“最期”なんて言わせない

華愁

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第一話 “最期”なんて言わせない

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「犀星君、いるかい?」
 
それは、ある夏の日の夜だった。
 
妻のとみ子は朝子と朝巳を連れて一泊二日の小旅行に行っていた。
 
「芥川君? どうしたんだい?」

玄関を開けると、そこには、思い詰めた表情の芥川君が立っていた。
 
「いきなり来て、すまない……」
 
「とりあえず、上がって。

今日は僕一人だから、麦茶くらいしか出せないけど……」
 
芥川君を僕の書斎に案内して、台所に戻り、
麦茶を湯飲みに入れて戻った。

「はい、麦茶」
 
「ありがとう、犀星君」
 
麦茶も飲み終わり、少しした頃、芥川君が突然謝罪してきた。
 
「犀星君、ごめん」
 
「いきなり、どうしたんだい?」
 

芥川君に謝られるようなことはされていない。
 
「今からすることに対して前以て謝ったんだ……」
 
意味がわからずに聞こうとしたら、口づけをされた。
 
「犀星君、君を愛してるんだ…… 見てて」 

唇を離すと、着物をはだけさせ、僕の目の前で自慰を始めた。
 
「はしたなくて、ごめん……

実は、いつも、犀星君を思いながら、自慰してるんだ」

目の前で始まった自慰にも驚いたけど、
芥川君が僕を愛していて、僕を思いながら
自慰をしているということに驚いた。
 
「はしたないなんて思わないけど……」
 
まさか、芥川君が僕を愛してくれていたとは……
 
「それに、芥川君の痴態を見せられて、ほら」
 
芥川君の空いている左手を僕のモノに誘導した。
 
「全く、責任、取ってくれるかい?」

わざと、意地悪な言い方をした。
 
「犀星君が……嫌じゃなかったら……んん、
僕のこと、抱いてほしい……ぁ、んっ……」
 
時折、喘ぎ声が混ざりながら懇願されて、
僕の理性は磨り減りそうだった。

「いいのかい? 僕と一線越えてしまったら、後戻りできないよ?」

「犀星君に抱いてもらえたら、この世の未練が無くなるから……」
 
芥川君の言葉が引っ掛かった。
 
「待って芥川君、それはどういう意味だい!?」
 
家に来た時から思い詰めたような表情をしていたが……
 
「僕は自害しようと思っていたんだ……
最近、ますます、胃が食事を受け付けなくなってきてね……
だけど、“最期”に犀星君に会いたかった」

「君をこの世に留めておく術があるなら
僕は何でもするから自害なんてしないでほしい……」

「犀星君…… 抱いて……」

僕が抱いて芥川君が自害を止めてくれるなら……
 
「わかった。だけど、約束しておくれ。

必ず毎週、三回は僕に抱かれにくると」

自分がどれだけ、狡い言い方をしているかわかっているが
優しい芥川君は僕との約束を破ったことはない。
 
「……狡いなぁ。君にそう言われたら
自害なんてできないじゃないか。

わかった、毎週、三回、抱いてね」

やっぱり、芥川君は僕との約束を破れない。
 
「もちろんだとも。その前に、“今”だね。

一回、達っていいよ、ほら、達って?」

芥川君の耳元で意識して低い声で囁いた。
 
「あ!! ぁぁっ!!犀星君っ、ぁっ、ぁっ……」
 
「よくできました」

射精の疲労感で脱力した芥川君を抱き止めた。

少し、休憩して、僕たちは 身体を繋げた。  

――  

事後、初めての行為で疲れて
眠ってしまった芥川君を布団に寝かせた。
 
僕は少しだけ仕事をするために文机の前に座った。
 
「ふふ、さっきまで散々、僕に啼かされ、
ねだるように何度も求めていたのに……可愛寝顔」
 
「……犀星君」 

寝言? 

夢にまで僕がいるとは本当に光栄だね。

汗で張り付いている髪を  避けてあげると、
僕の手にすがり付いて来た。  

「犀星君……僕を置いて行かないで……行っちゃ嫌だ!!」

置いて行こうとしたのは芥川君の方だろう……全く。
 
「芥川君、芥川君、起きて」

忍びなかったが起こすことにした。
 
「犀星君?よかった、いてくれた……」 
 
「少し仕事をしていただけで、君を抱いておいて、 
僕が目を離すわけないだろう。

なんなら、きっちり、“身体”に覚えさせるかい? 

最初に僕を置いて行こうとしたのは芥川君の方だしね?」

布団の中に手を入れ、着物の上から芥川君の太ももを撫で回した。

「ぁっ……犀星君、だめ……」

 口では“だめ”と言っているが身体は正直で無意識に腰が動いている。

「もう一度、抱いていいかい?」

  耳元で低い声で囁くとビクッと芥川君の身体が反応した。

「そんな反応をされたら “了承”と見なすよ?」

 言葉と行動が相反しているのが可愛くて、
つい、意地悪したくなる。

「僕を犀星君のものにしてほしい」  

 芥川君はいとも容易く僕の理性を壊してくれる。  
 
「意味、わかっているかい?」

“僕のものになりたい”ということは芥川君の
結腸最奥まで僕のモノを挿入いれるということだ。

早くとねだるように口付けされた。

「わかった、芥川君を僕のものにしてあげる」  
  
芥川君の足を開き、僕のモノを
一気に結腸最奥までを挿入いれた。  
 
「かひゅ、ぁ、ぁ、」 
 
  一瞬、呼吸を忘れた芥川君を抱き締めて、更に密着する。
 
「ほら、深呼吸して」

そう言いながらも僕は律動を止めない。
 
「芥川君、いや、“龍之介君”、これで、君は僕のものだよ」

「名前で呼んでくれたことも、
犀星君のものになれたことも嬉しい……」
 
「もう、自害するなんて、二度と言わないでおくれよ?」

  時折、喘ぎ混じりの声で答えてくれた。  
 
 「んん、わかった……僕は犀星君のものだから、  
君の許可無しに自害したりしない……」

芥川君改め、龍之介君に口づけした。
 
「さっき、龍之介君にいきなり口づけされて、
自慰を始めた時は驚いたけど、
僕のものになってくれてありがとう」

二度目の事後、僕たちは
二人で一つの布団眠った。
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