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第二話∑喧嘩と逃げ場
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まさか、
二度目の失敗をするとは……
吉柳さんと出会って
数ヶ月した頃、
気が抜けていたらしい。
その日たまたま
日付が変わる前に
帰って来ていた母親と
バッタリ会ってしまった。
うわあ~最悪……
そして、久しぶりに
聴いてしまった[声]
《全く、なんで
あれくらいのことが
できないのかしら》
聴こえて来た母親の[声]は
どうやら
部下に対するものらしかった。
それだけなら
よかったのだが次のは
明かに俺に対してだったせいか
[声]に対して
反論してしまった。
『そんなに俺が気味悪いかよ!!』
これが喧嘩の発端となった。
「あなた、また私の
心の中を聴いたのね
ええ、本当に気味悪いわ
今日は不可抗力だったけど
今後私に近付かないで頂戴
お金は何時通り置いておくわ」
それだけ言って出て行った。
今日の天気は雨。
泣けない俺の代わりに
空が泣いてくれてる気がした。
此処に居ても
居心地悪いだけだ……
ザーと音がたっている
外に飛び出し
母親が置いて行った
金を財布に入れ、
携帯と傘を持って
あの公園に向かって走った。
何時もの木に
寄り掛かりながら目を閉じた。
吉柳さんに会いたい。
『青羽君!!』
え? 吉柳さん!?
もしかして、
無意識に繋がってたのか?
悪いことしたなぁ。
『吉柳さん、何で……』
傘を持ちながら
こっちに走ってくる。
『あれ? 無意識だったんだ?』
隣に来てクスクスッと笑った。
やっぱり、
知らず知らずの内に
繋いでたんだ……
『すみません』
俯く俺の頭を吉柳さんの
温かな手が撫でた。
『家においで』
その申し出にビックリした。
『いいんですか!?』
『一人暮らしだって
前に話しただろう?
だからいいんだよ
青羽君だしね』
《俺だから? 》
つい、[声]で聴いてしまった。
《そう、青羽君だからだよ》
吉柳さんも
[声]で応えてくれた。
公園から吉柳さんの住む
マンションまでは
そんなに遠くなかった。
『どうぞ』
男の人の一人暮らしにしては
とても奇麗な部屋だった。
『お邪魔します』
他人の家に入ったのなんて
中学以来な気がする。
『その辺に座ってて
今、お茶淹れるから』
何となく、ソファーには
座れなかったから
ラグが敷いてある床に座った。
『ソファーに座ればいいのに』
マグカップを二つ持って
戻って来た吉柳さんが
床に座ってる俺を見て
そんなことを言った。
『此処の方が落ち着きますから』
苦笑いされた。
『青羽君、何があったの?』
聞けるはずなのに
敢えて言葉で聞いてくる。
これも吉柳さんの優しさだ……
『母親と喧嘩したんです
つい[声]の方に
反論してしまって……』
俺はさっき
あったことを説明した。
『そっか、
俺にも経験があるよ』
吉柳さんにもあるんだ……
『前に喧嘩した時も
同じ理由だったんです
母親は俺のことを
気味悪いって思ってるんです』
マグカップを
両手で握り締めながら
泣きそうなのを堪えて話した。
『辛かったね』
ギュッと手を握ってくれた。
『当分、此処にいる?』
悪戯っ子みたいに笑って
吉柳さんはそんなことを言った。
《迷惑じゃないですか?》
戸惑いを言葉にする前に
思ってしまった。
《迷惑だったら
最初から言わないさ》
返された[声]のトーンと
吉柳さんの顔を見たら
久しぶりに涙が流れた。
そういえば、何年、人前で
泣いてなかったっけ?
思い出せないや……
『好きなだけ泣いていいんだ』
俺は吉柳さんの胸の中で泣いた。
『当分、此処に居ろよ』
泣き止んだ後、
さっきと同じ台詞を言った。
『本当にいいんですか?』
尚も聞く俺に
吉柳さんが名前で呼んだ。
『朱雀、
俺がいいって
言ってるんだから
何回も聞くなよ』
出会って数ヶ月、
初めて名前で呼ばれた。
『吉柳さん』
『白夜って呼んでみな?』
《ぇっ、無理ですよ》
慌てると言葉より
[声]が先に
出てしまうのは
もはや、癖だ……
《いいから、
言葉に出して呼んでみな》
『白夜さん……』
『よくできました』
ギュウッと抱きしめてくれたから
俺も抱きしめ返した。
この温もりも久々だ……
誰かに抱きしめてもらうのも
誰かを抱きしめるのも
本当に久々だ。
そして、当分の間
白夜さんの家に
住むことになった。
『宜しくお願いします』
∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮
同居生活を始めて早数ヶ月。
気付いたら季節は一周していた。
『もう一年かぁ……』
白夜さんがカレンダーを見て
何気に言った。
そっか、いつの間にか
一年経ってたんだ。
同居を始めた時の
母親の反応は予想通りだった。
無関心で心底
どうでもよさそうだった。
『ねぇ朱雀
母さんが今度の休みに
三人で食事に行こうって
メールが来たんだけど行く?』
嬉しい!!
