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第1話♢*゚婚約破棄された伯爵令嬢
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「……婚約を、破棄いたします」
その言葉が落とされた瞬間、王城の空気が凍りついた。
王太子レオニス・ヴァレンティアは、
まるで商談でも切り上げるかのような淡々とした口調で、
目の前の令嬢に宣告する。
「理由は、君との心の乖離だ。
僕は、もっと感情の通じる相手と生涯を共にしたいと思った。
それだけのことだよ」
「……承知いたしました、殿下」
セシリア・アルフォードは、王太子の目をまっすぐに見据え、
涼しげにそう答えた。
泣きもせず、声を震わせることもない。
まわりの廷臣や貴族たちがさざめく。
けれどセシリアは、その場で優雅に一礼し、背筋を伸ばしたまま踵を返す。
まるで、自分が捨てられた婚約者ではなく、勝者であるかのように。
だが――。
『冷たい令嬢』『氷の伯爵令嬢』『王太子に見限られた女』
その翌日から、セシリアに向けられる視線は、
まるで疫病でも見るかのように冷たくなった。
かつて敬意を払っていた令嬢たちも、彼女を見ると小声で噂をし、
わざとらしく道をあけていく。
「ま、当然よね。
あんなに愛想がないんじゃ、殿下が飽きるのも無理ないわ」
「それに今の婚約者様、可愛らしいものね。
社交界でも大人気ですもの」
すれ違いざまに囁かれる言葉。
それでも、セシリアは顔色一つ変えず、毅然と歩く。
誰も彼女の心の奥底にある傷に、気づきもしない。
たとえあの日、涙がこぼれそうだったとしても。
***
数日後。伯爵家の屋敷。応接間に一通の封書が届いた。
「……侯爵家から? アレクシス・グレンフィールド……?」
手紙を開いたセシリアの指先が、かすかに震えた。
侯爵アレクシス――
戦場の英雄。若くして爵位を継ぎ、冷酷な決断力で領地を繁栄させた稀代の策略家。
社交界では「近寄り難い男」の筆頭とされている。
そんな彼が、セシリアに「縁談」を申し込んできたというのだ。
理解できなかった。なぜ今このタイミングで、自分に?
答えは手紙の最後に、たった一文で記されていた。
> 「あなたに会いたい。――それだけでは、動く理由にはならないだろうか?」
その文面に、セシリアの胸が、静かに波打つ。
氷のように閉ざされていた心の奥が、ほんの少し、ゆるりとほどけた気がした。
その言葉が落とされた瞬間、王城の空気が凍りついた。
王太子レオニス・ヴァレンティアは、
まるで商談でも切り上げるかのような淡々とした口調で、
目の前の令嬢に宣告する。
「理由は、君との心の乖離だ。
僕は、もっと感情の通じる相手と生涯を共にしたいと思った。
それだけのことだよ」
「……承知いたしました、殿下」
セシリア・アルフォードは、王太子の目をまっすぐに見据え、
涼しげにそう答えた。
泣きもせず、声を震わせることもない。
まわりの廷臣や貴族たちがさざめく。
けれどセシリアは、その場で優雅に一礼し、背筋を伸ばしたまま踵を返す。
まるで、自分が捨てられた婚約者ではなく、勝者であるかのように。
だが――。
『冷たい令嬢』『氷の伯爵令嬢』『王太子に見限られた女』
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まるで疫病でも見るかのように冷たくなった。
かつて敬意を払っていた令嬢たちも、彼女を見ると小声で噂をし、
わざとらしく道をあけていく。
「ま、当然よね。
あんなに愛想がないんじゃ、殿下が飽きるのも無理ないわ」
「それに今の婚約者様、可愛らしいものね。
社交界でも大人気ですもの」
すれ違いざまに囁かれる言葉。
それでも、セシリアは顔色一つ変えず、毅然と歩く。
誰も彼女の心の奥底にある傷に、気づきもしない。
たとえあの日、涙がこぼれそうだったとしても。
***
数日後。伯爵家の屋敷。応接間に一通の封書が届いた。
「……侯爵家から? アレクシス・グレンフィールド……?」
手紙を開いたセシリアの指先が、かすかに震えた。
侯爵アレクシス――
戦場の英雄。若くして爵位を継ぎ、冷酷な決断力で領地を繁栄させた稀代の策略家。
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そんな彼が、セシリアに「縁談」を申し込んできたというのだ。
理解できなかった。なぜ今このタイミングで、自分に?
答えは手紙の最後に、たった一文で記されていた。
> 「あなたに会いたい。――それだけでは、動く理由にはならないだろうか?」
その文面に、セシリアの胸が、静かに波打つ。
氷のように閉ざされていた心の奥が、ほんの少し、ゆるりとほどけた気がした。
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