を上下ゆらして居眠りをしていた。そのおばあちゃんの寝顔をオレンジ色の夕陽が照らしていた。
いつの間にか夕暮れ時になっていた。
「さとみちゃん、ぼく、もう帰るね。お母さんが心配しているといけないから」
「そっか、帰っちゃうのか」
さとみの顔は今にも雨が降ってきそうなくらい暗くなっていた。翔太は「ごめんね、明日また来るからさ」とつぶやいて空きカンを白ネコにたくすと、走り出した。背後から白ネコの鳴き声が微かに聞こえてきた。チラッとだけ後ろを振り返ると、大きくなってゆらめきながらしずむ夕陽を背にして白ネコがしっぽをゆらせていた。
また会いに来るからね。そう思って家に向かってかけていく。なんとなく胸の奥がチクリと痛んでいた。なぜだかわからないけど。
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