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2 Side 誉史
23 休んだ理由
しおりを挟む「はあ……」
川沿いの公園のベンチに座り、俺はそうため息を付いた。
日はとっくに傾き始め、公園の中央に設置された時計は十六時を示している。
――今頃、姉貴と松村さんが家に来ている時間だろう。
俺は座っていたベンチの下に置いていたバスケットボールを手にすると、裏のスリーオンスリー用のコートの中に入った。そして誰もいないそこでゴールに向かってシュートを打ちながら、ぼんやりと考える。
――今日は……いろんなことから逃げてしまった。
まず最初に思い浮かんだのは父と母の顔だった。
結婚の挨拶をしたいから家族みんなで食事がしたい、姉貴にそう言われたのは一ヶ月前のことだった。
正直、俺は嫌だった。それはもちろん姉貴と松村さんに会うことではなく、避けたかったのは離婚してとっくに別の家庭を築いている父と、同居していてもあまり顔を合わせない母と、同じ時間をすごすことだった。
父に関しては、なぜいまさら会わなければならないのかと思うし、また母についてもそれは同様だった。
あの人はいまだ俺がバスケを辞めたことを気にしているみたいで、その理由が自分たちにあるのだといまだ思い込んでいる。そんな人とまともに会話できる気はしなかった。
「…………くそっ」
放ったスリーポイントシュートはリングに当たり、激しい音を立てて跳ね返った。それは俺の心のうちを表しているようで、少し嫌だった。
――まるで……逃げるなと言われているみたいだ。
父と母のこと、そして同時に、最近避けてしまっていた慧の姿が頭に浮かんだ。
そもそも、今日バイトをさぼる気はまったくなかった。なのに今朝母に声をかけられて、予定を理解しているのに催促されて、俺は無性にいらいらしてしてしまった。そして衝動的にここに来たために、落ち着いた今となっては慧に対する後悔の気持ちでいっぱいだった。
学校ですっかり人気者になってしまった彼と、話したいことも確かめたいこともたくさんあったのに。ふたりの時間をすごせるバイトの時間は貴重だったにも関わらず、俺は一時の感情でみすみすそれを逃してしまった。
「…………はあ」
俺はため息をついたあとで、転がったボールをのろのろと拾った。そしてフリースローラインに向かい再度ボールを構える。
さっきよりもゴールへの距離が近づいたにも関わらず、なぜかそれはいつもより遠く見えた。
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