どうか、僕を好きになって

華愁

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第三話 実母・文との決別

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僕は美紗に思いを告げる前に実家に行くことにした。

「ただいま」

この家で❰ただいま❱と言うのも今日で最後だ。

「也寸志!!」

「僕は室生家の美紗と結婚することにしたんだ」

「なんだ也寸志、やっと心が決まったんだな」

文母さんと対峙していると比呂志兄さんがいた。

「比呂志兄さん、うん、僕は美紗と結婚したいんだ。

犀星父さんも龍之介父さんも認めてくれたよ」

僕の報告に比呂志兄さんが喜んでくれた。

「よかったじゃないか」

「なんで、あんな、不潔な家の娘となんて!!

あの家はあんたたち三兄弟から父親を奪い、私から夫を奪った
泥棒の家じゃない!!」

龍之介父さんの血が流れているのは誇りだけど、
“産みの”母親がこれじゃどうしようもないな。

「母さん、いや“文さん”は<文豪・芥川龍之介の妻>という地位と
<芥川家>という看板を守りたかっただけだろう。

龍之介父さんが犀星父さんととみ子母さんに
子どものように甘えている姿に僕は微笑ましいと思った。

あの家で龍之介父さんは<文豪>でも<芥川家の家長>でもない
<ただの“龍之介”>でいられる場所なんだよ。

僕は美紗とあの⦅歪で暖かい場所⦆を守りたいと思ったんだ。

“文さん”は一度でも龍之介父さんの<孤独>や<悩み>を
知ろうとした? 犀星父さんやとみ子母さんに
龍之介父さんを“奪われた”というけど
二人がいなければ、そもそも、龍之介父さんは
僕が二歳の時に自害してたかもしれなかったんだから
感謝するべきだと思うけどね」

「感謝ですって!? 馬鹿なこと言わないで!!

あんな狂った夫婦に感謝なんて……」

“本当に”狂っているのはどっちなんだか……

「“文さん”は自分のことしか考えてないんだね。

<文豪・芥川龍之介の妻>という地位を守りたくて
龍之介父さんの“心”が悲鳴を上げていることに
目を背けたんだろう?

美紗は犀星父さんととみ子母さんの実子だ。

これは⦅絶縁状⦆だよ。

二十年、<芥川家>に居させてくれたことには
感謝しているよ、ありがとうございました」

僕は喚いている“産みの親”を振り返らず、
比呂志兄さんに挨拶をして<芥川家>を出た。
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