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第1話*.+バイト先が担任の家だった件について
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え~と、❲焼継❳って……
俺は表札を見て硬直しかけた。
焼継先生の家ってことだよね……
とりあえず、チャイムを鳴らそう。
ピーンポーン。
『はい』
やっぱり、焼継先生だ。
プライベートだからかラフな格好だ。
『麦崎、いらっしゃい』
あれ、わりと普通?
焼継先生は丁寧に家の中を案内してくれた。
『今日からよろしくお願いしますね。
早速ですが何からやりましょうか?』
そういえば、
焼継先生はなんで家政婦協会に要請したんだろう?
それは追々聞けばいいか。
『それじゃ、早速で悪いが昼飯作ってくれないか。
冷蔵庫の中身は好きに使ってくれていい』
『わかりました』
俺は冷蔵庫を一通り開けて
お昼ご飯はオムライスとポトフを作ることにした。
数十分後、俺はオムライスとポトフを
焼継先生の座っているテーブルに置いた。
『お待たせしました。
熱いので気を付けて食べてください。
焼継先生は几帳面の
イメージでしたけど散らかってて驚きました』
俺の言葉に先生は苦笑した。
『いつもはもう少し片付いてるんだが
最近、バタついててな、見ての通りだ。
それから、家の中で先生呼びと敬語は止めてくれる
?俺は堅苦しいのが嫌いなんだ。
呼び方は流風でいいから』
意外な提案をされた。
『呼び方はともかく、タメ口で……いいの?』
恐る恐るきいてみた。
『その方が楽だからな』
『流風さん?』
『ありがとうな、歩夢』
あっさり、名前で呼ばれた。
『あ、ほら、
せっかく作ったんだから冷める前に食べて』
俺はまだ一口も手をつけられていない
オムライスとポトフを食べるように促した。
『そうだな、せっかく作ってくれたのに
冷めたら歩夢に悪いしな。
いただきます』
流風さんの口に合っただろうか?
黙々と食べる流風さんを見ながら内心ドキドキだ。
『ごちそうさまでした。
美味しかった、ありがとう』
よかった。
『味付け、薄くなかった?』
『ちょうどよかったよ。
誰かの手作りのご飯は
久しぶりだったし歩夢は料理上手なんだな』
俺はとりあえずほっとした。
『なあ、歩夢は何で家政夫のバイトしてるんだ?』
高三のこの時期にバイトしてれば
“担任”としては気になるよな。
『父親と折り合い悪いんだ。
家庭の恥だから友達には言ってないけど、
父親は愛人がいてさ、とあるバイト先から帰る途中で
父親とその愛人に遭遇したんだ。
母さんには当然言えないし、
かといって、父親と同じ空間に居たくなっていうか……
だから、母さんには悪い気がしてるんだけど
休日はバイト入れてるんだ』
肩をすくめて苦笑しながら話した。
『ごめん、“担任”としても“雇用主”としてもなんで歩夢が休日にバイトしてるのか気になったんだ』
別に流風さんが謝ることじゃない。
『大丈夫だけど俺も訊いていい?
何でわざわざ、家政婦協会に依頼したの?』
家の中の散らかりようからして忙しかったのも
現在恋人がいないのもわかるけど
何でわざわざ、家政婦協会に依頼したのか疑問だ。
『歩夢に聞いといて自分のことを話さないのは狡いよな。
理由は歩夢のことと少し似てるかな……
三ヶ月前までは恋人と暮らしてたんだけど
その恋人が浮気してて、それだけでHP0に近かったのに追い討ちをかけるように
今度は実家の両親がいきなり離婚するとか
言い出す始末で
今の惨状の出来上がりってわけ。
家政婦協会に依頼したのは“身内”の方が
信じられなくなったからだよ』
それは確かに、
“身内”を信じられなくなっても仕方ないかも……
『そうだったんだね。
でも、流風さんはやっぱり大人だよね。
職場である学校では何時も通りだったし、
クリーニングに出してたのかもしれないけど
スーツはシワ一つなかったから、
プライベートでそんなことがあったなんて
想像もしてなかったよ』
『俺は教師かだからな私情を職場には
持ち込むわけにはいかない。
歩夢たち生徒に余計な心配をかけたくなかったしな。
だけど…… 歩夢には少しだけ、甘えていいか?』
ふぇ!? 流風さん、
今俺に“甘えていいか”って訊いた!?
