“最期”なんて言わせない

華愁

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番外編 台所に立つ“二人の妻”

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「ただいま」

僕が新作の打ち合わせから帰ってくると
“二人の妻”が仲良く台所に立っていた。

「お帰りなさい、犀星さん。

今夜のおかずは龍之介さんが作ったのよ」

「それは楽しみだ。着替えてくるよ」

一旦、台所を離れ、書斎で着物を着替えた。

居間に戻るととみ子と龍之介君がおかずを並べているところだった。

「この、なすの煮浸しと大根のお味噌汁は龍之介さんが
作ってくれたのよ」

「美味しいよ、龍之介君。

龍之介君は料理もできるんだね。

僕の“妻たち”は優秀過ぎるね。

皆に自慢したくなるよ」

ずっと、胃の調子が良くなく、食事に興味が沸かなかった龍之介君が
とみ子と台所に立っているところを見て心が温かくなった。

「犀星君に美味しいって言ってもらえて嬉しい。

明日も愛しの旦那様のために頑張るよ」

「無理は禁物だけど、楽しみにしているよ」

忘年会で龍之介君が僕を“旦那様”と宣言して
会場がざわついたのは数ヶ月後の話。
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