秘密の雇用関係~バイト先は担任の先生の家でした~

華愁

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第5話*.+進路

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波乱の文化祭が終わり、本格的に受験モードだ。

俺はその進路でかなり迷っていた。

料理の専門学校に行くか
栄養士の資格を取るのに大学に行くか。

母さんに相談したら、学費は父親が
出すから好きな方に行けばいいと言われた。

『四年間大学に行った後で料理の専門学校にも
行きたいんだけど駄目かな?』

「あら、歩夢がそうしたいならいいと思うわ。

あの人とは近々離婚するけど慰謝料も学費も
沢山払ってもらいましょう」

そう言った母さんの声色は
少し弾んでるように聞こえた。

元々、お金に関してはそんなに困ってなかった。

俺は流風さんからお給料をもらってたし、
母さんは父親が毎月振り込む生活費を
切り詰めながら遣り繰りしていた。

「本当はね、歩夢を大学と専門学校に
行かせるくらいの貯金はあるのよ?

だけど、あの人は浮気したからには
慰謝料を払う義務がある。

本当は奥村蕗那さんにも慰謝料を
払う義務があるんだけど彼女が払うはずの分も
あの人に払ってもらおうと思っているのよ」

⦅母親強し⦆とはいうがまさか、
母さんがここまで強かだったとは知らなかった。

一生、母さんには頭が上がらないだろうな。

★★

今日は三者面談の日。

俺は流風さんにはまだ話していなかった。

『本日はお忙しい中、ありがとうございます』

教師モードの流風さん。

「あら、イケメンさんね。

成る程、歩夢が夢中なるはずだわ」  

『ちょっと、母さん……

すみません、“焼継先生”。

進路なんですが四年大学で栄養士の資格を取っ手から
料理の専門学校に行こうと思っているんです』


俺の言葉に流風さんは一瞬、“何で”という顔をした。

『そうか、受験する大学と
専門学校は決めてあるのか?』  

すぐに教師モードに戻って聞いて来た。

『翠星ヶ浜大学と稀喬専門学校を
受験しようと思ってます。

稀喬専門学校の方は
どっちにしても翠星ヶ浜大学を
卒業してからですけどね』

教室だから“敬語”で話してるけど
内心では違和感極まりない。   

『麦崎の成績なら問題ない。 

推薦も取れるがどうする?』

流風さんはわかっていて訊いている。  

『普通に一般で受験します』

『麦崎ならそう言うと思ったよ』

やっぱりね。

その日の夜、俺はいつものように
流風さんの家で 
夕飯を作っていた。

『歩夢が大学と専門学校、
両方に行きたがってたなんて知らなかったな……』

事前に話さなかったからか流風さんは
すっかり拗ねてしまった。

『ごめん、最初は迷ってたんだ。

母さん達の離婚のこともあったから……


だけど、思いきって母さんに話したら
⦅学費は全部あの人が出すから
歩夢がそうしたいならいい⦆
って言ってたくれたから。

俺が栄養士や料理系の専門学校に 
行きたいと思ったきっかけは
流風さんが俺の作った物を
美味しいって食べてくれたからだよ』

家政夫のバイトを始めなかったら、
派遣先が流風さんの家じゃなかったら、
俺の進路はまた別だったかもしれない。

『俺に夢を与えてくれたのは
他でもない流風さんなんだよ』

因みに、母さんさんはあの人が本来払う慰謝料とは別に蕗那さんが払うはずだった分と
俺の学費をきっちり支払わせていた。

『そう言ってもらえると教師冥利に尽きるな。

きっかけがプライベートっていうのは少し複雑だが
歩夢が夢を見つけるきっかけになったなら嬉しい』


『俺は派遣先が流風さんの家でよかったと思ってるよ』
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