どうか、僕を好きになって

華愁

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第二話 二人の父親に報告する夜

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「龍之介父さん・犀星父さん、今大丈夫?」

「構わないよ」

書斎の流れから龍之介父さんの返事が返ってきた。

「僕は美紗を愛してるんだ……

生憎、まだ思いを伝えられていないけど
いつか、お嫁に迎えて一生愛したいんだ」

この家は歪で独自国家で“世間常識”など
通用しない。

「也寸志が美紗に惹かれるのは
必然だったんだろうね。

僕の息子と犀星君の娘。

也寸志は僕に似て一途だ。

ただ、いいかい、也寸志、美紗を
嫁にもらうということは、
この家の“管理”をきちんとしなければならないということだ。

この家は“世間常識”から外れた独自国家だ

ここの“管理責任”を背負う覚悟はあるかい?

それから、文と決別する覚悟も。

文は未だに僕が“囚われた”と思っている。

だが、実際に僕は犀星君に愛され、とみ子さんを愛して
子供たちに囲まれて幸せで穏やかな日々を送っている。

昔、僕がまだ“雲雀”だった頃に比呂志が文に言ったんだ。

❰母さんは父さんを動物園の動物たちみたいに
柵に閉じ込めて<文豪・芥川龍之介>という
偶像を作り上げて、
【見て、私が作ったの。綺麗でしょう?】って見せびらかしたいの?

そんなだから、気付かないんだよ。

睡眠薬の空き瓶にも
ごみ箱から溢れかえる書き損じの原稿にも。

母さんが父さんの書斎に
最後に入ったのはいつ?

いつだって、家の中の掃除は女中任せだったじゃないか。

一日でも自分で父さんの部屋を掃除していたら違和感に気付いていたはずだし、
結局母さんは父さんの“気持ち”を知ろうとせず、“心”を見ず
<文豪・芥川龍之介>の妻という
地位に酔いしれていただけなんだよ。❱ってね」

如何にも比呂志兄さんが言いそうだ。

「現実主義だけど、他人を尊重する比呂志兄さんらしいね。

美紗と結婚できるなら文母さんとは決別してもいいよ。

産んでくれてことには感謝してるけど
“愛”を教わったのはこの家だし、
それにね、“産みの親”は文母さんだけど
“育ての親”はとみ子母さんだから。

僕はここの“管理責任者”になりたい」

「とみ子が“育ての親”なんて本人が聞いたら泣いて喜ぶだろうね。

也寸志君の覚悟と決意は受け取った。

ただし、美紗を口説き落とせるかは君次第だ」

それはそうだ。

「頑張って口説き落とすよ。

僕は舗装された道を歩きたいわけじゃない。

どんなに険しくてもでこぼこでも本当に愛する人と歩きたいんだ。

龍之介父さんがまだ<文豪>と呼ばれていて
犀星父さんの“雲雀”だった頃の僕は赤ん坊だったけど
比呂志兄さんがここに連れて来てくれて
“本当の愛”を教えてくれたから……」
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