『俺に流風さんを甘えさせてあげられる程の
包容力はないと思うけど……』
『“包容力”とかそういうことじゃないんだ。
歩夢が家に来て数時間だけど
同じ空間にいるのが心地いいから
“教師と生徒”じゃなくて
ただの“焼継流風と麦崎歩夢”として
接してほしかったんだ』
流風さんの言いたいことはなんとなくわかった。
『そっか、そういうことなら。
俺も時々、流風さんに甘えてもいい?』
『もちろん、構わないよ』
話が一通り纏まった後、
流風さんが食べ終えた食器を洗い、
午後は散らかってる専門誌や雑誌を片付けた。
『短時間でかなり綺麗になったな、
ありがとう、歩夢』
『仕事だもん、ちゃんとやるよ』
と言いつつもお礼を言われると嬉しい。
『来てくれたのが歩夢でよかった』
片付けの後、
二人で紅茶を飲みながら他愛ない話をした。
そうしている内に一ヶ、二ヶ月と過ぎていき来週から二学期が始まる。
『なぁ歩夢、学校が始まっても家政夫の仕事続けてくれるか?
もちろん、給料は今まで通り払うから』
その申し出に俺は目を丸くした。
『お金のことは一旦、置いとくにしても
本当にいいの?』
『続けてくれると助かる。
学校ではまた“教師と生徒”として接しなくちゃならないが
帰って来たら今まで通りの話し方で構わない』
それは……
『何だか周りには秘密で付き合ってて
“外と中”で分けてるカップルみたいだね(笑)』
冗談めかして言うと流風さんが笑った。
『ふは、ちょっと違うが似たような状況だな』
流風さんが笑ってくれてよかった。
『何なら、本当に俺の恋人になるか?』
ちょっ、待て待て、真に受けるな俺!!
『冗談が言えるくらい元気になってよかったよ』
『〚冗談のつもりはないんだけどな〛
歩夢が来てからの三ヶ月弱は
本当にリラックスできたし安らぎの時間だったから
ちょっと言ってみたんだ(笑)』
俺はこの時、
流風さんが呟いた言葉を聞き取れなかった。
『それはよかったけど
そういうことは誰彼構わず言っちゃダメだよ?
勘違いされたら大変だからね』
俺の言葉に流風さんは
何も言わず笑っているだけだった。
俺は表札を見て硬直しかけた。
焼継先生の家ってことだよね……
とりあえず、チャイムを鳴らそう。
ピーンポーン。
『はい』
やっぱり、焼継先生だ。
プライベートだからかラフな格好だ。
『麦崎、いらっしゃい』
あれ、わりと普通?
焼継先生は丁寧に家の中を案内してくれた。
『今日からよろしくお願いしますね。
早速ですが何からやりましょうか?』
そういえば、
焼継先生はなんで家政婦協会に要請したんだろう?
それは追々聞けばいいか。
『それじゃ、早速で悪いが昼飯作ってくれないか。
冷蔵庫の中身は好きに使ってくれていい』
『わかりました』
俺は冷蔵庫を一通り開けて
お昼ご飯はオムライスとポトフを作ることにした。
数十分後、俺はオムライスとポトフを
焼継先生の座っているテーブルに置いた。
『お待たせしました。
熱いので気を付けて食べてください。
焼継先生は几帳面の
イメージでしたけど散らかってて驚きました』
俺の言葉に先生は苦笑した。
『いつもはもう少し片付いてるんだが
最近、バタついててな、見ての通りだ。
それから、家の中で先生呼びと敬語は止めてくれる
?俺は堅苦しいのが嫌いなんだ。
呼び方は流風でいいから』
意外な提案をされた。
『呼び方はともかく、タメ口で……いいの?』
恐る恐るきいてみた。
『その方が楽だからな』
『流風さん?』
『ありがとうな、歩夢』
あっさり、名前で呼ばれた。
『あ、ほら、
せっかく作ったんだから冷める前に食べて』
俺はまだ一口も手をつけられていない
オムライスとポトフを食べるように促した。
『そうだな、せっかく作ってくれたのに
冷めたら歩夢に悪いしな。
いただきます』
流風さんの口に合っただろうか?