白夜さんのお母さん・知鶴さんは
俺たちの能力を
授かり物だと言ってくれた。
「あなたたちに
その能力が
与えられたのなら
意味があるのよ」と挨拶に
行った時に言ってくれて
その場で泣いて
しまってのを覚えている。
二度目の失敗をするとは……
吉柳さんと出会って
数ヶ月した頃、
気が抜けていたらしい。
その日たまたま
日付が変わる前に
帰って来ていた母親と
バッタリ会ってしまった。
うわあ~最悪……
そして、久しぶりに
聴いてしまった[声]
《全く、なんで
あれくらいのことが
できないのかしら》
聴こえて来た母親の[声]は
どうやら
部下に対するものらしかった。
それだけなら
よかったのだが次のは
明かに俺に対してだったせいか
[声]に対して
反論してしまった。
『そんなに俺が気味悪いかよ!!』
これが喧嘩の発端となった。
「あなた、また私の
心の中を聴いたのね
ええ、本当に気味悪いわ
今日は不可抗力だったけど
今後私に近付かないで頂戴
お金は何時通り置いておくわ」
それだけ言って出て行った。
今日の天気は雨。
泣けない俺の代わりに
空が泣いてくれてる気がした。
此処に居ても
居心地悪いだけだ……
ザーと音がたっている
外に飛び出し
母親が置いて行った
金を財布に入れ、
携帯と傘を持って
あの公園に向かって走った。
何時もの木に
寄り掛かりながら目を閉じた。
吉柳さんに会いたい。
『青羽君!!』
え? 吉柳さん!?
もしかして、
無意識に繋がってたのか?
悪いことしたなぁ。
『吉柳さん、何で……』
傘を持ちながら
こっちに走ってくる。
『あれ? 無意識だったんだ?』
隣に来てクスクスッと笑った。
やっぱり、
知らず知らずの内に
繋いでたんだ……
『すみません』
俯く俺の頭を吉柳さんの
温かな手が撫でた。
『家においで』
その申し出にビックリした。
『いいんですか!?』
『一人暮らしだって
前に話しただろう?
だからいいんだよ
青羽君だしね』
《俺だから? 》
つい、[声]で聴いてしまった。
《そう、青羽君だからだよ》
吉柳さんも
[声]で応えてくれた。
公園から吉柳さんの住む
マンションまでは
そんなに遠くなかった。
『どうぞ』
男の人の一人暮らしにしては
とても奇麗な部屋だった。
『お邪魔します』
他人の家に入ったのなんて
中学以来な気がする。
『その辺に座ってて
今、お茶淹れるから』
何となく、ソファーには
座れなかったから
ラグが敷いてある床に座った。
『ソファーに座ればいいのに』
マグカップを二つ持って
戻って来た吉柳さんが
床に座ってる俺を見て
そんなことを言った。
『此処の方が落ち着きますから』
苦笑いされた。
『青羽君、何があったの?』
聞けるはずなのに
敢えて言葉で聞いてくる。
これも吉柳さんの優しさだ……
『母親と喧嘩したんです
つい[声]の方に
反論してしまって……』
俺はさっき
あったことを説明した。
『そっか、
俺にも経験があるよ』
吉柳さんにもあるんだ……
『前に喧嘩した時も
同じ理由だったんです
母親は俺のことを
気味悪いって思ってるんです』
マグカップを
両手で握り締めながら
泣きそうなのを堪えて話した。
『辛かったね』
ギュッと手を握ってくれた。
『当分、此処にいる?』
悪戯っ子みたいに笑って
吉柳さんはそんなことを言った。
《迷惑じゃないですか?》
戸惑いを言葉にする前に
思ってしまった。
《迷惑だったら
最初から言わないさ》
返された[声]のトーンと
吉柳さんの顔を見たら
久しぶりに涙が流れた。
そういえば、何年、人前で
泣いてなかったっけ?
思い出せないや……
『好きなだけ泣いていいんだ』
俺は吉柳さんの胸の中で泣いた。
『当分、此処に居ろよ』
泣き止んだ後、
さっきと同じ台詞を言った。
『本当にいいんですか?』
尚も聞く俺に
吉柳さんが名前で呼んだ。
『朱雀、
俺がいいって
言ってるんだから
何回も聞くなよ』
出会って数ヶ月、
初めて名前で呼ばれた。
『吉柳さん』
『白夜って呼んでみな?』
《ぇっ、無理ですよ》
慌てると言葉より
[声]が先に
出てしまうのは
もはや、癖だ……
《いいから、
言葉に出して呼んでみな》
『白夜さん……』
『よくできました』
ギュウッと抱きしめてくれたから
俺も抱きしめ返した。
この温もりも久々だ……
誰かに抱きしめてもらうのも
誰かを抱きしめるのも
本当に久々だ。
そして、当分の間
白夜さんの家に
住むことになった。
『宜しくお願いします』
∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮∮
同居生活を始めて早数ヶ月。
気付いたら季節は一周していた。
『もう一年かぁ……』
白夜さんがカレンダーを見て
何気に言った。
そっか、いつの間にか
一年経ってたんだ。
同居を始めた時の
母親の反応は予想通りだった。
無関心で心底
どうでもよさそうだった。
『ねぇ朱雀
母さんが今度の休みに
三人で食事に行こうって
メールが来たんだけど行く?』
嬉しい!!
白夜さんのお母さん・知鶴さんは
俺たちの能力を
授かり物だと言ってくれた。
「あなたたちに
その能力が
与えられたのなら
意味があるのよ」と挨拶に
行った時に言ってくれて
その場で泣いて
しまってのを覚えている。
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