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番外編② 忘年会
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「よう、芥川。最近、顔色がいいじゃないか」
龍之介君に声をかけてきたのは川端君だった。
「川端君、久しぶりだね。
犀星君のおかげでね、とみ子さんも料理を丁寧に教えてくれるし」
「芥川先生、お料理なさるんですか!?」
近くにいた若い編集者が食いぎみに聞いて来て
僕はとっさに龍之介君を背に庇った。
「最近始めたばかりでね……
だけど、“旦那様”には美味しい物を食べてもらいたいから」
背に庇った龍之介君はそのまま、僕に抱き着いた。
「龍之介君!!」
「言っちゃ駄目だった? 四千円の“結納金”を出してくれたのに?」
周りからは驚きの声が上がった。
【旦那様!?】【四千円!? かなりの大金だよな……】【室生先生も芥川先生も既婚者ではなかったか?】等々。
「間違ってはないけどね、龍之介君は仕方ないな」
事情を知る寛君でさえ飲みかけの酒を噴き出しそうになっている。
「犀星、四千円なんて大金……」
「実際に、龍之介君のために四千円出したのは事実だよ。
四千円ぽっちで龍之介君を死の縁から
救い出せたんだから安いものさ。
僕の妻のとみ子も龍之介君の妻の文さんと
龍之介君の長男の比呂志君は
僕たちの関係を認めてくれているんだよ。
記事にしたいなら好きして構わないよ?
僕が龍之介君を心から愛していることに変わりはないからね」
「俺も萩原も中野も、お前らの事情は知っているが
まさか、龍之介が公の場で言うとは思っていなかった」
「僕の旦那様は最高だって自慢したかったんだよ。
犀星君がいなかったら、僕は今この場にいなかっただろうからね」
「それはどういう意味ですか?」
毎日新聞の記者が手帳とペンを持って龍之介君の言葉を待っている。
「犀星君がいなかったら、僕は夏の間にこの世から
いなくなっていたということさ。
僕は夏の盛りに自害するつもりだった。
だけど、死ぬ間際に犀星君に会いたくなってね……
力一杯、僕を引き止めてくれたのさ。
そして、“結納金”という名目で
四千円もあった義兄の借金を払ってくれたんだよ」
龍之介君は言い終えると僕の背中にぎゅっと抱き着いた。
「僕の奥さんは可愛らしね」
腕を後ろに回して、龍之介君の頭を撫でた。
「えへへ、犀星君、大好き」
「おやおや、今日は随分と甘えただね?」
外で甘えてくるのは珍しい。
「僕の命は犀星君に預けているんだって言いたかったの」
口調まで幼子のようだ。
「そうだね、龍之介君の手綱を持っているのは僕だよ」
龍之介君を背から前に連れて来て額に口づけた。
「もぅ、犀星君てば、皆の前で……でも、嬉しい」
「僕も龍之介君の笑顔が見れて嬉しいよ。
さて、記者諸君、明日の朝刊の記事を楽しみにしているよ。
帰ろうか、龍之介君」
「うん、手、繋いでくれる?」
「もちろんだとも」
本当に僕の妻は可愛らしい。
寛君や朔太郎君たち馴染みの皆に手を振って会場になっていた
帝国ホテルを後にした。
龍之介君に声をかけてきたのは川端君だった。
「川端君、久しぶりだね。
犀星君のおかげでね、とみ子さんも料理を丁寧に教えてくれるし」
「芥川先生、お料理なさるんですか!?」
近くにいた若い編集者が食いぎみに聞いて来て
僕はとっさに龍之介君を背に庇った。
「最近始めたばかりでね……
だけど、“旦那様”には美味しい物を食べてもらいたいから」
背に庇った龍之介君はそのまま、僕に抱き着いた。
「龍之介君!!」
「言っちゃ駄目だった? 四千円の“結納金”を出してくれたのに?」
周りからは驚きの声が上がった。
【旦那様!?】【四千円!? かなりの大金だよな……】【室生先生も芥川先生も既婚者ではなかったか?】等々。
「間違ってはないけどね、龍之介君は仕方ないな」
事情を知る寛君でさえ飲みかけの酒を噴き出しそうになっている。
「犀星、四千円なんて大金……」
「実際に、龍之介君のために四千円出したのは事実だよ。
四千円ぽっちで龍之介君を死の縁から
救い出せたんだから安いものさ。
僕の妻のとみ子も龍之介君の妻の文さんと
龍之介君の長男の比呂志君は
僕たちの関係を認めてくれているんだよ。
記事にしたいなら好きして構わないよ?
僕が龍之介君を心から愛していることに変わりはないからね」
「俺も萩原も中野も、お前らの事情は知っているが
まさか、龍之介が公の場で言うとは思っていなかった」
「僕の旦那様は最高だって自慢したかったんだよ。
犀星君がいなかったら、僕は今この場にいなかっただろうからね」
「それはどういう意味ですか?」
毎日新聞の記者が手帳とペンを持って龍之介君の言葉を待っている。
「犀星君がいなかったら、僕は夏の間にこの世から
いなくなっていたということさ。
僕は夏の盛りに自害するつもりだった。
だけど、死ぬ間際に犀星君に会いたくなってね……
力一杯、僕を引き止めてくれたのさ。
そして、“結納金”という名目で
四千円もあった義兄の借金を払ってくれたんだよ」
龍之介君は言い終えると僕の背中にぎゅっと抱き着いた。
「僕の奥さんは可愛らしね」
腕を後ろに回して、龍之介君の頭を撫でた。
「えへへ、犀星君、大好き」
「おやおや、今日は随分と甘えただね?」
外で甘えてくるのは珍しい。
「僕の命は犀星君に預けているんだって言いたかったの」
口調まで幼子のようだ。
「そうだね、龍之介君の手綱を持っているのは僕だよ」
龍之介君を背から前に連れて来て額に口づけた。
「もぅ、犀星君てば、皆の前で……でも、嬉しい」
「僕も龍之介君の笑顔が見れて嬉しいよ。
さて、記者諸君、明日の朝刊の記事を楽しみにしているよ。
帰ろうか、龍之介君」
「うん、手、繋いでくれる?」
「もちろんだとも」
本当に僕の妻は可愛らしい。
寛君や朔太郎君たち馴染みの皆に手を振って会場になっていた
帝国ホテルを後にした。
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