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6章 錦秋
5 始まり※
しおりを挟む学会から帰って研究室に顔を出すと、室島がにやにやと笑みを浮かべて自分の個室に招いて言った。
「お疲れ、中谷くん。学会、無事うまくいったって須藤くんから聞いたよ。やっぱり君の面倒はあの子に任せて正解だったな!」
「は、はあ」
いつまで経ってもこの調子のよさには慣れない――そう優人が思っていると、室島は続けた。
「おや、もう就活も学会も終わって、すっかりやり遂げ幸せモードか?それにはまだ少し早いぞ」
幸せモード――その言葉に優人は顔が火照るのを感じた。
「いや、そんな訳では……」
「そうか?最後までしっかり須藤くんに見てもらうんだぞ」
「は、はい!」
室島の個室から出たあとで、優人は自分のデスクに戻りながら思った。
――室島先生にも言われるくらい、顔に出てるのだろうか。
実際、就活も終わり卒業論文の目処も立ったのだから、こうなるのもしょうがないと思えた。
それに何より須藤の抱えている闇を知って、その上で彼を受け入れて。気持ちも身体も繋がった今、顔に出てしまうのは自分ではどうすることもできなかった。
ふと後ろから人の気配を感じて優人は振り返る。
そこにいたのは須藤だった。作業中なのか白衣をまとい、穏やかな笑みを浮かべていた。
「お疲れ。室島先生に捕まってたみたいだな」
「……はい。すっかり気が抜けているように見えるから、しっかり須藤さんに見てもらえって言われました」
「……まあ、しょうがないな。学会発表の内容で卒論は書けるんだから。それに――」
そう言いながら、須藤は優人の肩に手を置いた。これまで大学構内では少しも身体に触れようとしなかったというのに。
「須藤さん……?」
まじまじと顔を見ると、彼はどこか色っぽく目を細めて言った。
「……とりあえず、今から僕の実験に付き合ってもらおうかな」
そうしてふたりが移動したのは、測定機器の置かれたとある共用の実験室だった。
鍵付きで暗室にもなる場所で、どうやら須藤はこれから夜までこの部屋の予約を取っているらしい。
中に入った瞬間、カチャリと鍵の閉まる音が聞こえ、須藤はこちらに微笑みを向けた。
それを合図にふたりは抱きしめ合い、互いに口付けを交わし始めた。
「んっ……ふっ……こんなところで……実験はいいんですか?」
「下準備は終わっているし、正直いつでも構わないんだ」
「そうですか」
そう言われた優人は気付いた。どうやらこれは正真正銘須藤からのお誘いらしい。
――それなら。
優人は口を貪りながら、須藤のズボンと下着を下ろし、背後に回って白衣をたくし上げた。
むき出しのふたつの柔らかな肉の間を弄り、穴へと指を伸ばす。
「うわ……もうぐぱぐぱじゃないですか」
「君があれだけ激しく求めたから……んっ」
「だって、須藤さんエロすぎなんですもん」
確かに須藤が言う通り、あの東北のホテルで延々と求めてしまったのは事実だった。
ただそれはどうしようもなかった。好きな人とようやくできたという喜びはもちろん、須藤の中が気持ちよすぎたのだ。
男性特有なのだろうか、ぎゅっと吸い付いてものを離さないあの感覚は、一度知った今もう戻れないと思えた。
優人はそうして須藤の穴を広げながら、こみ上げる愛しさを形にしようと剥き出しの尻にキスを落とした。
「ふっ……あっ」
須藤は口付けるたび、ぴくりぴくりと何度も身体を揺らした。そのたび股の間で揺れるものに優人は優しく触れると、先から溢れる先走りを全体に広げ、しごき始めた。
「気持ちいいですか?」
「うん……君の手は……すごく優しいから……んっ」
すっかり緩んだ身体の――須藤の尻の割れ目にものを当てると、穴は物欲しそうにぱくぱくと口を開いた。
――なんて可愛いいんだろう。
優人はたまらず、自分の肉棒で穴の入口を擦った。
「うあっ」
「……須藤さん……欲しいですか?」
「んっ……んんっ」
「……欲しいですか?」
「んっ、もうっ……早く……!」
「わかりました」
須藤の言葉を合図に、ぐちぐちと入口を弄っていたものを穴の中に突き立てた。それはずぶりと一気に奥まで入り、あの耐え難い快楽が優人の身を包みこむ。
「――――っ」
――やっぱり……気持ちいい。
突き抜ける電流のような刺激に動けずにいると、身体の下の須藤も同じように全身をぷるぷると痙攣させていた。
その身を愛しむように口付けながら、優人は思わず言う。
「須藤さんのここ……もうこんなにやらしくなったんですね。……あれ、イッちゃったんですか?」
すると身体を震わせながら、須藤は小さな声で言った。
「ち、違う。声が出ないように……我慢しただけだ」
「大丈夫ですよ。ここ防音になってます」
「それでも…………恥ずかしいんだよ」
「ふふっ、ならもう少し頑張ってください」
「何……――ああっ」
それから優人の腰は止まらなかった。
須藤の快楽に悶える吐息と、ばちゅばちゅと響く卑猥な水音、そして肉がぶつかり合う熱気のなかで、優人の興奮は次第に高まっていく。
「須藤さん……まだ出しちゃ駄目ですよ。その機器……高いんですよね?」
「わ、わかって――あぁっ……あん……ひっ」
そうして、大学の片隅でふたりの夜は更けていった。
実際、学会から戻ったあとの毎日は、こんなことをしてばかりだった。
求めていたのはどちらかというと須藤の方で、こういう予約制の測定室を取って身体を重ね合ったり、飲んだあとそのままラブホに入ったりと、ふたりは好き放題だった。
まるでセックスを覚えたての高校生のように行為を繰り返す中で、須藤にはこのときすでに分かっていたのだろうか。
自分たちに与えられた時間は限りがあり、あと少しで終わりを迎えてしまうことを。
『そんな恋愛、絶対今しかできないよ』
ありさに言われたばかりのこの言葉を、このときの優人は完全に忘れていたのだった。
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