黙々と食べる流風さんを見ながら内心ドキドキだ。
『ごちそうさまでした。
美味しかった、ありがとう』
よかった。
『味付け、薄くなかった?』
『ちょうどよかったよ。
誰かの手作りのご飯は
久しぶりだったし歩夢は料理上手なんだな』
俺はとりあえずほっとした。
『なあ、歩夢は何で家政夫のバイトしてるんだ?』
高三のこの時期にバイトしてれば
“担任”としては気になるよな。
『父親と折り合い悪いんだ。
家庭の恥だから友達には言ってないけど、
父親は愛人がいてさ、とあるバイト先から帰る途中で
父親とその愛人に遭遇したんだ。
母さんには当然言えないし、
かといって、父親と同じ空間に居たくなっていうか……
だから、母さんには悪い気がしてるんだけど
休日はバイト入れてるんだ』
肩をすくめて苦笑しながら話した。
『ごめん、“担任”としても“雇用主”としてもなんで歩夢が休日にバイトしてるのか気になったんだ』
別に流風さんが謝ることじゃない。
『大丈夫だけど俺も訊いていい?
何でわざわざ、家政婦協会に依頼したの?』
家の中の散らかりようからして忙しかったのも
現在恋人がいないのもわかるけど
何でわざわざ、家政婦協会に依頼したのか疑問だ。
『歩夢に聞いといて自分のことを話さないのは狡いよな。
理由は歩夢のことと少し似てるかな……
三ヶ月前までは恋人と暮らしてたんだけど
その恋人が浮気してて、それだけでHP0に近かったのに追い討ちをかけるように
今度は実家の両親がいきなり離婚するとか
言い出す始末で
今の惨状の出来上がりってわけ。
家政婦協会に依頼したのは“身内”の方が
信じられなくなったからだよ』
それは確かに、
“身内”を信じられなくなっても仕方ないかも……
『そうだったんだね。
でも、流風さんはやっぱり大人だよね。
職場である学校では何時も通りだったし、
クリーニングに出してたのかもしれないけど
スーツはシワ一つなかったから、
プライベートでそんなことがあったなんて
想像もしてなかったよ』
『俺は教師かだからな私情を職場には
持ち込むわけにはいかない。
歩夢たち生徒に余計な心配をかけたくなかったしな。
だけど…… 歩夢には少しだけ、甘えていいか?』
ふぇ!? 流風さん、
今俺に“甘えていいか”って訊いた!?
『俺に流風さんを甘えさせてあげられる程の
包容力はないと思うけど……』
『“包容力”とかそういうことじゃないんだ。
歩夢が家に来て数時間だけど
同じ空間にいるのが心地いいから
“教師と生徒”じゃなくて
ただの“焼継流風と麦崎歩夢”として
接してほしかったんだ』
流風さんの言いたいことはなんとなくわかった。
『そっか、そういうことなら。
俺も時々、流風さんに甘えてもいい?』
『もちろん、構わないよ』
話が一通り纏まった後、
流風さんが食べ終えた食器を洗い、
午後は散らかってる専門誌や雑誌を片付けた。
『短時間でかなり綺麗になったな、
ありがとう、歩夢』
『仕事だもん、ちゃんとやるよ』
と言いつつもお礼を言われると嬉しい。
『来てくれたのが歩夢でよかった』
片付けの後、
二人で紅茶を飲みながら他愛ない話をした。
そうしている内に一ヶ、二ヶ月と過ぎていき来週から二学期が始まる。
『なぁ歩夢、学校が始まっても家政夫の仕事続けてくれるか?
もちろん、給料は今まで通り払うから』
その申し出に俺は目を丸くした。
『お金のことは一旦、置いとくにしても
本当にいいの?』
『続けてくれると助かる。
学校ではまた“教師と生徒”として接しなくちゃならないが
帰って来たら今まで通りの話し方で構わない』
それは……
『何だか周りには秘密で付き合ってて
“外と中”で分けてるカップルみたいだね(笑)』
冗談めかして言うと流風さんが笑った。
『ふは、ちょっと違うが似たような状況だな』
流風さんが笑ってくれてよかった。
『何なら、本当に俺の恋人になるか?』
ちょっ、待て待て、真に受けるな俺!!
『冗談が言えるくらい元気になってよかったよ』
『〚冗談のつもりはないんだけどな〛
歩夢が来てからの三ヶ月弱は
本当にリラックスできたし安らぎの時間だったから
ちょっと言ってみたんだ(笑)』
俺はこの時、
流風さんが呟いた言葉を聞き取れなかった。
『それはよかったけど
そういうことは誰彼構わず言っちゃダメだよ?
勘違いされたら大変だからね』
俺の言葉に流風さんは
何も言わず笑っているだけだった。
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