【完結】初恋の女神の弟がなぜか俺にちょっかいを出してくるんだが? ~恋、始まり今いずこ~

上杉

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1 Side 慧

21 どうにかしないと

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 どうしたらいいかわからなかった俺は、とりあえずいまの状況を変える必要があると思い、バイトの帰りに呼び出して話をしてみようと考えた。
 ――すこしでも、この空気を変えなければ。
 そう意気込んだ俺は、土曜の昼前に裏口から店に入った。
 普段なら誉史が先に準備をしていることが多かったので、緊張しながら休憩室に入る。しかしなぜかそこにあいつの姿はなかった。
 どうしたのだろう、俺はそう思い開店準備をするマスターに聞いてみる。
「おはようございます、マスター。誉史まだ来てないんですね」
「あ、慧くんおはよう。……それがね、さっき連絡来たんだけど、今日は体調不良でお休みなんだって」
 そのことばに、これまで風邪を引いたり弱っているあいつの姿を見たことがなかったので、俺は驚く。また同時に、こころの奥底で安心している自分がいることに気づいた。
 俺はひとりそれを叱責する。
 ――何をほっとしているんだ、俺は……。
 面と向かい合うのが気まずいからといって、これではただ問題を先延ばしにしているだけなのだ。
 このときの俺は、確かに気づいていた。
 自分の中に芽生えた恋心は、日を追うたびに大きく膨れ上がって、存在感を増している。
 それは英梨さんのとき以上に自分自身を侵食しており、このままではいつか何も手につかなくなってしまうのではという心配すらあった。
 ――とりあえず、今日はあいつがいない分しっかりやらないと。
 俺は鏡に映る自分の顔を叩いて、表へと向かったのだった。

 夏の暑さが収まりつつある行楽日和ということで、どうやら人々は郊外へと足を運んでいるらしい。喫茶店「みどり」は忙しくはあったものの、十分俺ひとりで対応できる客数だった。
 ――ふう、どうにかなった。
 時刻は十六時。夕方最後のお客様を見送り、少しずつ傾いてきた西の日を感じながらテーブルを拭いていた時だった。
 カランと玄関のベルが鳴り、
「――いらっしゃいませ」
 俺がそう声をかける。
 そこにいたのは、すべてを受け入れるかのような穏やかな微笑みを浮かべた俺の女神――英梨さんだった。
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